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 解夏 (げげ)

2004年1月

解夏

  • 監督・脚本:磯村一路
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  • 原作:さだまさし『解夏』(幻冬舎文庫)
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  • 音楽:渡辺俊幸
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  • 主題歌:さだまさし「たいせつなひと」
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  • 出演:大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、柄本明、
         田辺誠一、松村達雄

2003年 日本映画 103分

  • 第16回東京国際映画祭特別招待作品

美しい日本映画が、またできました。「精霊流し」に続く、さだまさし原作の小説の映画化です。

山の上から見える長崎の町と港の景色、坂道、高台にある墓地、船の汽笛、お寺と教会の鐘の音、百日紅(さるすべり)の花……と、さだまさしが育った故郷を、五官で感じる長崎の町の中で、母親、幼なじみ、恩師、恋人、かわいい教え子たち、人生の師という人々との愛の交わりが展開していきます。

主人公は、近いうちに目が見えなくなる……という恐怖の中にあります。しかし、お涙ちょうだいの物語ではありません。失明という危機をとおして見えてきた、「生きる」ことの奥深さを体験していきます。

物語

隆之(大沢たかお)は、東京の小学校の教師として、クラスの子どもたちから慕われ、充実した教員生活を送っていた。しかし、ある日、かわいい教え子たちから首をしめられ、乱暴されるという苦しい夢を見る。ベッドから立ち上がろうとするが、見ている世界がゆがみ倒れてしまう。

隆之は、幼なじみで眼科医になった博信(古田新太)を訪ねた。病名は、原因不明の難病「ベーチェット病」だった。この病気は人によって症状が異なり、隆之の場合、だんだん見えなくなり、ついには失明するケースだという。

病気について恐怖を抱きはじめた隆之に、博信は、ベーチェット病の先輩にあたる黒田寿男(柄本明)を紹介する。「失明して困ったことは、たった一つ。歯ブラシに歯磨き粉を付けることだ。でもね、それも発想の転換でね、歯磨き粉を先に自分の歯につければいいことさ……。つまり、失明して困ることはな~~んにもないってことさ」と言う黒田の姿に、隆之は励まされる。

隆之は、大学の恩師である朝村を尋ねる。朝村の娘陽子(石田ゆり子)は隆之の恋人で、教育心理学を学ぶため、モンゴルにいる。帰国したら結婚することに決めていたが、一緒になると負担をかけることになるから別れたいと告げる。

自分を慕ってくれる教え子たちとの別れは辛いが、隆之は小学校を辞め、郷里の長崎に帰ることにする。荷造りしているところへ、陽子が帰ってくる。父から連絡を受けた陽子は、研究を放りだして帰国したのだった。何も告げてくれない隆之に、陽子は怒って部屋を出てしまう。

長崎に帰った隆之は、育った長崎の町を目に焼き付けておこうと町を歩きはじめる。母(富司純子)は、再び息子と暮らすことができて喜んでいる。

造船所に勤務している、もう一人の幼なじみである松尾(田村誠一)と釣りをしながら、小さいころの思い出をたどっている隆之のもとへ、ある日陽子がやってくる。「隆之さんの眼になりたい」という陽子とともに、隆之は長崎の町を歩き続ける

解夏

陽子と訪れた聖福寺で、林(松村達雄)という老人に出会う。初対面にもかかわらず、隆之は林に自分の病気のことを話しはじめる。林の温かさに接して、はじめて他人に病気のことを話したのだ。隆之は、話すことによって楽になったことを感じる。

そんな隆之に、林は禅寺の修行にある「解夏」という言葉を説明する。隆之の失明に対する恐怖は、修行僧の行う「行(ぎょう)」だという。見えなくなったとき、その恐怖から解放される。そのときが隆之にとって「解夏」になると語る。

隆之の目のかすみがかかる範囲が、日に日に広がっていく。激しい雨の日、ついにその時がやってきた。隆之は、陽子の幸せを思い、別れてくれと告げる。

解夏


 

人生の中で、突然ふりかかってくるいろいろな出来事。だれにでもあることでしょう。そのときに、自暴自棄になることなく、私を思ってくれている人がいるということ、いろいろなものに支えられて生きているということを思い出させてくれる映画です。長崎の教会も印象的でした。

随所で涙が出てくるのですが、見終わった後、なんともいえないすがすがしくうれしい気持ちになりました。人間のやさしさがあふれていて、「あんなふうに生きられたらいいな」と、生きていくエネルギーをもらう作品です。

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