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「日本は没落する」

「あけぼの」2008年9月号より)酒井新二


「1990年代の長い不況から立ち直り、戦後最長の景気拡大が続く中で、10年前とは逆に多くの日本人は、経済に関してあまりにも楽観的になり過ぎてしまった。このままであ「日本は没落する」と榊原英資氏(元大蔵省国際金融局長・現早大教授)は、最近の同名の著作で厳しく警告を発している。

「いかにも過激なタイトルだと思われた方が多いかもしれません。しかし、決してセンセーショナリズムからこうした題をつけたわけではありません」「現在の日本はさまざまな局面で屋台骨が加速度的に崩れている兆候が見られます」「陰惨な事件の頻発やテレビ番組の低俗化などに象徴的に示されるように、健全だった日本の中産階級が崩壊し始め、日本経済を支えてきた土台が崩れてきている。その影響が最も顕著に現れているのが、教育の現場だ」「スポーツ選手や芸能人にあこがれ、地道な努力を厭(いと)うようになった多くの若ものたちは、中国やインドの若ものと比べて、あまりにも大きな差がある」森昭雄氏(脳神経科学者)によれば、日本の若ものの『脳力低下』は問題だという。「ゲーム・パソコン・携帯電話などの普及が、日本人、特に若ものの『脳力』を急速に低下させているという。映像などからの一方的、受動的な情報の洪水によって若ものの“コミュニケーション能力”と“考える力”が、急速に奪われている」というわけだ。

「明治時代の日本は、“富国強兵”という国家戦略によって“工業化と教育”に力を注いだ。しかし現在の日本は国家戦略もなく、教育水準は落ち、国民一人一人の意欲や努力も大きく低下している」「日本は『産業資本主義』時代に達成した豊かさに安住し、世界の激動に背を向けて安穏としている」。このような日本の経済社会の“劣化”を回復するには「時代にマッチした技術・情報重視の姿勢を急速に高めなければならない」と警告している。

われわれはこのような榊原氏の主張を、十分考える必要があるだろう。

 

北朝鮮の「申告」

北朝鮮は、6月26日「6者協議」の合意で義務づけられていた「核計画の申告」を議長国である中国に提出した。ブッシュ大統領がこれに基づいて「北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を議会に要請した」と発表した。北朝鮮の「申告」の内容は、
①核施設の目録
②プロトニウムの抽出量とその使用先
③ウランの在庫量など
と言われる。

ブッシュ大統領はこれに基づいて、直ちに北朝鮮の「テロ支援国家指定」を解除する手続きを開始する意向を示した理由は、
①北朝鮮は過去6か月間、国際テロ支援を行っていない
②将来もテロ支援を行わないことを確約した
……ことによって、解除の要件を充たしたというわけである。しかし、韓国政府筋によれば「核兵器の数や施設の詳細な情報は申告書には盛り込まれていない」と言う。

ブッシュ大統領によれば「北朝鮮は、今後全ての核施設を廃棄し、プルトニウムの抽出をやめ、高濃度ウラン問題を解決し、検証可能な方法で全ての核関連施設の活動を終わらせなければならない。北朝鮮の出方によっては新たな制裁もありうる」としたという。しかし、この北朝鮮の文書は、日本人の“拉致問題”には全く触れていない。米大統領は記者会見で「アメリカは北朝鮮による日本人拉致を決して忘れない。われわれは、今後も日本と協力し、北朝鮮に問題の早期解決を迫っていく」と言明したに止まった。これは日本に対するいわゆる“リップ・サービス”(必ずしも実行の伴わない外交上の口約束)に過ぎないと言われても仕方ないだろう。高村外相は「日米の連携のあらわれ」と言っているが、そのようなことを強調するほど、それがむ空しいことを現している。

政府は国民に現実を正確に示す勇気を持つべきである。それこそが国民の信頼を得る途である。それにしても日本政府が米に対して「指定解除はしないように」と、再三要望していたにもかかわらず、ブッシュ大統領がこれほど早く“解除”に踏み切った理由は何か。

任期あと半年となったブッシュ政権としては北朝鮮の核問題をなんとか進展させ、数少ない外交的成果を上げたいと考え、北朝鮮がもっとも欲しがっている「テロ支援国家指定の解除」とうカードを切って北朝鮮の“核廃棄”への動きを加速しようとしたと言われている。

米の立場は「本来拉致問題は“指定解除”とは関係しない。しかし、同盟国日本に配慮して、何度も北朝鮮を説得した。だから北朝鮮は『解決ずみ』としていたのを『再調査』することにしたのである。米は日本に対してやるべきことはやった、というのが本音であろう」とNHKは解説した。(6月26日)

 

イエズス会新総長

7月2日付けの米「ニューズウィーク誌」は、「世界宗教入門」特集の中で、教皇ベネディクト16世とイエズス会の第30代新総長となったアドルフォ・ニコラス師が握手している写真を2ページぶちぬきで掲げた。上智大学で長年教鞭をとってきたニコラス師は、われわれ日本の信徒には親しい人物。同誌によろば「イエズス会は、カトリックの自己改革の一環として16世紀に設立された。ニコラス師はイエズス会のなかでも改革志向が強く、1998年には『下部組織にもっと権限を与えるよう』(バチカンに)直訴したこともあった」と言う。

故ヨハネ・パウロ2世が最近のバチカン革新の中心とされたのに対し、現教皇は“保守派”を代表する人物とされている。改革志向の強いニコラス新総長が今後、教皇とどのような関係を育てていくかは、カトリック教会の明日の歴史を占う大きな鍵となるかもしれない。


著者紹介:
酒井 新二(さかい しんじ)
共同通信社社長を経て同社顧問。1986年、フランス国家功労勲章オフィシエ章受章。著書『カトリシズムと現代』『カトリックが拓く日本の道』『日本の進路・キリスト者の選択』ほか

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