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はじめての『旧約聖書』

目次

第5回 創世記1~11章 (2)

前回の続き、創世記6~9章を見ましょう。

これまでのところは、神が、すべてを「よいもの」としてお創りになったということから、続いて人類とその子らの罪の物語が記されていました。

6~9章 ノアと洪水

第6章で、人類の罪はさらに破滅的な姿をとることになります。それに対して、神はどのように介入されるのでしょうか。聖書本文をお読みになると、いくつかの食い違いに、すぐ気づかれるでしょう。たとえば、箱舟に入れられる動物の数や、洪水の日数など。

この部分は、P伝承とJ伝承がからみあっているのです。(ほかにも、古代の伝説的表現が散見されます)

・P伝承……この時代は、いけにえについては定められていないという考えから、 “すべての動物を一つがいずつ”としています。清い動物、清くな い動物という区別は、モーセの律法に定められるものだからです。
・J伝承……いけにえを意識しています。“清いものは7つがいずつ、それ以外 のものは1つがいずつ”としています。

このように矛盾を含んだ伝承をそのまま表記しているということは、著者の意図が、記事の歴史性にはないということです。

メソポタミア地方を襲った大洪水の伝説は、古代バビロニアにいくつもあり、有名な叙事詩ともなっています。創世記の著者は、これらの伝説と似た出来事を描きながらも、まったく違う意図をはっきりさせています。つまり、著者が言いたいのは、人は罪を犯し、聖なる神は、罪を罰せずにいられないけれど

9章 祝福と契約

9章の1節に、神がノアとその息子たちを祝福して言われることばがあります。
創世記のはじめに、アダムとエワを祝福されたと同じです。「祝福」は創世記1~10章のテーマの一つで、すべての生き物は神の祝福を必要としていることを表しています。

続いて、9章6節で、神は最初の契約を結んでくださいました。神は、「二度とふたたび洪水で生き物を断つことはしない」と約束なさり、そのしるしは「虹」でした。

10章 ノアの系図

10章には、ノアの系図が書かれています。系図は、民族の表です。言語や民族の多様性は、神が望まれていることです。当時知られたすべての民族の系図を示すことによって、全人類の起源は同一であると示しているのです。

11章 バベルの塔 J伝承

バベルは、バビロンにある町です。バベルの塔の物語は、自分の力に頼り、自分の偉大さを示そうとした人間を描いています。このことは、神のお心にそぐわないことでした。

「バベル」とは、メソポタミアでは「神の門」という意味です。ヘブライ語で「混乱」を意味する「バラル」と似ています。

バベルの物語は、
* なぜ、こんなにたくさんの言葉があるのか
* バベルの町の名はどこから来ているか
* 人の罪の深さはどこにあるのか
の原因を示すための物語として語られました。このような物語を「原因譚物語」といいます。

§11章以下の、セムからテラまでの系図は、いよいよアブラハムの物語に入る12章への橋渡しとなっています。

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