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シスター三木の創作童話

まんまるい丘の三本の木

丘の上の3本の木


 ある山里の まんまるい丘の上に、三本の木が茂っていた。

 ある日のこと、三本の木は それぞれに自分の生い立ちを話すことにした。
 だれからはじめるかが問題になった。
 そこで真ん中の木が提案した。

 「こんど風が吹いたとき、一番多く葉を落とした木からはじめよう」
 そのとき 風が吹いて、三本の木の葉を落としていった。
 順番が決まった。
 まず、東側に立っている木、次が西側の木、そして最後に真ん中の木。

 東側の木はこう言った。
 「わたしの先祖は 月の国から来た。
  そのしるしに、わたしは 秋のおわりに、決まって黄金の実をつける。
  それがしるしだ」
 と枝をゆさぶって、誇り高くそう言った。

 西側の木も負けじと言った。
 「きみが月なら わたしは太陽だ。太陽の国から来た。
  そのしるしは、わたしがつける朱色の実だ」
 西側の木もいばって枝にかっこうをつけた。

 さて真ん中の木の番になった。
 真ん中の木は、ポツリポツリと話しはじめた。
 「わたしは、みなさんのように、目立つしるしをもっていない。
  だから、どこから来たのか知らない。
  大昔の、あのノアの洪水のとき、舟底についていた種とか、
  舟に乗っていた動物の足の裏にでもついていた種からかもしれない。
  そうだ、きっとそうだ。
  わたしは 神さまの御手から出て来たのだ」

 東側と西側の木は、しるしを持っていないこの木を あわれんだ。
 そして、自分たちがみどりの葉のしげみにつける 黄金の実や、
 黒々とした枝に鈴なりにつける朱色の実のことを思って深く満足した。

 夜になった。
 両側の木は、うとうとと まどろみはじめていた。
 真ん中の木は、目を高く空にあげ、見えない神さまに向かって 叫んだ。
 「わたしは あなたの御手によってつくられたのです」
 その時、青白い光を放つ大きな星が流れた。
 そして 真ん中の木の上で止まった。
 枝の間から青く輝く光がもれて、あたりが 真昼のように明るくなった。
 光に目を射られた両側の木は目をさました。
 そして 真ん中の木のふしぎなしるしを見て おどろいた。

 「ああ きみも しるしをもっているじゃないか。
  夜だから、ぼくたちはねむっていていままで気がつかなかったんだ」

 三本の木は これで平等になった。
 そしてそれぞれ、自分の姿に満足し、おたがいの美しさをほめあった。
 まるいまるい丘の上で、この三本の木は、仲良く茂っていた。
 お互いに枝先をくっつけあうほどに。

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