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 風の外側

2008年1月

out of the wind

風の外側

  • 原作・脚本・監督:奥田瑛二
  • スーパーバイザー:安藤和津
  • 音楽:稲本響
  • 出演:佐々木崇雄、安藤サクラ、かたせ梨乃、北村一輝、
       夏木マリ、奥田瑛二
  • 配給:ゼアリズエンタープライズ

2007年 日本映画 123分


若いとき、人は「夢」を抱くものである。その夢に心を躍らせ、夢に向かって努力する。この映画は、自分の名も語らずまともに生きること、夢をいだくことをあきらめている青年と、夢に向かってひた走っている中で挫折を経験した女子高生が、夢に向かって歩き出す物語です。

物語

下関の名門ミッションスクール、梅光女学院高校に通う岩田真理子(安藤サクラ)は、歌が大好きで高校の合唱部に属している。将来はオペラのプリマドンナになるという夢を持ち、個人的にも歌唱指導を受けて練習している。

ある日、フェリーを降りたとき鞄が海に落ち、一人の青年(佐々木崇雄)が海の飛び込んで拾ってくれた。しかし、宝もののように思っていた「トスカ」の楽譜がないことに気づく。再び青年に出会った真理子は、その償いにと、下校のボディーガードをお願いする。合唱部員たちは、制服ストーカーに悩んでいたのだ。

青年は、毎日下校時に真理子たちの後を歩き、フェリー乗り場まで送ってくれた。真理子は青年と親しくなっていく。真理子は自分の夢について語るが、無口で暗い青年は自分の名前さえ教えようとしなかった。青年は趙聖文。在日三世で、すでに人生をあきらめており、借金の取り立てなど、やくざな世界で生きていた。

風の外側
©2007 ゼロ・ピクチュアズ/K・S・F

あることから彼の名を知った真理子は、彼の家を訪ねる。韓国語を勉強していた真理子は青年の祖母と話し、在日の街で生きている青年の家族に、自分の家にはない自由と温かさを感じていく。真理子の母(かたせ梨乃)は日本人だが、父(奥田瑛士)は在日だった。事業に成功し、今は地元の実業家として豊かな生活をしていた。在日であることを表に出さないで生活している真理子は、聖文や聖文の母(夏木マリ)たちの生活に触れ、父の生き方に対して納得できないものを感じはじめていた。

合唱コンクールが近づいてきた。ソロを歌えると信じていた真理子は、ソロを下ろされ、自暴自棄になる。一方聖文は、兄貴分の田丸(北村一輝)から、ある男を殺すようにとピストルを渡される。その相手は、真理子の父だった。

 

前作の「長い散歩」で、家族とのコミュニケーションをテーマに、妻を失った夫の心の奥深い空虚感をあつかった奥田瑛二監督が、今回は、娘のサクラさんをヒロインにして「青春映画」を撮り、差別に対する家族の矛盾にとまどっている少女が、同じ苦しみを持つ青年との関わりの中で、今まで心の奥にしまっていた問題を次第に解決していくという、またも人間の深い部分を描き出していきました。差別を正面に出すのではなく、映画を見終わった後、差別へのしっかりした問題提起がされていることに気がつきます。

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