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福田・小沢会談の背景

「あけぼの」2008年2月号より)酒井新二


“米国の圧力”説

前回「霞ケ関に潜む闇」の最後のパラグラフで私は10月30日と11月2日にわたる福田首相と小沢一郎民主党との会談について、なぜ小沢代表がこの会談に応じたのかと疑問を呈した。なぜなら小沢氏は安倍前首相からの会談申し入れに対しては「国会で話し合えばいい」として断った経緯があるからだ。このことは安倍首相退陣の一因にもなったものであり、小沢代表がこんど首相の申し入れに応じたことは、首尾一貫しない対応といわなければならない。小沢氏はこのことについて“ある人”の勧めもあったからと釈明しているが、その“ある人”とは東京の某有力新聞社の会長だという。一言論機関の最高責任者が言論以外で現実政治に介入することは厳に慎まなければならない。

しかし理由はどうあれその勧めに乗った小沢氏はその結果に責任を負わなければならない。小沢氏が首相との会談に踏み切った理由はそれだけではない。「週刊金曜日」(11月16日号)が指摘したように、こんどの小沢氏の行動の背景には「米国の圧力」があったのではないかとの見方が根強いのである。

米国としては米鑑に対する日本側の“給油活動”の継続を望んでおり、そのためにも自民・民主の“大連立”実現について、小沢氏に圧力をかけたのではないか、11月の初めゲーツ米国防長官が来日したのもその現れであり、8月初めにはシーファー駐日米大使が永田町の民主党本部で小沢氏と会談したのも、そのような“圧力”とみなければなるまい。ゲーツ国防長官に対して福田首相は自らの訪米を前に新テロ対策特別措置法の成立に全力を挙げる考えを表明し、日米同盟強化の意向を示したといわれている。

福田首相は11月16日(米時間)ワシントンでブッシュ大統領と初の首脳会談を行って「日米同盟の強化とアジア外交の推進の共鳴」という考え方を強調した。首相としてはこの“共鳴”という表現で福田外交が対米一辺倒ではないことを示そうとしたのであろう。しかしそれが実体のあるものかどうかは、福田政権が今後、国内政治で確たる基盤を構築できるか否かにかかっている。


“福田文書”の中身

小沢民主党代表が渡辺乾介氏(政治ジャーナリスト)との対談(「週刊ポスト」12月 7日号)で明らかにしたところによれば、福田首相は11月2日の小沢氏との第2回会談で次のようなことを文書で示したという。

「国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は国連安保理もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る。したがって特定の国(米国)の軍事作戦については支援活動をしないと確約した。その上で小沢氏は福田首相が連立政権を前提に新テロ特措法の成立にはこだわらないと語った」というのである。

このことが事実とすれば、これは政府・自民党のこれまでの安保政策の重大な転換といわなければならない。しかしそのようなことが自民党内で深く論議された形跡はない。いずれにしても福田・小沢会談で表明された“大連立”を民主党役員会が拒否することの結論を出し、小沢氏はそれに対して記者会見で代表辞任を表明するという波乱の一幕となった。結局民主党幹部の説得で小沢氏は辞任を思い止まったのだが、福田・小沢会談で表面化した自民党の“政策転換”は雲散霧消してしまったわけである。しかしこの首相の“重大発言”がどういう背景を持つものかはもっと検証されなければならない。

福田首相は小沢会談の直後の訪米ブッシュ大統領に対し、従来の安全保障政策が不変であることを表明している。とすれば首相が小沢代表に示した重大な“政策転換”とは一体何であったのか。これは“二枚舌”といわれても仕方がないだろう。首相も小沢代表もその点には何のコメントもしていないし、マスコミの追求もない。しかしもし福田・小沢会談の中身が民主党によって承認されていたとすれば福田・ブッシュ会談の様相は一変していたかもしれないし、それによって日米関係は重大局面を迎えることになり、国内政局も国民の予想しない方向に進んだかもしれない。福田・小沢会談はこのような“危機”をはらむものであったことを記憶しておく必要があるだろう。

首相としてはこの“共鳴”という表現で福田外交が対米一辺倒ではないことを示そうとしたのではないことを示そうとしたのであろう。しかしそれが実体のあるものかどうかは、福田政権が今後、国内政治で確たる基盤を構築できるか否かにかかっている。


“守屋事件”の本質

守屋武昌前防衛次官が、墜に収賄容疑で妻の幸子容疑者と共に11月29日逮捕された。守屋問題の本質は“防衛利権”をめぐる防衛省と日米の軍事商社の大規模な汚職であり、かつてのロッキード事件(田中角栄、小佐野賢二、コーチャン)の二の舞といっていい事件である。

これは単に防衛官僚の事件ではなく、当然その監督の立場にある防衛大臣を含む政治レベルと深く関連するものである。航空自衛隊次期輸送機(CX)をめぐり、守屋氏と久間章生元防衛相の対立がいわれている。

防衛省事務当局の最高幹部が、受注業者からゴルフや飲食の接待を受けるということは、国家公務員法や自衛隊員倫理法にもふれる重大な違法行為であり、「シビリアン・コントロール」=「文民統制」(軍事に対する政治の支配・統制)の原則にも反する行為である。

しかし同時にこのことは、政治家である「大臣」の統制力の欠如を示すもので、国防という重要問題について、総理以下内閣全体が、事実上の“軍隊”である自衛隊に対する関心と知識の不足を露呈したものというべきであろう。


著者紹介:
酒井 新二(さかい しんじ)
共同通信社社長を経て同社顧問。1986年、フランス国家功労勲章オフィシエ章受章。著書『カトリシズムと現代』『カトリックが拓く日本の道』『日本の進路・キリスト者の選択』ほか

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