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ル・フォール著作集1

『ル・フォール著作集1』表紙

  • 著者:ゲルトルート・フォン・ル・フォール
  • 訳者:ル・フォール著作集刊行会訳
  • 定価:本体4,200円+税
  • A5判 上製  570ページ
  • ISBN978-4-902211-52-8 C3397
  • 発行:教友社

本書は20世紀のドイツ・カトリック文学を代表する女流作家、ゲルトルート・フォン・ル・フォール の作品をすべて収めた著作集(全4巻)のうちの第1巻です。ル・フォールは『断頭台の最後の女』『ピラトの妻』などで有名ですが、作品のなかで唯一の長編小説であり、今回はじめて日本語に訳された『ヴェロニカの手巾(ハンカチ)』を収録しています。

ル・フォール がこの作品を執筆していた1920年から1946年は、第1次、2次世界大戦、その間ナチスが台頭した時代でした。悪が勢力をほしいままにしている世界のなかで、ル・フォールは「人間の救いとは何か」を作品の中で一貫して、追い求めています。

物語は、第1部「ローマの噴水」、第2部「天使の花環」に分かれています。古代ギリシャ、ローマの精神性、長い伝統の中で培われてきたキリスト教、そして近代主義と無神論というヨーロッパ思想の流れのなかで、登場人物たちはそれぞれ個性を持ちつつも、人間としての弱さを抱えながら、生きる姿が描かれています。主人公の少女ヴェロニカは、病で母親を亡くし、祖母と伯母エーデルガルドに育てられました。ヴェロニカは不運な生い立ちのなかで苦しみますが、最後には神の愛に目覚めて信仰を告白し、第1部は終わります。第2部では、ナチスの姿に表される神への抵抗、悪の支配に対して、人間を救うのはキリストの十字架によって示された神の愛であることがヴェロニカのある選択によって、象徴されています。

ヴェロニカの愛するエンツィオは、陶酔的な詩の世界に生き、あくまでも人間の自立を主張し、神を拒んでいました。しかし、戦争によって彼は変貌し、ますます神への憎しみを募らせて、祖国の再建のために情熱を傾けます。

信仰を得たヴェロニカにとって、エンツィオの姿を見るのは胸を引き裂かれるようなものでした。しかし、彼女は彼のために自らを投げ出して、十字架の道を選びます。

ヴェロニカの献身的な愛は、女性ならではのものであり、読者に「真実の愛とは何か」と問いかけています。

「ドイツ文学の最も偉大な作品の一つ」と言われており、人間にとって永遠の課題である「悪の克服と人間の救い」をテーマにした読み応えのある一冊です。ページ数が多く厚い本ですが、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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