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 ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳

2012年 8月

ニッポンの嘘

  • 監督:長谷川三郎
  • プロデューサー・撮影:山崎裕
  • プロデューサー:橋本佳子
  • 朗読:大杉漣
  • 配給:ビターズエンド

2012年 日本映画 1時間54分


写真家「福島菊次郎」の名前をはじめて知ったのは、1987年の新聞記事でした。『戦争がはじまる』というタイトルの福島菊次郎仕事集という写真集の紹介でした。その写真の中で、小学生低学年くらいのおかっぱ頭の女の子が、プリントを束ねた冊子を見て、一生懸命に口を開いていました。説明文を読むと、この写真は引き上げ児童の日本語教室を撮影したものでした。『戦争がはじまる』は、それまでの20万枚のネガから選んだ写真集で、福島氏が66歳のときの出版です。

今年、この「福島菊次郎」の名が再び目の前に現れました。「ニッポンの嘘 報道写真家福島菊次郎90歳」というドキュメンタリー映画が公開されるというのです。

1921年生まれの福島氏は、1946年から郷里で時計店を営みながら、広島の被爆者を撮影しはじめました。被爆症に苦しむ家族を10年に渡って追った写真集『ピカドン ある原爆被災者の記録』で高い評価を受け、日本写真批評家協会賞特別賞を受賞し、プロとして歩みはじめます。

その後、ABCC原爆障害調査委員会、祝島、瀬戸内海離島、安保闘争、三里塚闘争、自衛隊、リブ運動、公害、天皇の戦争責任展、原発など、社会問題を取材して写真集を発表していきました。

映画では、その写真集毎に菊池氏の写真と人生を追いながら、日本の闇を映し出していきます。写真は、福島氏の、日本の嘘への戦いであり、彼の怒りの表現でした。

今91歳になった菊池氏は、シャッターを押す信念を、一人暮らしの生活でも生きていきます。それもすさまじいまでに生き抜いています。

それは、福島第一原発の事故を通して、さらに強まっています。震災から半年がたった昨年の9月、福島氏はカメラを握って、福島に向かいました。制止されるのも聞かず、放射能の町でシャッターを押します。福島に広島の文字が重なりました。

菊池氏の写真は、まさに人生を賭けた、いのちを賭けた仕事です。もうこのような反骨精神の人は出ないかもしれません。彼の人生はまさに、貴重な昭和の記録です。


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