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 ダーク・ブルー

2002年11月

Dark Blue World

ダーク・ブルー

  • 監督:ヤン・スヴィエラーク
  • 脚本:ズディニェク・スヴィエラーク
  • 音楽:オンドジェイ・ソウクップ
  • 出演:オンドジェイ・ヴェトヒー、クリシュトフ・ハーディック、
          タラ・フィッツジェラルド

2001年 チェコ・イギリス合作映画 112分

  • 2006年度アカデミー賞外国映画賞チェコ代表作品

父のズディニェク・スヴィエラークが脚本を、「コーリャ 愛のプラハ」で1996年度アカデミー外国語映画賞、東京国際映画祭で大賞と作品賞を受賞した、息子のヤン・スヴィエラークが監督した力作です。

チェコの悲しい歴史を背景に、パイロットとして活躍する激しい空の戦闘シーンや、部下との友情、恋愛を描きながら、時代に流されていく人間を見つめています。

物語

1950年代の共産主義の時代、刑務所に捕らえられて暗い時代を生きる主人公フランタが、かつての空軍での戦闘や、恋をした明るい時代を語るという形で、物語は進んでいきます。

第2次世界大戦が始まろうとしていたころ、チェコ空軍は、攻めてきたドイツ軍に対し抵抗せずに降伏しました。パイロットたちは、ドイツ軍司令官に仕えるか、逃げ出すかの選択を迫られます。

教官のフランタ(オンドジェイ・ヴェトヒー)は、恋人を故郷に残し、部下の若いカレル(クリシュトフ・ハーディック)をバイクに乗せ、英国空軍に入隊します。

激しい戦闘が続いているにもかかわらず、英軍に逃れたチェコ人パイロットたちに、出撃命令は出ません。毎日、翼をつけた自転車で、敵味方に分かれて戦闘の練習をするのでした。司令部との交信のために必要な英語の勉強も、なかなか進みません。しかし、ついに出動命令が下りました。チェコ人パイロットたちは大活躍し、英軍の信頼を得ます。フランタとカレルの間では、空中戦で助け合ううちに、年齢を超えた友情が深まっていきました。

ある戦闘で、カレルの飛行機が攻撃を受け墜落。負傷したカレルは、ある家に助けを求め、女主人に助けられます。彼女はスーザン(タラ・フィッツジェラルド)といい、町から疎開してきた子どもたちを引き取りながら、戦場に行った夫の留守を守っていました。カレルは、たちまち彼女に夢中になってしまいます。

ある日、カレルからフランタを紹介されたスーザンは、フランタを忘れることができなくなります。フランタとスーザンは、カレルの目を逃れて会うようになります。フランタがスーザンと会っている現場を目撃したカレルは、尊敬し信頼していた友人に裏切られたことにショックを受け、自暴自棄になって生活は荒れ、フランタにつらく当たるようになります。

友情は、もろくも崩れてしまいました。フランタはあやまりますが、カレルは聞き入れようとしません。

激しい空中戦の中で、フランタの戦闘機が攻撃を受け、煙をはいて墜落していきます。フランタは脱出に成功しますが、救命ボートが破裂してしまい、冷たい波の中を漂います。カレルは、弾が飛び交う中、フランタを助けようと、自分の救命ボートに空気を入れ始めます。しかし、それをどうやってフランタに渡すのでしょうか……。カレルの飛行機は、自ら海に突入していきます。その後、浮かんできたのは、黄色い救命ボートだけでした。

助かってフランタがスーザンを尋ねると、彼女は車椅子の夫の世話をしていました。戦争が終わり、ようやく故郷に戻ったフランタ。しかし、恋人は結婚して子どもがおり、共産主義の下、彼は投獄されてしまうのです。

 

信頼を寄せてくれていた友を裏切ってまでも止めることができない恋、好きな人とは一緒になれず、帰ってきた夫に仕える妻、自分を裏切った憎いはずの友を助けるために、いのちを投げ出す若い兵士。戦争という時代が落とす哀しみ。人間はその中で、つらい現実を受け入れるしかないのでしょうか。なんともいえない切なさが、チェコの歴史と重なります。

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