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緑はよみがえる

2016年 5月

Torneranno i Prati

 緑はよみがえる

  • 監督:エルマンノ・オルミ
  • 音楽: パオロ・フレス
  • 出演:クラウディオ・サンタマリア、アレッサンドロ・スペルドゥーティ、フランチェスコ・フォルミケッティ
  • 配給:ムヴィオラ

2014年 イタリア映画 1時間20分

  • 第65回ベルリン国際映画祭特別招待作品

「木靴の樹」(1978)、「ポー川のひかり」(2006)、「楽園からの旅人」(2011)など、時代を反映した問題を、人間の根元にかかわるテーマとして、じっくり描いているイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の作品です。84歳の監督は、父親から聞いた話を映像化し、人間の深い魂の話として世界に語りかけています。



物語

第一次世界大戦の1917年の冬、イタリアのアルプスの山中。雪に埋もれたまっ白な世界に、兵士たちが塹壕を掘っている。オーストラリアとの国境をはさみ、イタリア軍とオーストラリア軍が、塹壕に潜む。

 緑はよみがえる


近くにいながら、姿は見えない。ときどき、砲弾が飛んでくる。寒い塹壕の中、兵士たちの唯一の楽しみである郵便が届いた。故郷を思い出したのか、兵士の一人がナポリ民謡を歌った。その歌声に、オーストラリア軍からも拍手が出る。

 緑はよみがえる


月の光に輝く雪原。静寂。しかし、雲が月を遮って、あたりは暗くなる。突然、砲弾が撃ち込まれる。全員、待避だ! 激しい砲弾が鳴り響く。果てしなく続く。兵士たちは逃げ惑い、多くの犠牲者が出る。神は応えてくれるのか。十字架上の息子にも応えなかったのに。

 

「緑はよみがえる」がイタリアで公開されたのは、第一次世界大戦が始まってから100周年にあたる2014年の秋でした。動員されたイタリア兵は500万人を超え、その半数が農民だったといいます。映画で描かれているのは、塹壕での一夜の出来事ですが、長い塹壕生活の中で、兵士たちは互いのことを話し、結びつきを強くしていったそうです。

戦争映画というと、上級兵士たちが下級兵士たちに向かう暴力や、悲惨な生活を想像して戦争はこんなにも人を狂わすのかと思ってしまいますが、「緑はよみがえる」は、戦争の中でも、人間はこんなにも気高く生きているのだと思う美しい作品です。そして、このような人間を、戦争にかりたててはいけないなと思います。敵味方に分かれて闘う兵士たちにとって、戦いは何の意味もありません。いったいだれのための戦争なのでしょう。



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