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 JSA

2001年6月

JOINT SECURITY AREA

JSA

  • 監督:パク・チャヌク
  • 出演:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、イ・ヨンエ、
         キム・テウ、シン・ハギュン

2000年 韓国映画 110分

  • 第51回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作品

「『シュリ』の記録を次々と塗り替えた、韓国映画史上空前のメガヒット!」と銘打った大作「JSA」が、いよいよ公開されました。南北分断の38度線上の共同警備区域「JSA」が舞台です。映画のプロモーションのために来日したヒロインのイ・ヨンエが、テレビ朝日の「ニュース・ステーション」に出演した際、その話し方に聞き惚れていたというか、話し方のかわいさに見ほれていた久米さんから「食べてしまいたい!」と言われていましたネ。ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。韓国の実力若手俳優たちが出演している、見応えのある作品です。

「JSA」の予告を見たとき、兵士たちの物語、さらに撃ち合いの場面が強烈だったので、これはやめておこうかなと思いました。しかし、韓国での大ヒットのニュースを聞き、韓国の人々にとってそれだけ訴えるものがある作品なんだ……、この映画に、監督はどんなメッセージを込めているのか……、同時代を生きている者として見る必要があるんじゃないか……と思い、でかけました。

              ☆    ★    ☆

ある夜、「JSA」の北朝鮮側歩哨所から、激しい銃声が響き、北朝鮮兵士2人が射殺される事件がおきた。映画は、この出来事から始まる。

この事件の解決のため、スイスとスウェーデンからなる中立国監査委員会から、スイス軍将校ソフィー・チャン(イ・ヨンエ)が捜査に派遣された。彼女の父は、韓国籍、母はスイス人。(ここにも、悲しい韓国の歴史がある。)事件に関する北朝鮮側の陳述書と、韓国側の陳述書は、その内容が全く違っていた。ソフィーは、真実をつかもうとするが、当事者たちは硬く口を閉ざし、その追求は、さらに悲しい事件を引き起こしてしまう。

              ☆    ★    ☆

南北分断の象徴的空間、飯門店/共同警戒区域を警備する韓国軍兵長イ・スヒョク(イ・ビョンホン)の隊は草原の中を進んでいるうちに、間違って北の区域に足を踏み入れてしまった。隊員たちは、慌てて引き返すが、用をたしていたスヒョクは、隊と離れてしまう。道を急ごうとしたとき、スヒョクは地雷線に足をかけてしまった。 少しでも動けば、地雷が爆発する。

草原の中を、北朝鮮軍士官オ・ギョンヒル(ソン・ガンホ)と、兵士チョン・ウジン(シン・ハギュン)が来る。緊張するスヒョク。お互いを認識したときに走る緊迫感。ギョンヒルはスヒョクを撃たず、そのまま帰ろうとする。この場では命びろいしたスヒョクだが、立ち去ろうとする2人に向かい「助けてくれ!」と叫ぶ。ギョンヒルは、スヒョクの地雷をはずすことに成功した。ギョンヒルは「命を大切にしろ!」という思いをこめて、地雷の震撼をスヒョクに手渡し、何もなかったかのように立ち去っていく。

ある夜、スヒョクは、一緒に勤務していた一等兵ナム・ソンシク(キム・テウ)がうたた寝をしているすきに、北と南の軍事境界線を隔ててかけられた「帰らざる橋」を渡り、38度線を越え北朝鮮歩哨所へと向かう。命の恩人であるギョンヒルとウジンを尋ねるためだった。彼の訪問は回数を重ね、ソンシクも誘うようになる。次第に、友情を深めていく4人。

スヒョクの除隊が近づいたある晩、4人は別れを惜しんで最後の時を過ごしていた。と、突然、ドアがノックされた。そこには、北朝鮮軍兵が立っていた。

              ☆    ★    ☆

ギョンヒルの深い人間性、スヒョクのひたむきな思い、ウジンの純粋さ、ソンシクの臆病。彼らの姿を思い出すと、苦しく、切なく、うれしく、さまざまな思いが出てきます。どのように「おすすめ……」を書いたらいいのかしら……と迷っているときに、ふと思いました。彼らにはくらべられないほど小さなものですが、こういう迷い、苦しみが、北と南に分かれている兄弟の思いであり、ここに、監督の製作の意図があるのではないかと。(勝手な解釈ですね。)

この映画は、捜査中の現時点と、事件が起きた時と、さらに事件が起きる前と、時間がいったりきたりします。プラス、大切な年月日と時刻が、場面場面で表示されるのですが、字幕なので、文字を認識し、さらに事件との前後関係は? …… と考えていると、文字が消え、次の場面になるので、時間のつながりがうまく設定できないのです。スイス軍将校ソフィーと一緒に、事件の流れにそって要点をメモしながら、真相を明らかにしたい……、そんな欲求が起きました。この4人は、何を願い、何をどう感じていたのでしょう。彼らの思いをつかむためにも、ぜひ、もう一度見たいと思いました。

この作品は、人として生きていくための、大切なことが語られています。南北問題を場にしていますが、テーマは普遍的で、考えさせられます。ぜひ、ご覧になってください。そして、皆様は、何をお感じになりましたか? 感想をお聞かせください。

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