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9条アジア宗教者会議(2)

2007/12/21

日本国憲法第9条の改憲が求められ、その力は年々強くなっています。しかし9条には、普遍的な平和への思いが込められており、日本だけでなく、世界が大切な憲法として認識し始めているこのごろです。憲法9条は、日本が苦しみを与えたアジアの人々に対しての反省と謝罪の思いが込められたものです。「もう戦争はしません」という不戦の誓いが表明されたものです。しかし、日本政府は、自衛隊の軍備拡張や海外派兵など、都合のよい解釈をすることによって、9条の土台を揺るがしています。

東京・神田の在日韓国YMCAの“YMCAアジア青少年センター”で行われた「9条アジア宗教者会議」、11月29日(木)の午後に行われたパネル討論の様子をご紹介します。


11月29日(木) パネル討論「非暴力と平和の実践」


パネリスト:

武者小路公秀(むしゃこうじ きんひで)氏
      ……大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長、国際政治学者


ベッド・プラタップ・バイディック(Dr.Ved Pratap Vaidik)氏
      ……インド、ヒンズー教徒、政治分析家、
        ジャーナリスト、インド外交政策協議会委員長者


シャロン・ローズ・ジョイ・ルイス・ドゥレムデス
              (Ms.Sharon Rose JoyRuiz-Duremdes)さん

      ……フィリピン教会協議会総幹事


平良夏芽(たいら なつめ)師
      ……日本基督教団うふざと伝道所牧師、日本基督教団沖縄教区書記、
        平和市民連絡会共同代表


9条アジア宗教者会議-2
左から、武者小路氏、シャロンさん、平良師、バイデック氏


シャロンさん:
わたしは戦後生まれで、恐ろしい戦争体験はないが、5歳のときに引っ越しがあり、そのとき古い写真を見つけた。おじ、おばたちが写っていたが、一人だけ知らない人がいた。「レイナおばさんよ」と教わった。彼女は日本兵から首を切られ、戦争への怒りと日本への恨みを持っていた。もう一人のおばの首にも、日本兵の刀の跡があった。わたしは小泉氏の靖国参拝に反対し、抗議の文も出した。

フィリピンは、米国が多くの国を攻撃するときの足場として使われた。1992年、米軍基地を撤廃した米比軍事同盟により、米軍はフィリピンを従属した。


シャロンさん
シャロンさん


平良師:
イラク攻撃も朝鮮戦争も沖縄から米軍の飛行機が出て行った。日本が9条を制定したのも、政治的には天皇制を維持したかったからだろう。軍事力を放棄するから、天皇制を残してくれ。沖縄は米軍の基地として自由に使っていいから……という取引があったと思う。

9条を守るということでは困る。9条の文言を実現したいと思わなければいけない。

平良師
平良師


沖縄島の20%が米軍海兵隊の基地となっている。キャンプ・シュワブで、軍港と空港を作る計画が発表された。わたしたちは非暴力を誓って反対運動をしている。辺野古には、いろいろな思いの人が集まってくる。

出来事に対処するとき、目の前のことを片付けることと、長い目で見ることの2つに分けて考えることが必要だ。今、わたしたちがしようとしていることは、今まで人類がしたことのないことだ。だから、そんなに早く変わるとは思っていない。100年、1000年かかることかもしれない。しかし、今始めないと、1000年後はやってこない。だから、今しなくてはいけないことをするのだ。

日本の平和教育では8月が大切な月だが、沖縄では6月だ。被害を受けたことばかりでなく、日本が加害した日付も大切だ。12月8日に学ぶことも大切だ。すべてのことは、相手の立場に立って考えることに尽きると思う。

「辺野古に行けなくてすみません」と言われる。「祈ることしかできません」というあいさつをよく聞く。宗教者のする第一のことは祈ることだ。「祈ってますからね」ということが、現場を支えてくれる。


バイデック氏:
日本は軍事費のために5兆円を使っている。これで9条があると言えるのか。9条はもう存在していないのだ。自衛隊の人々のために給料を払っている。もう9条はないのだ。日本人は核兵器を持っていないと言うが、日本はほとんどが各保有国でとても危険な国だ。9条があるのに、どうしてそういうことができるのか。日本は原子力発電をすすめている。どうしてこんなにすすめるのか。ブッシュ政権のミサイル攻撃構想について、日本はパトリオットミサイルを持っている。これで9条を尊重していると言えるのか。

バイデック氏
バイデック氏


米国は世界を支配しようとしている。その米国と共犯者としての地位を持っている国、日本。米国はインドにいろいろな資源があることを知っている。それで、協力関係を呼びかけてくるが、それに応えない。米国は中国にも進出しようとしている。中国には、戦争のために必要な鉱山があるからだ。

あなたたちは、「9条を守ろう!」と言っているが、「守る」のではなく「活かす」のではないか。憲法9条が、インドにとっても、世界にとっても大きなモデルとなることができるのではないか。

日本ができることは、主権を取りもどすこと。安保条約を変えることだ。米国の憲法にこそ、9条を入れるべきだと言おう。


質問:非暴力と無防備」とはどう違うのか?

武者小路氏
無防備都市を宣言したら、国でも町でも、戦車を通すことはできない。日本でも宣言しているところがある。米国の働きを阻止するためにも、この宣言は効果的かもしれない。


武者小路氏
武者小路氏


バイデック氏
ガンジーは暴力によって亡くなったが、「オラール、オラール、オラール」と3回言って亡くなった。平和的に亡くなったのだ。


質問:日本がテロ特措法に参加しなければ、世界から孤立するのか?

日本政府が言っている「世界」とは、アメリカのことである。すべての人に、よくつきあうことはできない。どちらかにくっつくしかない。敵を作らないことが求められているのではない。「あなたの敵を愛しなさい」とイエスは言っているので、敵があるのは前提である。きちんと生きれば、それに反対の立場の人も出てくる。それを恐れないこと。しかし、孤立することはない。


質問:残虐な行為を、日本は悔い改めているか?

武者小路氏
悔い改めている人はいる。この会場にいる人は悔い改めていると思う。しかし、国が悔い改めているかと言われると、それは言えないかもしれない。日本人は国に誇りを持っている。しかし、アジアでの行いを認めると国への誇りも崩れてしまうかもしれない。植民地主義が間違っていたと分かれば、テロ特措法はいらないはずだ。日本が植民地主義に反対しなくてはいけない。日本は今、格差が広がっている。搾取される側との生活を、国家間レベルではなく、人と人のレベルで行うことも必要だ。

 

戦争の被害にあっている国の方々の発言を直接聞くことは、とても新鮮でした。日本のしてきたことに対して、身の縮まる思いで聞いていました。しかし、信頼と期待を持って話してくれていることを感じました。謝罪と赦しが、感情にとらわれることなくできるのは、宗教者であるという共通の基盤の上に立っている人々の集いであることと、小規模の集会のよさかもしれません。相手への愛と信頼という人間の善を土台とした関係作りが行われていけば、いつか、武力攻撃のない世界になれる気がします。

文頭の飾り次回は、30日の午前に行われたパネル討論「軍事化する世界と9条--私たちにできること」をご紹介します。

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