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シスター三木の創作童話
ピコピコ雲の天使たち
真っ白で、ソフトクリームのような大きな雲が、ムクムク、ピコピコ、出たり入ったりして動いています。それはね、高い、高い空から見てわかったことなんです。そこへ、もっと高いところから、こんどは、コッペパンの形をした雲が、風にのってやってきました。そして、ソフトクリームのような、ピコピコ雲の横に、ピタッとくっついて止まりました。その雲には、大きなつばさをつけたお兄さんや、お姉さんがのっていたのです。
「さあ、いたずらっ子ちゃんたち、お顔を出してちょうだい! 」
この声を聞くと、いままでピコピコ、ムクムク動いていた雲から、小さなかわいい顔が、たくさんのぞきました。
「さあ、みなさん、お洋服を着ましょうね」出てきた子どもたちは、みんな白いコンビネーションを着ています。大きなつばさのお姉さんたちは、子どもたちのコンビネーションをぬがせ、まっしろのワンピースに着かえさせました。そして、水色のベルトをしめてあげました。でも、へんなことに、どの子もこの子も、背中に二つ、小さなこぶのようなものをつけているのです。ワンピースのデザインは、ちゃんとこのこぶが出るようになっていました。
「さあ、つぎは、ブラッシング。みなさん後ろを向いてくださーい」
お姉さんたちは、そういって、子どもたちの背中のこぶを、ポン、ポンと指で軽くはじきました。それから、ろばの赤ちゃんのしっぽの毛でつくった、やわらかいブラシで、はじいた背中のこぶなをでました。すると、どうでしょう、小さな、二つのこぶは、小さな二つのつばさになったのです。
「さあ、みんな、こっちにおいで」
こんどは、お兄さんたちが言いました。どうやら、飛ぶ練習らしいです。
「ソフトクリームからコッペパンへとぶ、それから、また、コッペパンからソフトクリームへとんでかえってくる。いいかい、さあ、はじめよう」
小さなつばさの子どもたちは、とてもじょうずに飛べます。はじめから、飛んでいたみたいです。
「はあーい、やめ。こんどは、お兄さんや、お姉さんたちが、みなさんにカードをくばりますから、よく見てください。このカードには、これからみなさんが行くお家がかいてあります」
子どもたちは、わあーっと走っていって、カードをもらってきました。
「みなさん、もらいましたか。まだもらってない子は手をあげて! よし。みんなもってるんだね」
小さなつばさの子どもたちは、よく字が読めるようです。
「きみ、どこ、アメリカ」
「わたし、フランスにいくのよ」
ピコピコ雲は、ガヤガヤ雲にかわりました。
おたがいにカードの見せっこをして、さわいでいます。
「みなさん、ちょっと静かにしてください。そのカードには、出発時間が書いてあるでしょう。7時21分出発の子どもたちは、スタートラインについてください。はあーい、さあ、スタート! 」
つぎからつぎへと、子どもたちは、小さなつばさをひろげて、飛び立っていきます。まるで、小さな雲が、ちぎれて舞っているようです。
「どれ、どれ、きみはどこへ行くの、ああ、きみは、アフガニスタンのファジルさんのところへ行くんだね。ファジルさんのお家は、とっても貧しいんだよ。だって、この間、戦争が終わったばかりだからね。でも、若いパパとママは、すてきな人たちだよ。とっても愛しあっているんだ。きっとかわいい赤ちゃんが生まれてくるよ。きみは、この赤ちゃんを守る役目なんだね。さあ大きくなっていっしょに帰ってくるんだよ、気をつけてね」
お兄さんにそう言われた、小さなつばさの子どもは、こっくりうなずきました。そして、手をふりながら、飛び立っていきました。
いったいここは、どこなんでしょう。ここはね、生まれてくる赤ちゃんたちを守る「守護の天使」の国なんです。みんな、だれにでも、守護の天使がついています。ただ、見えないだけなんです。
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