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 合唱ができるまで

2007年1月

合唱ができるまで

  • 監督:マリー=クロード・トレユ
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  • 撮影:ピエール・ストウベール
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  • 出演:クレール・マルシャン、モーリス・ラヴェル音楽院合唱団
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  • 配給:バップ&ロングライド

2004年 フランス映画 98分


日本では、年末になるとベートーべンの第9交響曲が、いろいろなところで演奏されますね。オーケストラだけでなく、合唱団も大規模になるので、演奏会本番までの練習は、さぞ大変なことでしょう。しかし、ハーモニーがきれいにかさなったときに体験する、体の芯から湧き起こってくる感動は、すばらしいものがあると思います。

パリ13区にある地域のアマチュア合唱団は、クリスマスの夜、教会のミサで歌うために練習をはじめました。指導者であるクレール・マルシャンのもと、子どもたち、10代の女の子たち、中高年の男女たち、そして、オーケストラと、4つのグループに分かれてパート練習が行われました。クレールを助ける女性たちも加わり、年代に分かれたパート練習が行われます。

素人ですから、クレールや協力者たちの指導も大変です。しかし、クレールと協力する女性たちの指導が実に見事で、それぞれの年齢にふさわしい練習が行われます。

子どもたちには、発声の雰囲気をつかむために、手の動きを添えながら声を出す練習をしていきます。「ポンと投げ出すように声を出すのよ」と言いながら、クレールは手を前に出し、物をポンと投げる動作をします。子どもたちは、クレールの動きに会わせながら、まるで遊ぶ感覚で声の出し方を身につけていきます。子どもたちが退屈したり、歌うことを嫌いにならないように、ムリのない時間と内容で練習が積み重ねられていきます。

これで歌えるようになるのかしら……と心配になるような初回の練習ですが、こういう土台作りが大切なのでしょう。

10代の若い女の子たちや中高年の男女のグループへの練習も、クレールの独特の練習方法が、効果を発揮していきます。また、オーケストラの練習も進みます。

そしていよいよ4つのグループが集まっての合同練習の日がやってきました。しかし、大勢の声はなかなか一つにならず、オーケストラともリズムが合いません。「みんな、私の方を見て! 集中して!」クレールの檄が飛びます。ついにクレールは、「こんなに練習したのに、どうして……」と落胆してしまいます。このとき、パート練習を指導した女性たちがクレールを励まします。

再び立ち上がって指揮棒を持ったクレール。みんなが集中しはじめると……ある瞬間、ハーモニーがそろいました。全員がその瞬間を感じました。「みんな、感じた? 音ができできたわよね。ね、わかった?」クレールの喜ぶ顔に、みなもうなずきます。それからは順調に仕上がっていきます。

歌の内容は、イエスの誕生の場面を歌ったものです。その中で、10代の女の子と小学生の男の子の2人のソロのかけ合いで歌う場面があります。天使が羊飼いたちに、イエスの誕生を知らせる場面です。練習のとき、天使役の女の子は、いまひとつ真剣さがなかったのですが、全体練習の場で、相手となる羊飼いの少年と歌っていく中で、彼女は天使になりきっていきました。パート練習のときは、自分の置かれている重要性が分かっていなかったのかもしれません。2人のかけあいを聞きながら、主イエスの誕生のすばらしさが、分かるような気がしました。

この映画の中で、神は、合唱団のメンバーがひとつになることによって見えてくるものがあることを体験さているような気がしました。さらに、映画を見る観客が加わり感動の輪は大きくなっていきます。

音楽に携わる人、キリスト者、教育に関係する人には、ぜひ見ていただきたい作品です。人と人が関わること、一緒にひとつのものを作り上げていくことのすばらしさを見させてくれる感動の映画です。


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