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シャトーブリアンからの手紙

2014年10月

英題:CALM AT SEA

イラク

  • 監督・脚本:フォルカー・シュレンドルフ
  • 原作: ハインリッヒ・ベル
  • 音楽: ブリュノ・クーレ
  • 出演:レオ=ポール・サルマン、ヴィクトワール・デュボワ、
        マルク・バルベ、ジャン=ピエール・ダルッサン
  • 配給:ムヴィオラ

2012年 フランス・ドイツ映画 1時間31分

  • 第62回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品作
  • 第14回ルション国際映画祭最優秀監督賞
  • 第25回ベアリッツ国際映像祭最優秀男優賞


ナチス占領下での様子を映画にした作品が多くなりました。「シャトーブリアンからの手紙」も、フランスにおけるナチス軍とフランス軍、フランス国民の悲劇を描いた史実に即した作品です。処刑されようとしてく人々の心情を、ていねいに描くことによって、独裁者によって動かされていく世界の不条理を訴え、今の時代への警鐘を鳴らしています。『ブリキの太鼓』などで知られるドイツの巨匠フォルカー・シュレンドルフ監督の、思いが込められた作品です。

物語


第2次世界大戦下のフランス。シャトーブリアン郡シュワルゼル収容所には、ナチスに抵抗する者や共産主義者などの政治犯が収容されていた。17歳のギィ・モケ(レオ=ポール・サルマン)も、ここに収監されていた。ギィは、塀を隔てて隣接する女子の収容所にいるオデット(ヴィクトワール・デュボワ)と、塀の穴から会話することが、唯一の楽しみだった。収容所とはいえ、不自由な中にもいくつかの楽しみがあった。

シャトーブリアンからの手紙
(C) ARTE France -2011--- LES CANARDS SAUVAGES -7eme
Apache Films -PROVOBIS FILM


しかし、1941年10月19日、ドイツ軍に占領されているフランスの都市ナントで、ドイツ軍将校が路上で数人の男性に銃で殺されるという事件が起きた。総裁はすぐさま、一人の将校の代償として、フランス人150人の銃殺を命じた。ヒトラーの対処に反対する将軍はじめドイツ軍司令部は、なんとか命令を回避しようとするが、命令はくつがえされなかった。協力を求められたフランス人たちは、銃殺される人質のリストつくりを始める。

シャトーブリアンからの手紙
(C) ARTE France -2011--- LES CANARDS SAUVAGES -7eme
Apache Films -PROVOBIS FILM


明日までに150人のリストを提出しなければならない。いったいどこからだれを選ぶのか。フランス軍は納得のいかない中、苦しい選択を迫られる。しかし、時は刻々と迫っていた。

ギィのいる収容所からも27人が選ばれることになった。事情を知らされていない収容所の人々が庭に整列させられ、次々と名前が呼ばれていった。異様な空気が広がっていく。リストの中には、間違って、釈放を間近に迎えた者と17歳の子どもの3人が入っていたが、今となっては変更することはできなかった。そして、ギィの名も呼ばれた。

シャトーブリアンからの手紙
(C) ARTE France -2011--- LES CANARDS SAUVAGES -7eme
Apache Films -PROVOBIS FILM


用意された部屋に移動した彼らは、1時間後に銃殺と知らされ、手紙を書く時間が与えられる。司祭もやってきて、「司祭を必要とするなら、役に立とう。フランス人として誇り高く死んでいくために。伝言や手紙を預かろう」と言う。彼らは、思い思いの場に座って書き始める。

シャトーブリアンからの手紙
(C) ARTE France -2011--- LES CANARDS
SAUVAGES -7eme Apache Films -PROVOBIS FILM


 

このような事件があったことは知りませんでした。だれもがこんなことはおかしい、なんとか避けることはできないかと思っているにもかかわらず、一人の人の命令が通っていきます。生命を簡単に扱われてしまう人間たち。今も一歩間違えば、このような社会になってしまう危険性が、世界いたるところにあります。「命令の奴隷になるな。良心の声を聞きなさい」という司祭の声は、今もすべての人に向けられています。


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