home>シスターのお薦め>お薦めシネマ>麦の穂をゆらす風

お薦めシネマ

バックナンバー

 麦の穂をゆらす風

2006年11月

THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY(大麦を揺らす風)

麦の穂をゆらす風

  • 監督:ケン・ローチ
  •   
  • 脚本:ポール・ラヴァティ
  •   
  • 出演:キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレイニー、
          リーアム・カニンガム
  •   
  • 音楽:ジョージ・フェントン
  •   
  • 配給:シネカノン

2006年 アイルランド=イギリス=ドイツ=イタリア=スペイン映画 126分

  • 2006年カンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞 ケン・ローチ監督作品

1920年、アイルランド。イギリスの支配下で、アイルランドの人々は貧しい生活を強いられていた。南部の町、コークでは、青年たちがハーリングの試合に興じていた。デミアンは、ロンドンの病院で医師として働くために出発しようとしていた。試合を終えたデミアンが、別れのあいさつをするため、世話になったペギーの家にきたときだった。イギリスの警察隊がやってきて「集会を持ってはいけない!」ときつくとがめ、一人ひとりの名を尋ねた。ペギーの孫のミホールは、アイルランド語で名乗ったため、納屋に押し入れられ暴力をふるわれ、対には殺されてしまう。デミアンは、「仲間がこんな目に遭わされても、ロンドンに行くのか」と仲間たちから問い詰められるが、ロンドン行きの列車に乗るために駅に向かう。

しかし、駅で、イギリス軍の横暴な振る舞いに屈せず抵抗し抜いた運転士や車掌らの姿を見て、ロンドン行きをあきらめ、兄テディとともに、アイルランドの独立のためにこの地に残ることを決意する。

武器を持っていない彼らは、イギリス軍を襲っては武器を集め、敵と戦うための訓練をしていった。人の命を救うために働こうとしたデミアンだが、人を殺し、やがては裏切った仲間を銃殺する役目を果たしていくようになる。戦いは激しさを増していった。イギリスは停戦を申し入れ、戦いの日々は終わった。人々はアイルランドの自由と平和を喜び、宴を開いた。デミアンは、ペギーの孫シネードと愛を語り合った。

しかし、両国の間で結ばれた講和条約は、アイルランドの人々が目指していたイギリスからの完全な独立とは、ほど遠いものだった。アイルランドの中は、この条約を受け入れて一つのステップにしようというグループと、条約に反対し、完全な独立を目指して戦いつづけようというグループに二分されていく。デミアンの兄テディは政府軍であるアイルランド自由軍に入り、デミアンは条約反対のグループに入った。こうして独立運動は内戦となり、二人は敵となってしまった。

 

タイトルの「麦の穂をゆらす風」は、アイルランドの古くから歌われている歌のタイトルから取ったものです。イギリスの支配下で、恋人との絆を断ち切って、祖国の自由のために仲間たちと独立のための戦いに出る苦しい心を歌ったもので、まさにこの映画の内容です。


   ふたりの絆を断ち切るつらい言葉は     なかなか口にできなかった     しかし外国の鎖に縛られることは     もっとつらい屈辱     だからわたしは彼女に告げた     「明日の早朝あの山へ行き、勇敢な男たちに加わる」と     静かな風が峡谷をわたり     麦の穂をゆらしていた         (2番より)

この歌は、イギリスとの戦いで亡くなった人を弔うために、よく歌われたそうです。

冒頭のハーリングに興じるシーンを除いて、最後まで、胸が苦しくなり辛さが続きました。男たちの戦いの中で、女たちも決死の態度でイギリス軍に抵抗し、何回も何回も悲しみの涙を流します。しかし、独立のための戦い流血は、やがて仲間たちの分裂によって、仲間や家族に向けられるようになります。何のための戦いだったのか。無駄な死、理屈に合わない死、いくつもの命が散っていきました。ケン・ローチ監督は、この悲惨なアイルランドの歴史から、今も世界各地で続いている戦いの、空しさ、愚かさを伝えています。

▲ページのトップへ