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 福島 六ヶ所 未来への伝言

2014年 2月

福島 六ヶ所 未来への伝言

  • 監督・撮影・編集:島田恵
  • 音楽:加藤登紀子
  • 出演:田邉さん一家、伊藤さん一家、中村さん一家、
        河原愛美、滝口さん一家
  • 配給:六ヶ所みらい映画プロジェクト

2013年 日本映画 1時間45分





今まで20年間、六ヶ所村を撮り続けている流れの中で、東日本大震災による福島第一原発の事故が起きました。フォトジャーナリストの島田恵さんは、放射能が人間に与える恐ろしい影響から逃れる福島の人々、六ヶ所村の人々を追いながら、この2つの土地を結んだドキュメンタリー映画を製作しました。六ヶ所村にある核燃料施設は、原発で使用済みとなった核燃料が行く先です。この2つの地を描くことによって、放射能の利用サイクルという、一歩外に出た視点から見ています。

福島 六ヶ所 未来への伝言
(C) 島田恵


島田監督は、どこにこの大きな問題と戦っていく闘志があるのだろうかと思うほど小柄なかたです。女性の視点で、子どもたちを守り、いのちを大切にする特徴を出した作品となっています。

いくつかの家族が登場します。福島第一原発から5kmの地に住む田邊さん一家は、新築したばかりの家を後にしました。これから生まれてくる子のために用意した子ども部屋も、使われないまま。避難先の東京で、2番目の子どもを出産しました。夏、子どもたちが外で自由に遊べるように、長野県松本市に行きました。子どもたちへの放射能の影響は、大人とは比べられないほど大きな数値を出しています。「なんとしても子どもたちを被爆から守りたい」という強い思いを持っています。

郡山市で代々稲作をしてきた中村さん一家は、新潟へ避難しました。長い間苦労してやっと軌道に乗ってきた有機栽培のお米は、販売停止となりました。育てたすべてを捨てるようなことになっても、稲を植え続けます。「稲を作らなければ、農家ではない」という信条のもと。「福島の農民は、生涯放射能とつきあっていかなくてはと思うと暗くなる。息子によい土地を残したいと思ったのに、放射能の土地しか残せず、やるせない」と語ります。

六ヶ所村の川原愛美さん。貧しい地域であるむつ市、その中でも低い地域として、誘致が必要だったと言います。「原子力施設によって、出稼ぎに出る必要がなくなり地元で働けるようになった。今の生活があるのは、原発のお陰。しかし、3.11をとおして、国民のエネルギーに対する考え方がこんなに変わると思わなかった」と語ります。

六ヶ所村の泊港で漁師をしている滝口さん。マダラからセシウムが検出されました。「捕れたマダラは市場に揚げるな。すべて捨てよ!」と言われ、堪えられない思いを抱きながら、捕った魚を海に投げました。漁師の多くは核燃料施設に反対していましたが、わずかのお金で受け入れてしまいました。沖縄と同じように、リスクだけを地方に押しつけるのは許されない、と語ります。

福島 六ヶ所 未来への伝言
(C) 島田恵


子どもや孫にきれいなままの海を残したいと思っています。「残したいのは自然。海と山さえ残っていれば生きていける」。

起きてしまった恐ろしい原発事故の結果。一つ何か起これば、大変なことになると分かっていても、何も起きないだろうと、人は目の前の生活のために、危険なものを生活の中に引き受けます。しかし、今回の3.11で、事故は起きないものではなく、いつでも起こり得るものだと、日本国民は知りました。

放射能事故は、多くの人々の生活を一変させてしまいました。六ヶ所村で、福島で、放射能の影響を受けたそれぞれの家族を追いながら、日本に住むわたしたちが、原発のある日本において、それぞれの土地、生活をとおして、子どもたちのために何を残せるのかを考えるようにと問いかけている作品です。


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