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活憲とヒューマンライツ(人権)

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世界に羽ばたく折り鶴 人々の思いは国境を超えて

「あけぼの」2013年4月号 ) 伊藤千尋


沖縄にオスプレイが配備されたことへの怒りの意思を示す「NO OSPREY 東京集会」が1月27日に東京・日比谷野外音楽堂で開かれた。定刻より40分早く行ったため、最前列の沖縄県人会席のすぐ後ろにあたる中央の特設席に座ることができた。とはいえ、寒さが厳しいこの時期、石のベンチは冷えた。

プラカードのようなものを持った女性がやってきて「これを持ってくださる方、いませんか」と叫んだ。オスプレイ配備に体を張って闘っている沖縄・高江を支援する内容だ。すぐに声をかけて手に持った。やがて舞台の上は赤いゼッケンをつけた人々で占められた。沖縄からやってきた41の全市町村の首長と議長だ。沖縄選出の国会議員もいて総勢141人。壮観だ。

発言で驚いた那覇市長の翁長雄志(おなが たけし)氏だ。沖縄県の自民党のリーダーで、かつて普天間基地の県内移設の旗振り役だった彼が「沖縄は目覚めました。もうあとには戻りません。米軍基地は経済発展の阻害要因です」ときっぱりと語った。

会場がわいたのは、集会の最後で司会者が「申し遅れましたが、今日の司会は自民党沖縄県議会議員のわたくし○○です」と言ったときだ。会場にいた4,000人の大半は労組や市民団体の人々だ。その中から「いいぞ」「自民党、がんばれ」などの声援が飛んだ。司会の県議も思わぬ反応に興奮して「がんばっています。がんばります」と叫んだ。

それから2日後、私は沖縄を訪れた。講演をするためだ。

那覇の国際通りから公設市場に向かうアーケードを歩いていると、小さな古本屋さんがあった。かつては「日本で一番小さい古本屋」で、当時は幅50cm、奥行き2mくらいのスペースに本棚があり、身体を横にしないと入れなかった。その部分は今もあるが、わきに畳2畳ほど、店が広がっていた。

沖縄戦の南風原の陸軍病院に関する本を買って店を出ようとすると、店頭に折り紙が置いてあるのに気付いた。手描きの紙が添えてある。

「鶴を折ろう」という文字の下に「オスプレイ飛ばないで! そんな祈りをこめて折り鶴を折っています。折り鶴は昔から平和の願いと鎮魂の象徴です」とある。危険な飛行機を飛ばさないで、と思っていてもなかなか集会などに足を運べない人に鶴を折ってもらい、それをオスプレイが配備された普天間基地のゲート前に飾っているという。

「ねがいのつるプロジェクト」というこの運動をたった一人で考え実行しているのは那覇市の若い女性、なりたすずさんだ。古本屋の店番をしていた女性の友だちだという。

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翌日の医療団体向けの講演で、さっそくこれを取り上げた。南米エクアドルで折り鶴を折りながら平和を訴えるとともに米軍基地を追い出す市民運動の先頭に立った地元の市民団体「オリガミスタ」を紹介した。そのさい「沖縄にも同じような運動をたった一人でやっている人がいます」と語ったのだ。

その3日後、市民向けに講演をしていたさい、やはり南米のオリガミスタにつて話したが、時間がなくて沖縄の折り鶴には触れなかった。ところが、講演会が終わった後の感想用紙の束をめくっていて驚いた。

折り鶴をクリップでとめ「オリガミスタにびっくりしました。実は基地前で一人、こんなことをしています」と「ねがいのつるプロジェクト」について書いている。あの「なりたさん」だった。会場で地熱発電について質問した人だというので、すぐに顔を思い出した。

それから6日後、米国で仕事をしている女性と東京で会った。あの東日本大震災のさい、ロサンゼルスで日本の被災者を支援する大きな市民運動が起きたという。そこにも折り鶴が出てきた。アメリカの子ども服のメーカーOshKosh(オシュコシュ)が「子どもたちのための鶴」というプロジェクトを行ったというのだ。

折り鶴を折って店に持って来たり郵送してきたりしたら、折り鶴一個につき衣類を一点、被災した東北の子どもに贈るという内容である。最大5万点の衣料を寄贈するという。

OshKoshのホームページを見て驚いた。この呼びかけに応じて集まった折り鶴の数。それは、なんと200万個に達したのだ。店側も予想しなかった数字だ。意気に感じた店側は、予定していた上限の5万をさらに3万を加え、8万枚の衣料、金額にして150万ドル分を日本に贈ったという。この当時のレートで換算しても1億2000万円くらいの高額である。

そのロサンゼルスに特派員として赴任し米国を見た私に言わせれば、米国の政府は自国の利益のためなら他国に軍隊を派遣するとんでもない面を持つが、米国の市民には学ぶべきことが多い。社会貢献に尽くす米国の企業家の精神と、すぐに反応して行動を起こす米国市民の姿勢は日本も取り入れるべきだ。

洋の東西を問わず折り鶴が、平和や困った人々への支援の意味を込めて、今や世界中で文字通り飛び交っている。

シンガーソングライターの梅原司平さんが作詞作曲した「折り鶴」という歌がある。
  「はばたけ折り鶴 私からあなたへ 
  はばたけ折り鶴 あなたから世界へ」

というリフレインそのままに、人々の心を乗せて、折り鶴は確かに羽ばたいている。


著者紹介:
伊藤 千尋(いとう・ちひろ)
朝日新聞ロサンゼルス支局長、月刊誌「論座」編集委員を経て、現在「be」編集委員。著書に『活憲の時代─コスタリカから9条へ』ほか多数がある。

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