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シスター三木の創作童話
クリスマスプレゼント
ジングルベル ジングルベル
鈴がなる……
「おや、たいへんだ。わしは こうしてはおられん。わしのうたが聞こえてくる」
そういったのは、まっしろなおひげのおじいさん。腰をのばしながら、壁にかけてあるカレンダーの方へ歩いていきました。
「あれっ、まだ二日じゃないか。どれ、どれ、なあんだ、商店街の売り出しか。びっくりしたわい。この年寄りをおどかしたりして。ああ、ああ」
ここは、空の上のサンタクロースのおじいさんの家です。さっきの歌は、このサンタのおじいさんの家のテレビから聞こえてきたのです。このテレビは、とてもかわっています。チャンネルナンバーのかわりに、世界の国々の名前が書いてあるのです。そして、今、映っているのは、どうやら日本のようです。
サンタのおじいさんは、ふかふかしたソファーに、ゆったり腰をおろして、テレビを見ながら、パイプを、プカプカふかしています。側のストーブは、ゴーゴー音をたてて燃えています。サンタのおじいさんは、長い長いおひげをなでながら、とても困ったようにつぶやきました。
「もったいないことじゃ。クリスマスとは、イエス・キリストさまのご誕生を、お祝いいする日なのに、まるで、このわしがプレゼントをする日のように考えとるわい。子どもたちも、そう思っとる」
サンタのおじいさんは、そういうと、本だなから、ぶ厚いノートをとり出して、読みはじめました。そのノートの背中には、1974年と書いてありました。
「ふむ、ふむ、これは、いかん。わしがわるいのじゃ。どれどれ、73年は、…どうじゃろう。ああ、これも、いかん。このわしがいかんのじゃ」
おじいさんが、ひとりごとを言いながら見ているノートには、その年に配ったプレゼントの品物の名前が書いてあったのです。
「ふーむ。どうやら、クリスマスプレゼントに、おもちゃや、プラモデル、それにお人形さん、ああ、そんなものばかり配っとったようじゃ。だから、クリスマスといえば、サンタクロースのプレゼントを待つ日だと、子どもたちは思ってしまうのじゃな。さてと、それじゃ、今年はどうするか」
おじいさんは、せまい部屋を、あっちへ行ったり、こっちに行ったりしながら考えています。パイプの火は、もう、とっくに消えているのに、あいかわらず、くわえたままです。
「うん、そうじゃ、そうじゃ、きめたぞ、きめたぞ」
と言って、急いで、部屋のすみにある古い古い形の電話機をとりました。
「ああ、もしもし、交換さんかね。わしじゃ、サンタのじいじゃよ。もうすぐクリスマスだね。今年のプレゼントはな、イエスさまのご誕生のおはなしの本にするから、いろんな種類の本をとどけてくれるようつたえてくだされ。それじゃ、よろしくたのみましたよ。おやすみ」
どうやら、お空の国の交換台に電話をかけたようです。
「ああ、よかった。これで今年は、クリスマスのほんとうの意味がわかるじゃろう」
おじいさんは、消えかかったストーブに、星くずを一ぱいすくってくべました。空のサンタのおじいさんの家では、汚れて、ひからなくなった星くずを、石炭のかわりに、ストーブにくべるのでした。
サンタのおじいさんの今日も、暮れていきます。外は雪です。サンタのおじいさんは、あかあかと燃えるストーブの側で、クリスマスに訪れる子どもの家の地図をしらべています。
「ふん。この子も、今年の生まれだな」
サンタのおじいさんの庭では、トナカイが四頭、出発にそなえて、その立派な大きな角を、太い木の幹にこすりつけて、みがいています。
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