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 パリ20区、僕たちのクラス

2010年7月

ENTRE LES MURS

パリ20区、僕たちのクラス

  • 監督・脚本:ローラン・カンテ
  • 脚本:フランソワ・ベゴドー、ロバン・カンピヨ
  • 原作:フランソワ・ベゴドー著『教室へ』(早川書房)
  • 出演:フランソワ・ベゴドー 、エスメルダ・ウエルタニ、
        アンリエッタ・カサランダ
  • 配給:東京テアトル

2008年 フランス映画 128分

  • 第61回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞受賞)
  • 2009年セザール賞最優秀脚色受賞
  • 2009年インディペンデントスピリット賞最優秀外国映画賞受賞
  • 2009年アカデミー賞最優秀外国語映画賞ノミネート



パリ20区にある中学校の、ひとつのクラスの様子を追った作品です。先生に反抗的態度を示し、授業を受ける意志を感じない生徒たちを前に、先生たちの苦労は大きくなるばかりです。これで学校教育が成り立っていくのでしょうか? 子どもたちといえども、思春期の彼らは、家庭に、友人関係に、学校に、それぞれ悩みや不安を抱えています。「学校を、社会を反映する小宇宙として描きたかった」と語るローラン監督は、フランソワ・ベゴドーの本に出逢い、フランソワと一緒に脚本を練り、フランソワ自身が教師を演じることで、このテーマを深めていきました。教える者と教わる者としての関係ではなく、対等な人間のかかわりとしてこのクラスの日常を映し出していきました。

 

物語

 

この学校に来て4年目のフランソワ(フランソワ・ベゴドー)は、国語の教師です。クラスの24名は、いろいろな国籍の生徒ばかり。14歳は、周囲の愛情を、今までのように単純には受け入れられない年頃です。おしゃれもしたい、遊びもしたいし。大人の矛盾にも気がついてくるし、自分を主張するためにがんばることもある。授業でも、先生の言うことに意味を見いだせないと、やる気が起きないようです。フランソワのクラスも、まさに「授業崩壊」が起きつつあります。

   

パリ20区、僕たちのクラス
(C) Haut et Court-France 2 Cinema

 

フランソワは一人ひとりと対話しようとしているのですが、生徒の反応はそれぞれ。だれかを思って発言すると、下手をすれば他のだれかを傷つけてしまうのです。

フランソワは、生徒たちに「自分を紹介する文章を書く」という宿題を出しました。書いてきた文章を発表するようにと促すのですが、それがまた一騒動。何かと批判的にフランソワを見ているエスメラダ(エスメルダ・ウエルタニ)とのやりとりの中で出できた「ベタス」という言葉をきっかけに、クラスに緊張が走ります。「ベタス」という言葉を「娼婦」という意味に取った女子生徒たちは、対フランソワの姿勢で団結します。そこからいろいろな不満が出てことは大きくなり、話は懲罰委員会にまでに発展します。

 

BOX パリ20区、僕たちのクラス
(C) Haut et Court-France 2 Cinema

 

フランソワの同僚たちも、クラス担任の枠を超えて、生徒たちについて話し合います。

夏休みの時期になりました。フランソワは、この一年に学んだことを分かち合うように促します。私はこれを学んだ、私はあれを学んだと生徒たちは発表していきます。しかしアンリエッタ(アンリエッタ・カサランダ)は、「私はこの一年、何も学ばなかったわ」といとも簡単に言います。これを聞いたフランソワは・・・。

先生たちの思いとは関係なく、子どもたちは楽しい夏休みを迎えるため、学校を後にします。

 

まるでドキュメンタリーと思えるほど自然性で迫力あるクラスの様子は、今回が初めての演技という生徒たちの演技力によるものです。

こんな反抗的な生徒はほっとけ!! と言いたくなるクラスです。フランソワの思いとは関係なく、生徒たちは勝手にしています。しかし内心では「先生は自分のことをよく思っていない」という思いを持ち続けている子もいます。

物語の最後に問題解決があるのではなく、困惑のまま映画は終わっていきます。教育って何? 先生の苦労は報われないの? 生徒の態度に怒りを感じてきますが、フランソワのような姿勢だからこそ、生徒たちは自由に反抗し、自己主張できているのかもしれません。

いったいどうすればいいのか。この映画は、学校生活について考え、話し合うきっかけを与えています。


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