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 再会の食卓

2011年 1月

APART TOGETHER

再会の食卓

  • 監督・脚本:ワン・チュアンアン
  • 脚本:ナ・ジン
  • 音楽:シン・イギョン
  • 出演:リン・フェン、リサ・ルー、シュー・ツァイゲン
  • 配給:ギャガ
 

2010年 中国映画 96分

  • 2010年度ベルリン映画祭銀熊賞受賞・最優秀脚本賞


戦争によって家族が引き離される悲劇は、いつの時代も、世界中いたるところにあります。「再会の食卓」は、国民党軍として台湾に渡った夫と別れて中国に残された妻と、彼女を救うために夫となった夫婦の物語です。台湾に住む元夫の突然の訪問という衝撃的な出来事が、家族をゆさぶります。家族とは何か、夫婦とは何かを問いかけてくる作品です。

 

物語

上海で夫と暮らすユイアー(リサ・ルー)は、子どもたちも育ってそれぞれ家族を持ち、慎ましいが穏やかに暮らしていた。しかし、彼女のもとに届いた一通の手紙によって、心に大きな波が立つ。40数年前に別れた夫イェンション(リン・フェン)からの手紙で、上海にやってくると言うのだ。国民党軍の兵士だったイェンションは、1949年に台湾に渡り、その後、中国と台湾は分断されたため、ふたりは別れ別れになったのだった。ユイアーは、国民党軍の妻として厳しい生活を強いられ、文化大革命のときは死をも考えた。そんなユイアーを救ってくれたのが、シャンミン(シュー・ツァイゲン)だった。国民党軍の妻と結婚したことで、シャンミンは貧しい生活を強いられた。シャンミンとの間には、息子とふたりの娘があった。

イェンションが来ることを知り、シャンミンは市場へ行き、大金をはたいてカニを買う。イェンションを歓迎して家族が食卓を囲む。イェンションは台湾で結婚したが、妻を亡くした。ユイアーを台湾に連れて行くために来たと言う。娘たちが猛反対する中、シャンミンは「好きにさせてやれ。わたしと苦労することはない。母さんが幸せならいいだろう」と語る。

 

再会の食卓

 

イェンションとふたりきりになったユイアーは、辛く長かった日々を語る。「この家のため、家族のために過ごしてきた。これからは、自分のため、愛のために生きたい。」ユイアーは、夫と家族を置いてイェンションとともに台湾に行くことを決心する。

 

再会の食卓

 

 

元の夫を選ぶ妻を受け入れる夫。何十年も暮らしてきた夫は、まさに裏切られたような思いのはずなのに、ここまで言える思いは何なのでしょうか。本当に愛しているから言えることばのように感じます。愛する人が幸せになるために、彼女の望みに任せるという道を選びます。沖縄のおばあを描いた映画「ナビィの恋」(中江裕司監督1999)と似たものを感じます。

しかし見ている者は、シャンミンのように割り切れません。子どもが大きくなるまで一緒に暮らしてきた、いままでの長い結婚生活は、いったい何だったのかと。自分の前にいた妻は、いつわりの心で過ごしていたのだ。いつわりの心を何十年もいだいて、人間は生きていけるのだろうか、と。ユイアー、イェンション、シャンミン、それぞれの心の深いところにある切ない愛がしずかに問いかけてきます。

「再会の食卓」のタイトルにあるように、さまざまな食事の場面が出てきます。イェンションを迎えるための食卓の準備、シャンミンとユイアー一家がイェンションを迎えたときの豪華な食事。子どもたちが去り、ユイアーをはさんだイェンションとシャンミンの3人の食卓、ユイアーとイェンションを送り出したシャンミンひとりの食卓。そして、数年後の食卓。上海の発展と、中国の日常生活が垣間見られ、その面からも“一見の価値あり”の作品です。


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