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シスター三木の創作童話
コバルトスズメとマリアさま
太陽が、にぶく銀色の光をはなち、波の上をきらきら輝いてすべっている海、その日の海は、しずかにないでいました。
ここ、サンゴしょうの海は、空の青さをうつして、ますます青く、海の底まですけて見えるほどでした。
白や、ピンクのサンゴしょうの間を、濃いブルーの小さな魚や、冴えて黄色の大きな魚たちが、群れをなして泳いでいます。
先頭に立つ魚が、リーダーのようです。
魚たちが、方向をかえるときの合図は、こうでした。まず、頭を、キッと動かして角度をきめ、右のむなびれをひろげて、左のむなびれを休ませると、左に曲がるのです。右に曲がりたいときは、その反対のことをすればいいのです。まっすぐに進むときは、からだを左右に細かく動かして、しっぽで8の字を横に書くと、からだは前に進みます。
先頭の魚が、両方のむなびれを、いっぱいに広げると、泳ぎにブレーキがかかって、それにならった魚たちは、みんな止まることができました。
こうして、スズメダイと呼ばれている、小さな魚たちは、泳ぎの練習をしていました。つかれてくると、大きくて丸い、テーブルのようなサンゴしょうの上で休みました。こんなときに、むなびれは、パラシュートの役目をしてくれます。むなびれを、できるかぎりいっぱいに広げて、ゆっくり下に降りればいいのです。そして、サンゴのひだにはさまって、スズメダイたちは夢を見ます。
ある夜のこと。スズメダイのうちで、いちばん小さな魚が見た夢は、こうでした。
それは、スズメダイのおじいさんの、そのまたおじいさんのときのできごとでした。おじいさんが、まだ小さかったときのことです。サンゴしょうは、こんなに大きく広がっていませんでした。
そんなある日のこと。海に、たくさんの星が、落ちてきたことがあったそうです。びっくりした魚たちは、海の底でチカチカ光る星を、遠まきにして見ていました。その星は、ひとつずつ、海の星にかわっていったそうです。でもその中で、ひとつの星だけは、いつまでもひかっています。スズメダイたちは勇気を出して、みんなで、その光った星に近づいてみました。
そして、その光は、ずーっと上の方まで、帯のようにつづいていました。スズメダイたちは、その光の帯をつたっていくうちに、とうとう海の上に出てしまいました。
ふしぎな光は、まだずーっと上、空高くつづいているのでした。
そして、スズメダイたちは、その光の中に、かわったものを見つけました。それは、一枚の濃いコバルトブルーのストールが、ふわっと舞い下りてきているのです。
スズメダイたちは、あれは一体、なんだろうと、口をパクパクあけて、空を見あげていました。そんなスズメダイの上に、そのストールは、ふんわりとかぶさりました。
そのときです。スズメダイたちは、いままで白かったなかまたちが、濃いブルーに染まっていくのを見ました。スズメダイたちは、ストールと同じコバルトブルーになりました。
それで、青い海に泳いでいるコバルトスズメは、海面からは見つけにくいのです。
そして、夢を見ていた小さなスズメダイは、自分の名前のわけを知りました。そして、みんなに教えてあげました。
しかし、海の星とストールのふしぎなわけを、知りませんでした。ただ、南へ、南へと飛ぶ渡り鳥だけが、言いつたえを聞いて、それを知っていました。
あれは、マリアさまが、天におのぼりになるとき、風が思い出にもらった、マリアさまの冠の星と、ベールだったということです。
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