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 ミルコのひかり

2007年9月

Rosso Come Il Cielo

ミルコのひかり

  • 監督:クリスティアーノ・ボルトーネ
  • 脚本:クリスティアーノ、モニカ・ザペッリ、パオロ・サッサネッリ
  • 音楽:エツィオ・ボッソ
  • 出演:ルカ・カプリオッティ、フランチェスカ・マトゥランツァ、
        シモーネ・グッリー、パオロ・サッサネッリ
  • 配給:シネカノン

2006年 イタリア映画 100分

  • 2006年サン・パウロ国際映画祭観客賞
  • 2007年モントリオール国際児童映画祭グランプリ

目を閉じて耳を澄ませると、いろいろな音が聞こえてきます。次第に空気の動きも、肌に感じるようになります。五感を働かせて“感じる”感覚がさえてくると、見えているときには分からなかったことが分かってきます。視覚を失ったミルコは、音の世界の広がりに気づいていきます。そして、指先の触覚も敏感になっていきます。大切なものは何か、「ミルコのひかり」は、それを教えてくれます。

物語

1971年。イタリア、トスカーナに、ミルコ(ルカ・カプリオッティ)という映画好きの少年がいました。つつましく働く両親に愛されて育っていましたが、ある日、両親の留守に、いたずらして銃が暴発し、視力を失ってしまいます。両親は普通の学校に通わせようとしますが、視聴覚障害者は特殊学校に入るよう法律で定められていました。ミルコは、愛する両親と別れて、全寮制の盲学校に入ることになりました。

目が見えないことをなかなか受け入れることができず、心を閉ざして何かと抵抗していたミルコは、ある日、校庭でけんかをし、校長先生からお仕置きを受けました。立っているようにと入れられた部屋で、ミルコは戸棚の中にあるオープンリールのテープレコーダーに触れます。テープレコーダーは、音を録音することができると知ったミルコは、自分の手をたたいた音や自然の音を録音してみます。ミルコは、最初に声をかけてくれたフェリーチェ(シモーネ・グッリー)に手伝ってもらいながらいろいろな音を集め、次第に音の世界に引かれていきます。

盲学校の管理人をしている母親を持つ、ちょっと生意気な女の子フランチェスカ(フランチェスカ・マトゥランツァ)と仲良しになったミルコは、宿題の自然研究を、大嫌いな点字で出す代わりに、季節を表現する音を録音して物語を作り提出しました。

それは、今までだれも想像したこともない提出物で、よいできばえでした。しかし、学校を卒業して社会に出てから苦労することのないように、手に技術をつけさせようという考えを持っている校長は、自分が盲人として辛い思いをした体験から「盲人に可能性はない」と断言し、ミルコの提出した音の作品を拒否し、ミルコからテープレコーダーを取り上げてしまいます。

しかし、ミルコには音を物語ることができる特別な才能があると感じたジュリオ神父(パオロ・サッサネッリ)は、こっそりとミルコにテープレコーダーを渡し、音の世界の大切さを教えます。再び希望を得たミルコは、録音技術とアイデアを大きくふくらませていきます。

保護者たちを集める盲学校の一大イベントである学年末の発表会が近づいてきました。校長は、発表会で披露する聖書朗読のための生徒たちを選びます。それは、本当につまらない朗読でした。

そのころミルコは、フランチェスカがシナリオを書いた「王女と15人の兄弟」の物語を録音したらどんなにおもしろいだろうと思っていました。しかし、これを作品にするためには、フランチェスカとフェリーチェだけでは不可能です。そこでミルコは、朗読者に選ばれなかった少年たちを集め、作品作りをはじめます。その輪は次第に広がり、役割をもらった少年たちはこの作業に夢中になっていきます。しかし、校長にテープレコーダーを使ってはいけないと言われているだけに、極秘で行動しなくてはなりません。そしてある日、ミルコたちの計画は校長先生にばれてしまい、ミルコは退学処分を言い渡され、家に帰されることになりました。

ミルコとの分かれが辛いフランチェスカは、あることを思いつきます。その行動は、校長を失脚させるほどの大きな動きになっていきました。

 

「ミルコのひかり」は、イタリアの映画界で、サウンド・デザイナーとして活躍しているミルコ・メンカッチ氏の少年時代を描いた作品です。子ども時代に興味を持ったこと、それは神がその子に与えられた才能です。周囲の無理解に屈することなく、自分の興味をどんどん進めていくと、その子のよさが輝いてきます。今の時代は、子どもたちの遊ぶ時間もなく、興味があることを見つけることも難しくなっています。

出演している子どもたちの中には、フェリーチェ役のシモーネ・グッリーなど、実際に盲学校に通っている子もいます。目の見える子どもたちは、彼らと一緒に生活しながら、撮影を進めていきました。どの子もすばらしい演技で、引き込まれてしまいます。

ミルコの真剣なまなざし、そして笑顔を見ていると、「こんな生き方をしていていいのかな……」と自問させられるミルコの輝きです。

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