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はじめての『旧約聖書』

目次

第3回 モーセ五書の導入

モーゼ五書の伝承

旧約聖書の最初の5つの書(書かれた順ではありませんが)は、通常「モーセ五書」と呼ばれています。イスラエルの民のエジプト脱出の指導者であり、最大の預言者であるモーセの教えとされ、信仰の基礎となるものです。しかし、モーセ自身の手で、今の形に書き記されたものではなく、また一度にできあがったものでもありません。そのもとになったおもな伝承は4つあると考えられています。

1. ヤーウェ伝承   =J 伝承
2. エロヒム伝承   =E 伝承
3. 申命伝承   =D 伝承
4. 祭司伝承   =P 伝承
    (J、E、D、Pは、それぞれのドイツ語の頭文字です。)

1)ヤーウェ伝承:
神をヤーウェ(ヤハウェ)という御名で表します。ソロモン王の晩年か、王国分裂のころに、ユダ族の間に伝えられていたもの。

2)エロヒム伝承:
神をエロヒムという普通名詞で表します。おもに、北イスラエルの伝承で、北王国で活躍した預言者たちの思いが反映されています。紀元前8世紀に、北のイスラエル王国が滅亡したとき、南に逃げた人たちによってユダ王国に伝えられ、ヤーウェ伝承と組み合わされました。

3)申命伝承:
北のイスラエル王国に伝わった律法に関するものですが、紀元前622年にエルサレム神殿で発見されました。ほとんど申命記のみに含まれます。

4)祭司伝承:
南のユダ王国の祭司たちによる律法の伝承。

これらの伝承を編集して、いまのモーセ五書の形に完成したのは、バビロンの捕囚から解放されて、故郷に帰ったあとのことです。紀元前400年ごろ、宗教改革を行った、祭司で律法学者のエズラが大きな役割を果たしました。

(サマリア人は、同じ「モーセ五書」(のみ)を聖典としていますから、サマリア人とイスラエル人がはっきり交わりを断った前4世紀に、完成していたことは確かです。)

捕らわれの地から荒れはてた故郷に帰って、神殿を再建し、信仰共同体としての民の意識を高めるためには、神の選びの歴史をいまいちど振り返り、神の律法を厳格に守っていくことが、何よりも大切でした。

救いの歴史物語

こうして編集されまとめられた五つの書は、救いの歴史としてどのような構成になっているでしょうか。

五書の構成は、ざっと次のようです。

  • 創世記 1~11章:天地創造と人類の選び
  • 創世記 12章~ :アブラハムと太祖たちの選び
  • 出エジプト記 1~18章:モーセとイスラエルの民の選び エジプト脱出
  • 出エジプト記 19章~ 民数記10章11節:            シナイでの、神とイスラエルの民の契約             (間に、「レビ記」をはさむ。レビ記は全体が律法)
  • 民数記10章11節~:シナイから約束の地までの旅
  • 申命記 :約束の地を目前にして死んでいくモーセの遺言

申命記の26章5~9節は、いちばん古い信仰告白と言われ、イスラエルの民の歩みが、簡潔に語られています。

 あなたはあなたの神、主の前で次のように告白しなさい。 「わたしの先祖は、滅びゆく一アラム人であり、わずかな人 を伴ってエジプトに下り、そこに寄留しました。しかしそこ で、強くて数の多い、大いなる国民になりました。エジプト 人はこのわたしたちを虐げ、苦しめ、重労働を課しました。

 わたしたちが先祖の神、主に助けを求めると、主はわたし たちの声を聞き、わたしたちの受けた苦しみと労苦と虐げを 御覧になり、力ある御手と御腕を伸ばし、大いなる恐るべき こととしるしと奇跡をもってわたしたちをエジプトから導き 出し、この所に導き入れて乳と蜜の流れるこの土地を与えら れました。

イスラエルの民の間で、この信仰告白は大切にされ、子孫に語り継がれました。

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