home>シスター三木の創作童話>ほかにも 見た人 いるかしら
嵐がやんだ夜の空。
透明な大気は、どこまでも澄んでいた。
くらい雲の中から、
大きな星が、ダイヤモンドのようにきらめいてあらわれた。
つづいて一直線下に、小さな星が出てきた。小さな星は、
大きな星に引っぱられて出てきた。
それから、こんどは、大きな大きな月が、二つの星に引っぱられて、
“えんやこっら”と、出てきた。
三つのものは、一本の細い直線で、しっかりと結ばれていた。三つの光る物体は、つらなって、くらい雲の中に突入していった。そしてまた、つらなって、出てきた。
大きな星は、いった。
“きょうのお月さまは、重たいわ”って。
大きな星は、やさしいお姉さん。
月は、いった。
“いやだ、いやだ。まだ、かくれんぼしていたいよ”
月のまんまるい顔が、駄々をこねるいたずら坊やのようになった。
お姉さん星は、またいった。
“だめよ、月の坊や。いきましょう、みんなが待っているのよ”
小さなおとうと星も、いった。
“そうだよ、みんなが待ってるもん”
二つの星に引っぱられた月が、大空の真上にさしかかったとき、地上では、
ひとりの若いお母さんが、
むずかっている赤ちゃんを抱いて、月あかりの窓辺で、子守歌をうたっていた。
月はむずかる赤ちゃんに、
“にっこり”ほほえみかけた。
赤ちゃんの、小さな口が、ぽかっとあいた。
赤ちゃんは、ふかいふかい夢のくにへ落ちていった。
大きな星と小さな星、そしてまんまるい月は大空に弧を描いてのぼっていった。
大きな星は木星。
小さな星は、土星。
それは、夏近い空のメルヘンだった。