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 ホテル・ルワンダ

2006年1月

HOTEL RWANDA

ホテル・ルワンダ

  • 監督:テリー・ジョージ
  • 脚本:ケア・ピアソン、テリー・ジョージ
  • 出演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、
          ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス
  • 配給:メディア・スーツ、インターフィルム

2004年 南アフリカ・イギリス・イタリア合作映画 122分

  • 2004年度アカデミー賞主演男優賞、助演女優賞、脚本賞ノミネート
  • 2005年度ゴールデングローブ賞作品賞、主演男優賞、
              オリジナル主題歌賞ノミネート
  • 2004年度トロント国際映画祭観客賞受賞
  • 2005年度ゴールデン・サテライト賞(ドラマ部門)作品賞受賞、主演男優賞受賞、
              オリジナル主題歌賞受賞・脚本賞ノミネート/他、
  • 他、多数受賞

1994年、ルワンダ。長い間争いが絶えなかったフツ族とツチ族だったが、3年続いた内紛は終わり和平協定が結ばれようとしていた。しかし、ラジオでは、ツチ族を非難する内容が放送され、フツ族の民兵が市内を歩き回っていた。

首都キガリにあるベルギー系の高級国際ビジネスホテル、ミル・コリン・ホテルの支配人であえるポール(ドン・チードル)は、普通では手に入らない高級ハマキやお酒を手に入れ、細かい気配りをして、ホテルを利用するお客を喜ばせていた。ポールはフツ族だが、民兵たちのやり方は気に入らなかった。しかし、表面上は静かにしていた。ポールの妻タチアナ(ソフィー・オコネドー)は、ツチ族だった。

ミル・コリン・ホテルには、国連平和維持軍が駐在し、ルワンダ政府軍の将軍も訪れていたが、ホテルの中は穏やかな空気だった。しかし、最近の不穏な動きの中で、何か起きたら家族だけは助けてもらおうと、ポールは政府軍の将軍に贈り物をして、よい関係を築いていた。

ある日、ホテルでは国連平和維持軍オリバー大佐(ニック・ノルティ)による各国の報道記者への記者会見が開かれた。報道陣をもてなしていたポールのもとへ、タチアナの兄夫婦がやってきて、これから大虐殺がはじまるらしいと告げる。しかしポールは「世界が見ている中で、大虐殺などあり得ない」ととりあわなかった。

その夜、帰宅する途中で、市内が火事になっているのを見たポールは不安になった。家に着くと、家は真っ暗だった。恐る恐るドアを開けると、暗闇の中に大勢の人が集まっていた。タチアナは、人々は家を焼かれ、信頼できるフツ族のポールのもとへ逃げて来たのだとポールに告げる。事件は、ルワンダ大統領とブルンディの大統領が乗った飛行機が狙撃され、大統領が亡くなったことをきっかけにして起きたものだった。大統領はフツ族で、ラジオは「大統領の死はツチ族によるものだ」と報じていた。放送を聞いたフツ族たちは武器を持ち、一斉にツチ族を襲いはじめたのだ。

ホテル・ルワンダ

翌朝、フツ族の兵士たちがポールのもとへやって来た。隠れている人々が見つかりそうになるが、ポールは大金を渡し、その場をしのぐ。ここでは守りきれないと考えたポールは、部屋がたくさんあるホテルへ人々を移動させる。

カメラマンのダグリッシュ(ホアキン・フェニックス)は、混乱している町へ取材に出ていった。彼の撮影した映像を見て、ポールはショックを受けるが、「この映像が世界に放映されたら、世界は黙っていない、必ず救助がくるはずだ」と確信する。しかしダグリッシュの答えは違っていた。国連平和維持軍のオリバー大佐も「我々は平和維持軍であり、争いの仲裁はしない」と助けてはくれない。民兵も手を出すことはできない海外資本のホテル、ミル・コリン・ホテルには、人々が続々とやってきて、その数は800人になっていた。

数日後、ベルギーの国連軍が来た。しかし彼らは、ルワンダを助けるためではなく、外国人をルワンダから退去させるために来たのだった。国連軍を当てにはできないと悟ったポールは、難民たちを守るためにあらゆる手段を尽くしていた。難民たちを手分けして海外の要人に救助を頼むようにし、自らもミル・コリン・ホテルの親会社サベナの社長にフランス政府が動くようにしてくれと連絡する。一方では、ルワンダ政府軍の将軍に入手困難な酒をふるまい、ホテルを守ってくれるよう頼んだ。

やがて、ホテルの難民を守ることがギリギリの状態になっていった。難民は1,268人にふくれ上がっていた。そしてついに、民兵たちがホテルにやってきた。ホテルに近寄るなという将軍からの指示を無視した民兵たちは、自分たちでホテルを仕切ろうとしていたのだ。

ホテル・ルワンダ


 

愛する夫を信頼しているタチアナを演じるソフィ・オコネドーのせつなくおびえた表情が緊迫感を与えています。人はこのような状況の中で、どのように行動するのでしょうか。夫婦はどのように信頼しあって窮地を乗り越えていくのでしょうか。人々はどのように連帯することができるのでしょうか。映画は、都合の悪い者を抹殺する(虐殺)という“人間の悪”と、人々を見捨てることはできないという良心(信頼)に応える“人間の善”を描いているようにも思います。

昨年3月に出版された曽野綾子氏の小説『哀歌』(毎日新聞社刊)でも、ルワンダ大虐殺が描かれています。『哀歌』の主人公は、日本から宣教のために派遣された修道女です。教会と人々の様子、ラジオ放送をとおして民族の連帯が強まっていったことや、教会に逃げ込んできた人々の混乱の様子が描かれていて、ホテル・ルワンダとはまた違った面からこの惨事を見ることができます。

世界が無視したルワンダの大虐殺。いったい何が行われていたのでしょうか、惨事の中で人々はどう行動したのでしょうか。わたしたちにも責任があるこの惨事を描いた「ホテル・ルワンダ」を、ぜひご覧ください。

※現在ルワンダでは、民族別証明書を排除した改革と教育プログラムが実施され、フツ族、ツチ族という用語は使われていません。。

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