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はじめての『旧約聖書』

目次

第1回 長い歴史の中で書かれた「書」の集まり

「続編」って何?

『聖書 新共同訳』の表紙をよく見ると、「旧約聖書続編つき」と書いてある聖書と書いてないものとがあります。「続編」って、何でしょう。

カトリック教会の正典には、第一正典と第二正典があります。

第一正典: だれもが聖書と認めたもの
第二正典: ある種の問題があって、後に正典として認められたもの
しかし、正典としての価値は同じ

プロテスタントの教会が聖書と認めているのは、カトリック教会の第一正典にあたる書です。カトリック教会では、第二正典も聖書と認めており、「続編」と呼んでいます。これらは「外典」とも呼ばれています。カトリック教会では、「続編つき」の聖書を使います。

第一正典

第一正典は、ユダヤ人の正典とされているものです。そこには、神がイスラエルの民であるユダヤ人を救ってくださった、長い歴史が書かれています。イスラエルの民にとってその原点となるのは、奴隷だったエジプトの地から、神が救いだしてくださり、約束の地へと導いてくださった「出エジプト」の体験です。

旧約聖書は、3つに分けることができます。

◎トーラー(律法)
 モーゼ五書=創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記

「トーラー」は、文章の最初の2つの言葉を意味します。ユダヤでは、聖書をよく最初の2つの言葉で呼んでいました。

余談になりますが、この影響で、バチカンから出される教皇の回勅は、ラテン語の最初の2つの言葉をとってタイトルにしています。例えば、教皇ヨハネ・パウロ2世が書いた回勅『救い主の使命』は、「Redemptoris missio……」という言葉で文章がはじまるので、「REDEMPTORIS MISSIO」というタイトルがついていて、日本語では『救い主の使命』と訳されています。

◎ネビィム(預言書)
 預言書は、前期預言書と、後期預言書に分かれます。

前期預言書: ヨシュア記、士師記、サムエル記上・下、列王記上・下
後期預言書: イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、12預言書
12預言書: ホセア書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、 ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、 ゼファニア書、ハガイ書、ゼカリア書、マラキ書
(ダニエル書は、預言書の中に入りません。)

◎ケトゥビム(諸書)
 詩編、ヨブ記、箴言、ルツ記、雅歌、コヘレトの言葉、ダニエル書、
 哀歌、エステル記、エズラ記、ネヘミヤ記、歴代誌上・下

以上の書はヘブライ語で書かれていますが、紀元前2世紀に、エジプトのアレキサンドリアで、ギリシャ語に訳されました。『70人訳聖書』と呼ばれています。

第二正典

第二正典である「続編」には、下記の書が入っています。
  トビト記、ユディト記、エステルのギリシャ語で書かれている部分、
  マカバイ記1・2、知恵の書、シラ書、バルク書、
  エレミヤの手紙、ダニエル書補遺

これらは、紀元前3世紀以後、数世紀の間にユダヤ人によって書かれたもので、ヘブライ語の聖書の中には含まれませんが、初期キリスト教徒は、ギリシャ語を話すユダヤ教徒から「聖なる書」として受け継ぎ、カトリック教会は、第二正典と認めたました。

ギリシャ語とラテン語で書かれた「エズラの預言」と「マナセの祈り」を、カトリック教会は正典と認めていません。

ルカ福音書の中の記述をみると、「律法、預言、詩編」と書かれていて、ルカ福音書が書かれたころは、ケトゥビムがまだはっきり定まっていなかったことがわかります。ユダヤ教の正典は、1世紀ごろに定まったと見られています。

ユダヤ人たちは、正典を略して「タナク」と呼んでいます。
 Tanak  最初の「T」はトーラー、「n」はネビィム、最後の「k」はケトゥビムをさします。

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