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 ソハの地下水道

2012年 9月

IN DARKNESS

ソハの地下水道

  • 監督・脚本:アグニエシュカ・ホランド
  • 音楽:アントニ・コマサ=ワザルキェヴィチ
  • 出演:ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、ヘルバート・クナウプ、
      ベンノ・フユルマン、キンガ・プライス
  • 配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス

2011年 ドイツ、ポーランド映画 2時間25分

  • 2012年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
  • グディニャポーランド劇映画祭作品・監督・主演男優・主演女優・
         撮影・美術・衣装・編集・メイクアップ/9部門独占
  • サヴァンナ映画祭最優秀作品賞
  • セントルイス国際映画祭最優秀監督賞
  • 他、国際映画祭など多数受賞

ナチス政権下で、ユダヤ人たちがどのような悲惨な目にあったかは周知のことですが、近年、さらに新しい映画ができ、いろいろな角度からその実像を示そうとしています。またユダヤ人を助けた市井の人々の姿も、映画をとおして世界の人々に示されています。

「ソハの地下水道」は、収容所行きを恐れて地下水道に逃げたユダヤ人たちと、彼らをそっと守ったポーランドの地下水道の修理人であるソハをめぐる日々を描いた実話による作品です。「ソハの地下水道」は、2011年の映画を対象とした第84回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。


物語

1943年、ポーランドのルヴフという町にも、ナチスによるユダヤ人に対する厳しい支配がおよんでいた。この町の下水修理工として働くソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は、相棒の若いシュチュペクと一緒に、小さな盗みをしながら妻ヴァンダ(キンガ・プライス)と幼い娘を守って暮らしていた。

ある日、盗んだ品を隠そうと下水道に来たソハは、変な音を耳にした。その音は、ユダヤ人たちが、下水道へ逃れるために、家の床下に抜け穴を開けている音だった。ユダヤ人たちから“教授”と呼ばれているヒゲル(ヘルバート・クナウプ)は、口止め料として高級な時計とお金をソハに渡した。受け取ったソハは、地下水道の隠れられる場所を教える代わりに、彼らから報酬をもらうことを思いつく。このことはソハにとっても命懸けのことだった。

ソハの地下水道
(C)2011 Schmidtz Katze Filmkollektiv GmbH, Studio Filmowe ZEBRA, Hidden Films Inc.


恐れていたその日はやってきた。強制収容所へと送られるために、ナチス軍はユダヤ人たちを次々と捕らえはじめた。教授の家には、大勢のユダヤ人たちが集まってきた。地下の暗く恐ろしい世界に逃れるか、または、ナチスに捕らえられるか、人々は判断を迫られた。しかし、ドイツ兵士の足音が近づくとき、ソハの提案を受け入れ、ひとり、またひとりと、体がやっと通る細い穴へと入っていった。中には、地下での生活を恐れて、強制収容所行きを選び、子どもや若い女性は穴に入ることに抵抗した。しかし、男たちから穴へと押し込まれていった。

地下水道は、迷路になっていた。その道を知り尽くしているソハは、水路の所々にある小さな空間へと彼らを導いていった。地下下水に入ったとたん、悪臭が鼻をついた。太陽の光が届かず絶えず水が流れており、水が来ないところに腰をおろすと、近くをネズミが走っていった。ソハは、ユダヤ人たちを10人ずつにわかれさせて、空間を提供していった。

ソハの地下水道
(C)2011 Schmidtz Katze Filmkollektiv GmbH, Studio Filmowe ZEBRA, Hidden Films Inc.


その日からソハは、食料を調達しては地下水道へと向かうようになった。急にたくさんの食料を買うようになったソハに、疑いの目を向ける人もいた。やがて妻にも知られるようになった。妻は身の破滅を招くソハの行為に驚き、相棒のシュチュペクは身の危険を感じてソハから去っていった。

まもなく、ユダヤ人の持ち金がなくなり、食料を調達することができなくなった。自身も身の危険を感じながらの食料運びに疲れたソハは、もうこれ以上できないとユダヤ人たちから去っていった。

ソハに見捨てられたユダヤ人たちは、まもなく飲み水もなくなる。自らの手で食料を得ようと、頑丈な身体のムンデク(ベンノ・フユルマン)が地下水道から外に出る。ドイツ兵士に見つり、危ないところを偶然通りかかったソハに助けられる。

地下水道に身を隠して生きる道しかないユダヤ人たち、劣悪な環境の中で遊ぶ子どもたちのかわいそうな姿を見て、ソハはふたたび彼らを助けることにする。

しかし、地下水道での生活には、次々とあらたな危機が襲う。ひとりの女性が身ごもったことが判明した。このような何の準備もできず、劣悪な環境の中でも、赤ん坊は生まれた。しかし赤ん坊のいる場所は、教会の聖堂の真下だった。赤ん坊の泣く声が、彼らの存在を知らせることになるのではないか、と彼らは恐れた。

ソハの地下水道
(C)2011 Schmidtz Katze Filmkollektiv GmbH, Studio Filmowe ZEBRA, Hidden Films Inc.


さらに、思いがけないことが起きた。ルヴフの町に猛烈な雨が降ったのだ。大量の水が、ユダヤ人たちが住む地下水道へと流れ込んでいった。

 

ひとりの男が、地下水道に住むユダヤ人たちを助け通すことができるのか、太陽の光が閉ざされ、悪臭と湿気の狭い空間の中で、14か月も人は生きることができるのか。奇跡としかいいようのない長い日々。こんな情況の中でも、人間は「いのち」を生き延びることができるのです。地下水道で暮らす小さな子どもたちの姿を見ながら、いのちの尊さ、いのちをつなげていくことの尊さを感じました。何百万人という多くの人が簡単にいのちを消された中で、少数であってもいのちをつなぐことができたことを、多くの人に知ってもらいたいと思います。


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