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混迷の日本外交 –––黒人大統領公明党の“政教一致”

「あけぼの」2009年1月号より)酒井新二


私は前号で「日本政治の異常」を指摘し、その要素として自民党自体の混迷と共に、連立の相手である公明党の“革新性”の喪失にふれた。

いま“麻福田康夫総理”を拒否し“麻生太郎総理”を歓迎したはずの公明・創価学会の意図は麻生政権に対する国民の不信によって早くも壁にうち当たっているといわざるをえない。そのことを改めて確認することが必要であろう。生自民”が自民・公明連立政権の再生に無力であることが明らかになりつつある。

 

蚊帳の外

上杉隆氏(ジャーナリスト)は「週刊朝日」(2008年10月31日号)に「麻生『外交』敗れたり」と書いた。それはブッシュ米大統領による「北朝鮮制裁解除」を阻止できると寸前まで楽観していた麻生首相と外務当局の“無能”を強く衝(つ)いたものである。日ごろ“日米同盟”を誇ってきた政府にとって、この米国の措置はまさに“寝耳に水”であり、新聞が指摘した通り「蚊帳の外」におかれた日本外交の醜態であった。これは単に一麻生政権の問題ではなく、日米関係の根本に関わることといわなければならい。

 

矢野氏の“学会”観

元公明党委員長矢野絢也氏が「文藝春秋」2008年11月号に、“福田から麻生”に船を乗り替えた公明党・創価学会の思惑について語っている。公明・学会の内幕を熟知している矢野氏の指摘は、池田大作創価学会名誉会長の存在そのものが公明・学会の“政教分離”を混乱させている真の原因であり、それは解決困難なものであることを明らかにしている。

昭和45年5月、評論家藤原弘達氏に対する学会と公明党による言論出版妨害事件に対して、世論の厳しい批判を受けて当時の池田会長は、学会と公明党の“政教分離”を宣言した。

 

池田会長の誓約

しかしこの池田会長の誓約は徐々に反故(ほご)にされ、いまや池田氏を頂点とする学会・公明の“政教一致”は完全なものになりつつあるという。本来相対的であり、批判の自由が認められることが民主政治の原則であるはずである。ところが宗教としての学会における池田氏の発言は絶対的なものとされ、それが政治の面にまで及んでいるのである。「いざというときに党としての方針・政策と池田氏個人の守護とどちらを優先するのかということだ。この2つが競合する場合、1も2もなく池田先生をお守りする行動が優先される」のである。学会では「永遠の指導者である池田先生の発言は、絶対的なものとされている」

池田氏は学会における「永遠の指導者」であり「池田氏に帰依し、心伏随順し、その指導に従うという意義が、公明党議員の深層心理にまで刷り込まれている」という。

要するに、公明党にとっても創価学会にとっても、池田氏は絶対的存在であり、そのためには公明党は常に政権党であるべきだというテーゼが出てくるのである。

次の衆院選で自・公合わせて三分の二を超える現在の勢力を失うことは確実とされている。その場合、公明党からは「自民党が野党になったら、もう縁はない」などという声が漏れ伝わってくると矢野氏は書いている。「公民連立も視野においている、というわけだ」。このような公明党の政治観が学会の政治観と一致するとすれば、それは政治モラルの面で大きな問題を提供するものであろう。

 

問題頻発の「海自」

相撲界で起きていた“リンチ”(“かわいがり”と称する)が、海上自衛隊でも起きていたことが明らかになった。

広島県江田島町にある海上自衛隊の特殊部隊の隊員養成学校で15人対1の格闘訓練の際、必要以上の攻撃を受け、25歳の隊員が急性硬膜下血腫で死亡していたことが明らかになった。事件は2008年9月25日に起きたのだが、共同通信が10月12日に報道しなければ闇から闇に葬られていたかもしれないという。

“江田島”といえば旧海軍の幹部養成所として有名な“海兵”(海軍兵学校)の所在地であった。山本五十六、米内光政などという“旧帝国海軍”の“名将”を輩出したところである。

事件を起こした海上自衛隊の教官はこの訓練を「異動の前のはなむけ」と説明したが、事実は明らかに“リンチ”に近いものであったという。防衛省は遺族側の「集団体罰だ」との非難と世論の批判によって、ようやく「格闘訓練の必要性は認めがたい」という事故調査委員会の中間報告を公表した。

海上自衛隊は、自衛艦が漁船と衝突して乗員親子を死亡させるなど不祥事が頻発している。

戦前の“軍隊”の内部ではいわゆる“リンチ”が闇から闇に葬られることが度々起きていたことは今ではよく知られていることである。このような“軍隊”内部の“闇”の部分は、日本に限らず世界の“軍隊”の中では往々にして起きていることである。

日本が戦後現憲法下で“軍”を持たないことを世界に対して明らかにしているのは、単に戦力不保持を表明するだけでなく、このような“闇”を持たないということでもある。現憲法下の自衛隊では、このような“闇”を持ってはならない。そのことを改めて確認することが必要であろう。


著者紹介:
酒井 新二(さかい しんじ)
共同通信社社長を経て同社顧問。1986年、フランス国家功労勲章オフィシエ章受章。著書『カトリシズムと現代』『カトリックが拓く日本の道』『日本の進路・キリスト者の選択』ほか

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