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 チョムスキー 9.11

2002年9月

Power and Terror

チョムスキー 9.11

  • 監督:ジャン・ユンカーマン
  • 企画・製作:山上徹二郎
  • 音楽:忌野清志郎
  • 配給:シグロ

2002年 日本映画 74分


昨年の同時多発テロのときから、一貫してアメリカの外交政策に批判し続けてきた言語学者ノーム・チョムスキーの発言をとらえたドキュメンタリー映画ができました。

昨年の同時多発テロ以後、山上徹二郎氏は、「映画プロデューサーとしての私に、何ができるだろうか」と考えていました。武力行使に進んでいくアメリカと、それに盲従するような日本政府の対応、無批判に報道を繰り返す両国のマスメディアの中で、チョムスキーのインタビューに触れ、勇気づけられた山上氏は、チョムスキーの言葉を伝えることが自分のすべきことと感じ、彼の記録映画を作ることを思い立ちました。この映画をとおして、知識人としての信念と事にあたる時の態度というものを伝えたいと思ったのです。

ノーム・チョムスキーは、1928年、米国のペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれました。生成変形文法理論の成果を発表し、言語学の世界に革命を起こした言語学者です。その一方で、1965年に米国が北ベトナムへの爆撃を開始すると、その外交政策を批判し、その姿勢は現在に続いています。言語学関係の著作だけでなく、社会・政治に関しての出版もたくさんあります。

今年74歳になるチョムスキーは、今も、マサチューセッツ工科大学で教鞭をとっています。その一方で、さまざまな講演会の依頼を受け、アメリカ国内のみならず、世界中で語っています。

山上氏が映画製作を依頼したとき、チョムスキーのスケジュールはすでにびっしりでしたが、インタビューと彼の各地での講演を撮影するということで、映画製作は進みました。映画は、マサチューセッツ州ケンブリッジで行われたインタビューと、ニューヨーク州ブロンクス、カリフォルニア州バークレーなどで行われた講演会で構成されています。

ベトナム戦争はもちろん、東京裁判、ナチス、中東問題……、彼の答える内容は、とても広く、かつ詳しいものです。いったい、どこからこのような情報を得ているのでしょう。「今日は、中東問題について話しましょう」という具合に、会場の求めに応じ、テーマをしぼった講演ができます。また、講演の後に出るさまざまな質問にも、即座に的確に答えています。それも、にこやかに優しく……。内容は、難しく重い問題なのですが、その柔らかい表情と内容の深さに、会場はリラックスしながらも、どんどん真髄に引き込まれていきます。

話を聞く人々は、自分では表現できない「何か変だ……」という思いを代弁してくれるチョムスキーを大切に思っています。

チョムスキーの映画ができたことはとてもうれしいことです。今までは、チョムスキーの語った言葉を活字でしか知ることがなかったのですが、スクリーンをとおして、彼自身に触れることができたからです。チョムスキーの姿を見、その人柄のすばらしさに触れることができました。

この映画は、ある方向に傾いていく時の動きの中でも、見失ってはいけない事を教えてくれる、普遍的な内容を持つ作品となるでしょう。と同時に、大切なことを貫きとおす一人の人間の姿を描いたものとも言えるでしょう。

この映画をたくさんの方がご覧になり、今の世界情勢を見直し、平和のためにもっと関心を持っていただけたらと思います。さらに、チョムスキーの魅力にも触れていただけることでしょう。

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