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 花よりもなほ

2006年6月

花よりもなほ

  • 原案・脚本・編集・監督:是枝裕和
  • 音楽:タブラトゥーラ
  • 出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太、香川照之、田畑智子、
        夏川結衣、浅野忠信、國村準、平泉成、絵沢萌子、加瀬亮、上島竜平
  • 配給:松竹

2005年 日本映画 2時間7分


時は元禄、5代将軍綱吉の時代。江戸の町の汚~い長屋に、一人の若い侍が住んでいた。彼の名は、青木宗左右衛門(岡田准一)。長屋の人々は、「宗左(そうさ)」または、「宗(そう)さん」と呼んでいる。剣術師範だった宗左の父親は、つまらない争いで命を絶たれ、彼は仇討ちのため、信州松本から単身、江戸に上ってきた。仇の名は、金沢十兵衛。同じ長屋の貞四郎(古田新太)が、ことあるごとに「仇を見つけた」と言っては、飲み屋に宗左を呼び出すが、出会えたことはない。

この長屋には、一癖もふたくせもありそうなうるさい連中が住んでいた。同じ侍の平野次郎左衛門(香川照之)は士官を望んでいるが口はなく、いくどとなく腹を切っているので、長屋の連中は彼を助けようともしない。おのぶ(田畑智子)の怒鳴る声が聞こえてきた。父親の善蔵(平泉成)が仕事をさぼって家から出ようとしないのだ。お勝(絵沢萌子)と乙吉(上島竜平)母子はびくをしょい、大きな箸をもって家から出てきた。ゴミ拾いの仕事だ。

こんな長屋に、掃き溜めに鶴のような美しい女性とその息子が住んでいた。おさえ(宮沢りえ)と進之介だ。この母子も、仇討ちの使命を負っていた。

これら長屋の住人に、大家(國村準)と、大家のところへ来た後妻(夏川結衣)がからんできます。

おせっかい長屋の人情は厚い。つけはなすようでいて、しっかり助けてくれる。壁の穴から隣をのぞき見て、生活のすべてがわかってしまうし音は丸聞ごえ。プライバシーも何もない。しかし、時には、聞こえてきても聞かなかったふりをする。

ある日、貞四郎が仇を見つけたと宗左に語った。しかし、宗左は、この男(浅野忠信)のことをすでに知っていた。しかし、戦いをいどもうとは思わなかった。

祭りの日、長屋の人たちは仇討ち劇をして町の人をわかせ、お足を集めていた。宿敵の役をした宗左は、この芝居からあることを思いつく。

 

死をテーマにした「幻の光」、死んでから天国に行くまでの7日間の出来事をとおして人生を語った「ワンダフルライフ」、オウムに入信した人の家族からの思いを描いた「ディスタンス」、カンヌ映画祭で、映画祭最年少で最優秀主演男優賞(柳楽優弥)を受賞した「誰も知らない」など、若手監督として活躍している是枝監督が、時代劇に挑戦しました。

「花よりもなほ」は喜劇のように見えますが、軽妙な言葉のやりとりの裏に、大切なメッセージが込められています。江戸時代の仇討ちを描きながら、現代世界の重要な問題である復讐について描いているその才能に、「さすが、是枝監督!」と拍手したくなりました。

音楽を担当している“タブラトゥーラ”は、女子パウロ会のクリスマスCDでおなじみの、つのだたかし氏とアンサンブルエクレジアの別のグループ名です。軽快な古楽器の音色が、貧しい長屋に活気を与えています。一瞬ですが、井戸掃除の場面で、タブラトゥーラの面々が楽師として登場します。お見逃しなく!

社会や家族から課せられた役割と個人の生きる道。主人公が仇討ちへの思いから解放されていく一方で、同じ長屋を隠れ場としていた赤穂浪士たちの仇討ちが成功していきます。

祭りや、住民総出で行う井戸掃除という、興味深い長屋の生活を追いながら、「個」を生きていくことの大切さを、ほのぼのと示しています。一度見たら、やみつきになりそうな映画です。

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