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 草原の女

2008年10月

珠拉的故事 英題:The Story of Zhula

草原の女

  • 監督:ハスチョロー
  • 脚本:ルー・ユアン
  • 音楽:チャガーン
  • 出演:ハースカオワ、トゥメン、デンジバヤル、バオハンルン
  • 配給:グアパ・グアポ

2000年 中国映画 91分

 

日中平和友好条約締結30周年と、北京オリンピック開催を記念して、「中国映画全貌2008」が、10月18日(土)~12月19日(金)まで、新宿の新宿K's cinemaで開催され、計69作品が上映されます。この開催記念として特別公開作品2点が、最初の2週間、上映されます。その一つが「草原の女」です。

「草原の女」は、今年の初めに公開された「胡同(フートン)の理髪師(2006)」を撮ったハスチョロー監督の長編デビュー作です。監督の故郷・内モンゴル東部の草原が舞台です。土地に生きる人々の生活を追ったハスチョロー監督の作品は、ドキュメンタリー映画のように静かな迫力があります。

物語

モンゴルの草原に住む遊牧民は、羊を追いながら“ゲル”という移動式住居で生活する。草を求めて移動するときは、ゲルをたたんで荷馬車に積んで運び、目的地に着いたら柱を立て、フェルト天幕を張り、床を敷いてできあがる。

息子アヨールと2人で暮らすゾル(ハースカオワ)は、都会に出て行ったまま、何年も帰らない夫を待っていた。しかし、ゲルを守る生活は女性には厳しく、ゾルには疲れが出ていた。特に冬は辛かった。

原の女

ある日、仕事を求めて一人の男がやってきた。はじめはお金は払えないからと断るが、羊がオオカミから襲われたときに守ってくれたことから、ゾルは、男に羊追いの仕事を任せることにする。男はなぜか火を怖がり、火の意味がある「ガル」と呼ばれていた。

ガルは、ゾルのゲルの近くに自分のゲルを建てるが、人々のうわさになっては困ると、ゾルはもう少し離れたところに建てるように促す。アヨールはガルに寄っていくが、ゾルは仕事以外は距離を置いていた。

夜、ゾルが熱を出し、アヨールは助けを求めてガルのゲルの戸をたたいた。ガルはゾルを町の病院に連れて行き、このことがきっかけとなり、ゾルはガルに心を開く。アヨールはガルを慕い、いろいろなことを教わっていった。2つのゲルの距離は近くなっていた。

ガルが羊追いの仕事に出て行ったとき、アヨールはガルが隠し持っているものをゾルに見せる。それはピストルだった。それを見たゾルははっとした。それはピストルの形をしたライターで、ゾルが夫にプレゼントしたものだった。なぜ、ガルが持っているのか。数年前、ガルは、ゲルの火事で妻と子を亡くしていたのだった。

思いがけず、夫ラシが、雪の中を車に乗って帰ってきた。ラシは「ゾルと別れ、町で結婚することになった。アヨールの将来を考え、町の学校に通わせるためにアヨールを引き取りに来た」というのだった。

ガルを頼りにしはじめたゾル、ガルを父のように頼りにしていったアヨールだったが、ラシの出現によって、母と子の心は揺れ、ガルの立場も揺れはじめた。

 

夫の留守をしっかり守らなければと自分を律しながらも、頼れる存在を求めるゾルや、アヨールの子としての複雑な思いが、繊細に描かれています。また、最初はどんな人かわからないガルの、じっと内に秘めたものをもっている演技もジーンと来ます。

ゲルでの生活やモンゴルの衣装も興味深く、ゲルの外に出て、ゲルにもたれて泣くシーンがとても印象的です。

人を思う、人を愛するとはどういうことかとうことを、ことばではなく生き方で教えてくれる心温まる作品です。

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