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 深呼吸の必要

2004年5月

深呼吸の必要

  • 監督:篠原哲雄
  •   
  • 脚本:長谷川康夫
  •   
  • 音楽:小林武史
  •   
  • 出演:香里奈、谷原章介、成宮寛貴、金子さやか、久遠さやか、
        長澤まさみ、大森南朋、北村三郎、吉田妙子

2004年 日本映画 2時間3分


2月下旬、沖縄では、さとうきびの刈り入れの季節を迎えていた。沖縄本島から、週に一度やってくる船に乗って、今年も「きび刈り隊」に応募した若者たちが島の桟橋に降り立った。「きび刈り隊」は、人手不足の農家が募集するアルバイトで、約1か月、農家に寝泊まりしてさとうきびを収穫するのだ。

東京で、派遣事務をしているひなみ(香里奈)は、仕事から離れて自分の生き方を考えたいと思い、このきび刈り隊に応募した。

船には、数人の若者が乗っていた。ひなみたちが働く平良家は、おじい(北村三郎)とおばあ(吉田妙子)のふたり暮らしだ。今年の平良家の「きび刈り隊」は、ひなみを入れて5人。大学生の大輔(成宮寛貴)、観光客のようなハデハデの服装の悦子(金子さやか)、一言も口を開かない高校生の加奈子(長澤まさみ)、彼らより少し年上の修一(谷原章介)。平良家の「きび刈り隊」の常連である豊(大森南朋)が、毎日のスケジュールを教え、さとうきびの刈り方を教えてくれる。

平良家で働くときの鉄則はただ一つ。「言いたくないことは、言わなくていい。」ということだ。

さっそく翌日から、きび刈りの作業がはじまった。豊の運転する軽トラックに乗ってさとうきび畑に着いた5人は、その広さに驚く。さとうきびは7万本、製糖工場の操業が止まる3月末までに、すべてのさとうきびを刈り取り、製糖工場に納品しなくてはいけない。もし間に合わなければ現金収入がなくなり、おじいとおばあたちの生活にかかわるのだ。

サトウキビは、カマとオノを使って刈っていく。農作業をしたことのない5人は、うまく刈ることができない。「頭を使って考えてしてよ!」なにかとうるさく指導する豊に反発して、数日後、大輔と悦子が平良家を飛び出してしまう。

期日までに刈り入れが終わるのだろうかと、豊はあせってくる。しかしおじいは「なんくるないさ~」と、彼らに要求することなく、黙々とカマを動かしていく。何も聞かずに彼らを受け入れてくれるおじいとおばあ。彼らは、傷や悩みを抱えているが、それぞれの心の世界を閉じたまま、畑仕事で汗を流す。

深呼吸の必要

2週間後、かつて平良家の隣に住んでいた看護婦の美鈴(久遠さやか)が、刈り入れ作業に加わる。美鈴も、人に言えない悩みを抱えていた。こうして7人は、刈り入れ作業をしながら、少しずつお互いのことを知り気遣うようになる。

ある嵐の夜、豊が運転をあやまって事故をおこし、大けがをしてしまう。このままでは、期日までに刈り取りを終えることはできない。おじいとおばあを助けるため、彼らは、作業時間を延長して、必死で刈り入れ作業を続ける。反発や疑惑を超えて、7人の若者たちの心は、ひとつになっていくのだった。

 

「きび刈り隊」に参加した若者たちは、自殺を図ったり、挫折したり、自信がなくなったり、このままでいいのだろうかと思ったり、いろいろな悩みを抱えています。人生の途中で悩んでいるとき、ちょっと歩みを止め、このように自然の中で、何も考えずに身体を動かすことがとっても大切だと思いました。それは、まるで仏教でいう「行(ぎょう)」のようです。大自然の中で身体を動かすことによって、心地よい疲れとともに、自分の悩みから解放され、これから歩むべき道が見えてくるのではないでしょうか。

それは、人生の途中でする、大きな深呼吸なのでしょう。「深呼吸」、それはだれもが必要としていることです。この映画を見て、実際に沖縄に「深呼吸」しに行く、若者がふえたらいいなと思います。いえ、大人たちも……。

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