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 希望の国

2012年10月

THE LAND OF HOPE

希望の国

  • 監督・脚本:園子温
  • 出演:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、でんでん、
        筒井真理子、清水優、梶原ひかり
  • 配給:ビターズ・エンド

2012年 日本・イギリス・ドイツ・台湾映画 2時間13分

  • トロント国際映画祭最優秀アジア映画賞

主演の染谷将太さんとヒロインの二階堂ふみさんが、第68回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した「ヒミズ」で、園子温監督は、若者が感じる親との関係、将来への希望をモチーフにして、3.11直後の世界を描きました。今回の「希望の国」では、3.11の数年後の日本を描きます。再び大きな地震が起き、福島原発と同じ様な状況がやってきます。そこで人々が選ぶ道は・・・。

この選択は、いつか、わたしたち一人ひとりにやってくるでしょう。


物語

東日本大震災から数年後の未来の日本。長島県大原町で酪農を営む小野泰彦(夏八木勲)は、認知症の妻・智恵子(大谷直子)の世話をしながら、息子・洋一(村上淳)と妻・いずみ(神楽坂恵)とともに牛舎で働き、ブロッコリーを収穫するという、おだやな毎日を過ごしていた。

希望の国
(C)The Land of Hope Film Partners


そこへ地鳴りがし、大きな揺れが襲った。震源地は長島県沖合、マグニチュード8.3。牛舎や家屋を見回り、大きな損傷がないことを確認した泰彦は、大葉町に住む友人に電話した。大葉町には原発があったからだ。電話はつながらなかった。

ほどなく町の職員たちがやってきて、泰彦の家の前に、黄色いテープを張り巡らした。「長島第一原発の半径20km以内に住む人は、ただちに避難してください!」 黄色いテープの向こう側に住む人々は、あわてて荷物を持ち出し、バスに乗せられた。黄色いテープのこちら側に家がある泰彦たちに、避難命令は出なかった。道一本の違いである。

希望の国
(C)The Land of Hope Film Partners


やがて黄色いテープは鉄条網となり、泰彦の家の庭先から向こうは立入禁止区域となる。鉄条網のあちらとこちらと何が違うのか。

泰彦は、若い夫婦の将来を考え、洋一といずみにすぐ家を出るようにと促す。二人はしぶしぶ車に乗り家を後にする。やがて、長島第一原発で水素爆発が起きる。

いずみは、避難した先で妊娠していることを知る。彼女は放射能に敏感になり、恐怖を増していく。厳重な防護体勢を取るために、家の中に防護テントを張り、家の中でも防護服を身につけて生活するようになる。

希望の国
(C)The Land of Hope Film Partners


牛に対する殺処分の命令が出され、町役場の職員がやってきて泰彦たちに退去を促す。庭の木を見て「あれは生きてきた刻印だ。それを捨ててまでどこかに行きたいとは思わない」。泰彦は力強く語る。

希望の国
(C)The Land of Hope Film Partners


希望の国
(C)The Land of Hope Film Partners


しかし、「お父ちゃん、帰ろうよ」と繰り返し言っていた智恵子の姿が見えなくなる。

 

いろいろと選択しなくてはいけないことが迫ってきます。そんなに簡単に決心できることではありません。しかし、一刻をあらそう選びなのです。3.11の福島原発事故で、今起きていることは何なのか、今体験していることはどういうことなのかを、時代設定を数年後にするlこの映画をとおして、客観的に見ることができるように思いました。

今避難されている方々の心は、想像することができないほど大きな苦しみの中にあります。そういう中で、被災者を演じるのは、とても難しかったと思います。下手をしたら「体験していないお前たちに、いったい何がわかる!」という声が出るかもしれません。しかし、そんなことを気にする必要はありませんでした。本作をとおして“俳優の力”というものを見させてもらったとように思いました。夏八木勲さんと大谷直子さんはすばらしく、俳優が持っている力のすごさを感じました。


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