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孤独のススメ

2016年 4月

MATTERHORN

 孤独のススメ

  • 監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ
  • 出演:トン・カス、ルネ・ファント・ホフ、
        ポーギー・フランセン、ポーギー・フランセン
  • 配給:アルバトロス・フィルム

2013年 オランダ映画 1時間26分

  • 2013年ロッテルダム国際映画祭観客賞
  • 2013年モスクワ国際映画祭観客賞、映画クラブ連盟賞、
                 批評家協会賞、作品賞ノミネート
  • 2013年オランダ映画祭主演男優賞
  • 他、多数受賞

2013年から2014年にかけて、各地の映画祭で20余の賞を受けた、オランダからの作品です。

主人公の一人暮らしの中年男性のように、ことばは少なくナレーターの説明もなく、静かな舞台劇を見るような感じですが、こちらも黙って見ていると、彼の人生がじんわりと伝わってきて、ラストに向かって徐々に盛り上がっていき、最後に感動の涙となる、不思議な味わいのある作品です。


物語

オランダの田園風景が美しい街で、フレッド(トン・カス)は一人暮らしをしていた。最愛の妻を亡くし、一人息子は行方知れずとなっている。教会の前に住み、決まった時間に退社すると、お気に入りのコーヒーを飲みながら、息子が小さいとき教会で歌った歌を聴き、疲れを癒やす。5時になると夕食のしたくに取りかかる。いつもと同じ料理ができあがると食卓に並べ、壁にかかった時計をにらみつけるように見上げて針が6時になるのをじっと待つ。6時になると、祈りをして食事を始める。フレッドは、何の感情も表さず、無機質のように、毎日の生活を繰り返していた。

 孤独のススメ
(C) 2013, The Netherlands. Column Film B.V. All rights reserved.


そんな彼の生活に、異変が起きた。ヒゲをはやし身なりの汚い男(ルネ・ファント・ホフ)がやってきた。道で、彼からお金をせびられたフレッドは、男に庭掃除をしてもらうことにした。フレッドが彼を家につれていく途中、彼は近くの農家の囲いの中に入り、まるで自分も山羊であるかのように、山羊の間に留まり、出すのに苦労した。

フレッドが話しかけても、男は返事をせず、何も話さず、食前の祈りもせず、フォークの使い方もなっていず、フレッドの気にさわることばかりだ。しかし、一緒に食事をする相手がいるということで、フレッドの心に何かを与えていった。

二人がスーパーに買い物に行ったとき、男が山羊のまねをして「メエ~」と鳴いたことから、買い物に来ていた子どもたちが喜び、親からその子の誕生パーティーの余興にきてくれないかと頼まれる。

 孤独のススメ
(C) 2013, The Netherlands. Column Film B.V. All rights reserved.


そんなことをしたことがないフレッドだが、フレッドが童謡を歌い、男が踊るというパフォーマンスを考える。二人は猛練習をする。練習を終えたフレッドは、酒の酔いも手伝って、愛する妻との思い出を男に話し始める。フレッドは、妻にプロポーズをしたマッターホルンに、もう一度行こうと決意する。

誕生パーティーでの余興は大成功。さらに、他の子どもの誕生パーティーにも呼ばれるようになり、フレッドはますます工夫を考えた。フレッドにとって男との生活は、充実した毎日となっていった。しかし、周囲からは二人の関係が疑問視され、教会委員のカンプス(ポーギー・フランセン)が警告に訪れたり、他の人々からいやがらせを受けたりするようになる。

 

自分の正直な気持ちや、家族の思いよりも、まわりに気を遣い、教会や社会の掟を守ることによって、妻と息子を失い、感情のない生活を送ってきたフレッド。しかし、自然に生きる野生のような男の出現によって、少しずつ鎧がとれていくフレッド。男の妻の存在も大きな助けとなって、人生をとりもどしていきます。

かたくなになったり、他者との関わりを閉ざして自分の殻の中に閉じこもったりするときがありますが、そんなときの自分の心の軌跡を、この映画をとおして見る思いです。見るたびに、味わいが出てくるような気がする作品です。



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