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60年“一党支配”の異常

「あけぼの」2006年7月号より) 酒井新二

戦後60年続いた自民党支配の中で、細川内閣は僅(わず)か8か月で倒れ、次の羽田内閣も2か月、1994年6月には早くも村山富市首班の社会党連立政権に、自民党は「さきがけ」と共に復活したのである。

 

戦後60年余りのうち純然たる非自民政権は前記の細川・羽田政権の10か月と、敗戦直後の第1次吉田内閣に代わって政権を担った片山(社会党)・芦田(民主党)両連立政権の1年3か月と合わせて2年1か月にすぎない。約60年間ほとんど同じ政権が続いている“民主政治”とはいったい何だろうか。

真の“民主政治”とは数年の間(長くて10年)に政権が交代することによって権力の集中的支配を排除し、それによって長期権力が必然的に陥る腐敗を防ごうとするものである。自民党内の“派閥”のリーダーによる政権の交代が実質的に“民主政治”を機能させているという主張もあるが、それは詭弁(きべん)に過ぎず、“派閥政治”は民主的政権交代を代行することはできない。両者は似て非なるものであり、60年間日本国民は自民党の“派閥政治”によって目を眩(くら)まされてきたといわなければならない。民主政治は政権交代によってのみ本来の機能を発揮することができる、というより“民主政治”はそれしか腐敗防止の手段を持たないのである。

その意味で“民主政治”は極めて不完全なものであり、個人や少数の指導者に権力の行使を任せる“独裁政治”よりは安全だというにすぎない。したがって“民主政治”が機能するには、権力の行使に対する国民の厳しい監視と国民による是正の手段が保障されていなければならない。それが選挙であり言論による批判である。その意味で国民には“権力”に関する十分な情報が提供されなければならないし、国民にはその情報を理解する能力が求められる。「マスコミ」はこの国民の理解を促進するための適切な解説と鋭い批判力が要求されるのである。


アメリカの対日政策

60年近く“一党支配”が続いたことは日本の“民主政治”が本質的欠陥を内包している 証拠であり、それは“権力”と政権政党のおごり、権力の交代を実現できなかった野党の怠慢、「マスコミ」の弱体---が指摘されなければならない。総じて日本の“民主政治”は未成熟であり、国民の側の努力も不足しているといわなければならない。しかし同時に見逃してはならないことは敗戦---占領---日米安保条約体制という、このこの60年間日本の政治に強い影響力を保持してきたアメリカの対日政策の役割である。

激烈な対日戦争を経験したアメリカは日本を全面的に武装解除すると同時に、朝鮮戦争以後日本を安保条約---行政協定によってソ連、中共、北朝鮮に対する軍事的、政治的橋頭堡(きょうとうは)としたのである。「日米安保体制」はアメリカの北東アジア・東南アジア・中近東と世界戦略が拡大していく中で、ますます「日米軍事同盟」的性格を強めていった。しかもこの日米関係の軍事同盟化は1952年の「日米行政協定」はじめ、1996年の橋本・クリントン安保共同宣言(安保再定義)1997年の「日米防衛指針」(新ガイドライン)などいずれも重大な日米の軍事的協力体制の進展が国会の審議を経ずに進められたのである。その結果第2次橋本内閣によって1998年4月に「周辺事態法」という違憲的立法が行われ、自衛隊を中東に派遣するという「日米安保」の枠を完全に逸脱する措置がとられることになった。

 

「日米安保」は日本の軍事化を抑制するというアメリカの当初の政策から日本を基地としてアメリカの中東・世界戦略の拠点とするばかりでなく自衛隊そのものを海外に派遣するという日米の「軍事的一体化」が着々と実行されたのである。小泉首相は野党から靖国問題と中国との関係悪化を追求されて「日本はアメリカとの間に友好関係を保っていれば中国、韓国、東アジア諸国との関係もうまくいく」という趣旨の答弁をして問題となった。しかしこれが小泉首相の本音であり、小泉外交の本質である。


「年次改革要望書」

関岡秀之(ヒデユキ)氏(ノンフィクション作家)の書いた『拒否できない日本---アメリカの日本改造が進んでいる』(平成16年・文春新書)で明らかにされたようにアメリカから日本に毎年提示されている「年次改革要望書」という外交文書を日本の内閣も外務省もそして「マスコミ」もほとんど国民に示そうとしていない。これは不可解なことである。

これは1993年7月当時の宮沢首相とクリントン米大統領との会談で決定され、1994年最初の「要望書」が日本に提示された。その内容は農業、自動車、建築材料、流通、エネルギー、金融、投資、弁護士業、医薬・医療、情報通信など日本の産業、経済、行政、司法にいたるまでさまざまな要求が列挙されている。「要望書」は日米相互的なもので日本も提出してはいるが、実態はアメリカの対日要求を網羅したもので、まさに現在の日本“対米従属”を絵にかいたよなものである。日本側がこの文書の公表を渋っているのもその現れである。

さきにアメリカの国防当局者が「在日米軍再編のため日本は3兆円の負担をすべきだ」と発言して問題となった。しかしこれは日米の軍事的一体化が進んでいる事実を政府が国民に知らせないからである。最近自民党の逢沢副幹事長が田原総一朗氏とのテレビ番組で「アメリカの世界戦略の中心は“テロと中国である”」と明言した。これは中国がアメリカの“仮想敵”であることを公言した重大な発言であった。逢沢発言が意図的か否かは不明だが、現在の小泉自民党の危険な兆候を示すものといわなければならない。


著者紹介:
酒井 新二(さかい しんじ)
共同通信社社長を経て同社顧問。1986年、フランス国家功労勲章オフィシエ章受章。著書『カトリシズムと現代』『カトリックが拓く日本の道』『日本の進路・キリスト者の選択』ほか

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