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 少女は自転車に乗って

2013年11月

WADJDA

天心

  • 監督・脚本:ハイファ・アル=マンスール
  • 音楽:セバスティアン・シュミット
  • 出演:アワド・ムハンマド、アブドゥララフマン・アル=ゴハニ、リーム・アブドゥラ、スルタン・アル=アッサーフ、アフドゥ
  • 配給:アルバトロス・フィルム

2012年 サウジアラビア・ドイツ映画 1時間37分

  • 2014アカデミー賞外国映画賞 サウジアラビア代表
  • 201ヴェネチア国際映画祭C.I.C.A.E.賞&CinemaAvvenire賞&インターフィルム賞
  • 他、多数受賞

めずらしいサウジアラビアの作品です。女性が外出するとき、全身を布で覆い、目だけ出すことを許されている姿は見たことがありますが、容姿だけでなく、実際の生活の中で、女性がどのように扱われているのかを、少女の抵抗と夫の関係に悩む母親を通して、静かに訴えています。こいう社会があるのかと、驚きました。


物語


サウジアラビアの首都リヤド。子どもたちは、男女別々の学校に通う。10歳のワジダ(アワド・ムハンマド)は、近所に住むアブドゥラ(アブドゥララフマン・アル=ゴハニ)とけんか友達だ。なにかとちょっかいを出して自転車で逃げ去るアブドゥラに、「わたしも自転車を買う」と叫ぶ。

少女は自転車に乗って
(C) 2012, Razor Film Produktion GmbH,
High Look Group, Rotana Studios All Rights Reserved.


ワジダが通う学校の校長(アフドゥ)は厳しく、笑い声を聞いては、「笑い声は、姿と同じ」とたしなめる。女性は、外出するとき、黒いドレスを着、さらに頭から黒い布ですっぽりと覆っている、見えるのは、彫りが深くまつげの濃い目だけだ。

コーランがなかなか覚えられず、厳しい規則に反抗的なワジダは黒いスカーフもかぶらずに登校し、学校で問題児扱いされていた。お気に入りのスニーカーも、他の子と同じように黒い靴を履くよう注意された。

町の雑貨店で売られている自転車を見つけたワジダは、母(リーム・アブドゥラ)に買ってほしいとねだるが、「女の子が自転車なんて、とんでもない」と断られる。800リヤルという値段は、二人の生活には高価過ぎた。母は家計を助けるため、遠くまで働きに行っていた。ワジダは、自分でお金を貯めようと決心する。手作りのミサンガを作って友達に売ったり、先輩の恋文を渡して手数料をとったりしていた。しかしそれが学校にばれてしまい、きつく叱られ、母親が呼び出される始末となる。

夜、両親の言い争いの声が聞こえていた。家を継ぐ男の子を望んでいる父(スルタン・アル=アッサーフ)は、第二夫人を迎えようとしていた。母は父との関係に悩んでいた。父の気を引くために、父の好きな真っ赤な色のドレスを買った。

少女は自転車に乗って
(C) 2012, Razor Film Produktion GmbH,
High Look Group, Rotana Studios All Rights Reserved.


ある日、校長が、学校でコーラン暗唱コンテストをすると発表した。優勝の賞金が1000リヤルと知ったワジダは迷わずコンテストに立候補する。宗教クラスにも入り、美しい調子に乗せて暗唱できるよう必死に練習をはじめた。

コンテストの日、言葉のテストにも勝ち進み、暗唱もキレイにできた。校長のまなざしも違ってきた。

 

男性の前で女性は全身を黒い布で覆うということは、まるで存在していないかのように扱われているということではないでしょうか? 家系図に記されるのは男性の名前だけ。イエスの時代も、こんな様子だったのかと思われます。黒い覆いの下で、女性たちはオシャレをしています。また、子どものときから魅力的な顔立ち、まなざしの子が多く、学校の先生たちも、結構女性を感じさせています。実は男性たちも、そんな女性をじっと見ています。覆い隠すことを強いられる分、女性らしさも増すのでしょうか。

監督自身の体験から生まれた作品だということです。映画が禁じられている状況の中で、さらに女性が映画を撮影するということは、大変だったのではと思われます。「女性は自転車に乗ってはいけない」という規則で表現されている矛盾・差別がなくなり、女性たちが自分の思いを自由に表現できる日が早く来ますように。


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