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 ムサン日記~白い犬

2012年 5月

THE JOURNALS OF MUSAN

ムサン日記~白い犬

  • 監督・脚本・エグゼクティブプロデューサー: パク・ジョンボム
  • 出演:パク・ジョンボム、チン・ヨンウク、カン・ウンジン
  • 配給:スターサンズ

2010年 韓国映画 2時間7分

  • 2010年プサン国際映画祭 ニューカレント賞(グランプリ)、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞
  • 2010年ロッテルダム国際映画祭 タイガーアワード(グランプリ)、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞
  • 2011年東京フェルメックス 審査員特別賞
  • 2011年トライベッカ映画祭 新人監督賞
  • 2011年サンフランシスコ映画祭 新人監督賞
  • 2011年ロシア・タルコフスキー映画祭 グランプリ、ロシア批評家連盟賞
  • 2011年イタリア・ペサロ映画祭 大賞、ペサロ・ヤング・シネマ・アワード
  • 他、多数受賞

兵役時代に、北野武監督の「HANA-BI」を観て映画監督を目指したというパク・ジョンボムは、韓国の巨匠イ・チャンドン監督の助監督として活躍し、本作で、初の長編に挑戦しました。製作、監督、脚本、主演と一人で4役をこなした「ムサン日記~白い犬」は、各国の映画祭でたくさんの賞を受賞し、韓国でもっとも期待されている監督です。

「ムサン」は、北朝鮮と中国の国境の町で、脱北者の多くはこの街を目指して国境を越えるそうです。パク・ジョンボム監督の友人で、実際に脱北者であったチョン・スンチョル氏が、この映画の主人公のモデルです。二人は映画製作を夢見てともに学びましたが、スンチョル氏はガンに冒され、映画製作の夢をパク監督に託し、夢半ばで亡くなりました。このときのスンチョル氏のメッセージが、本作製作のきっかけになっています。


物語

国境を越え韓国にやってきた脱北者のスンチョル(パク・ジョンボム)は、仲間のギョンチョル(チン・ヨンウク)と安いアパートを借りて暮らしていた。ギョンチョルはすぐに韓国での生活に順応し、危ない仕事をしてお金を得ていたが、スンチョルはポスター貼りの仕事をし、わずかなお金を得ていた。

おかっぱ頭にみすぼらしい服、いかにも北から来ましたというスンチョルは要領が悪く、仕事もうまくいかなかった。スンチョルの貼ったポスターはすぐはがれ、オーナーを怒らせていた。刑事のパクが心配して仕事を紹介してくれるが、脱北者ということが分かると、面接も断られてしまう状態だった。そんなスンチョルを、ギョンチョルはバカにしていた。しかし、見捨てることはできず何かと世話を焼き、スンチョルの外での仕事のためにタウンジャケットを買ってくれた。ギョンチョルは、そのときズボンを万引きした。スンチョルは貧しくても、そんな不正は許せなかった。

ムサン日記~白い犬
(C) 2010 SECONDWIND FILM. All Rights Reserved


安らぎの場がないスンチョルだったが、唯一心を慰めてくれるのが、教会で聖歌隊に属しているスギョン(カン・ウンジン)の、天使のような姿だった。しかし、スギョンの後を追ったスンチョルは、彼女が父親の経営する風俗系カラオケ・バーで働いていることを見る。スンチョルは、スギョンのカラオケ・バーで働き始める。

ギョンチョルは、脱北者たちが北にいる家族に送るお金を預かり、代わって送金する闇のブローカーを始め、私腹を肥やしていた。

スンチョルは白い犬を見つけ、アパートで飼い始める。「ペック(韓国語で白の意味)」という名を付けられた白い犬は、スンチョルにとって大切な存在となる。しかしギョンチョルは気に入らなかった。

ムサン日記~白い犬
(C) 2010 SECONDWIND FILM. All Rights Reserved


ある日、スンチョルはポスター貼りの不良グループに目を付けられ、因縁を付けられて新しいタウンジャケットをナイフで切られてしまう。それまで反抗したことのなかったスンチョルだったが、はじめて怒りを発する。一方ギョンチョルも、闇の送金が公安に見つかり、お金を取り戻そうとする仲間に追いかけられていた。

怒りを抱えてアパートに戻ったスンチョルは、ギョンチョルにも怒りをぶつける。その態度に腹を立てたギョンチョルは、スンチョルが留守のときにペックを捨ててしまう。

そのとき、スンチョルは教会で行われている祈りの会に参加していた。そこでスンチョルは、脱北者支援施設を出たばかりであること、さらに、北朝鮮にいるとき、飢えのために暴力をふるい人殺しをしてしまったことを告白する。その話を聞くスギョンや信者たちは、だれもスンチョルを責めなかった。さらにスギョンからは、友達になろうと声をかけられた。

アパートに戻ったスンチョルは、ペックがいないことを知り、ペックを探しに街に出る。命の危険を感じたギョンチョルは、スンチョルに、アパートに隠してあるお金を持ってきて欲しいと頼む。彼の願いを聞き入れ、アパートへと向かうスンチョル。しかし、スンチョルの中には、ある思いが動き始めていた。

 

脱北者の厳しい生活が露わになります。彼らの底辺の生活とともに、彼らを受け入れる韓国の人々の姿も出てきます。韓国で暮らしている脱北者は、2万人と言われています。幸せになろうとして、命懸けで北を出てきた友人の声なき彼らの存在を、パク・ジョンボム監督は、「ムサン日記~白い犬」をとおして世界に訴えました。


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