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シスター三木の創作童話
ばらの日の雪ん子たち
雪ん子 雪ん子 お山におりた
雪ん子 雪ん子 畑におりた
雪ん子 雪ん子 お屋根におりた
雪ん子たちは、細い電線の上にも、じょうずにおりて、灰色の空にゆるく白い線を引きました。今年も、雪ん子の季節がやってきたのです。灰色の空から、ふわ ふわ おりてくる雪ん子たちは、なかまの上にどんどんつもって、一晩のうちに、30センチもの高さになりました。
次の朝、早く、まじめで忠実な一番どりが鳴きました。でも、いつもより少し早かったようです。きっと、まっしろな雪のせいで、あたりがあかるくなったので、時間をまちがえたのかもしれませんね。こたつの上のねこは、目を半分あけましたが、起きようとはしませんでした。
やがて、東の空が白んで、まっかな太陽がのぼりはじめました。そして、まっしろな雪ん子たちを、ばら色に染めました。
雪の世界では、雪ん子たちがばら色に染まるとき、きまってふしぎなことが起こるといわれています。
シャラリン シャラリン シャラランラ
シャラリン シャラリン シャラランラ
あれは、そりについている鈴の音です。そうです。神さまがお乗りになっていらっしゃるそりの鈴が鳴っているのです。さわがしかった雪ん子たちは、急に静かになりました。
シャラリン、シャララ、ラ。そりが止まりました。たくさんの鈴をつけたそりの上に、金色のマントをつけた神さまが立っていらっしゃいます。神さまは、雪ん子を両手ですくうと、十本の指の間から、はらはらと、落としながら、こうおっしゃいました。
「雪ん子たちよ、よく聞きなさい。今日は、雪の世界のばらの日です。それで、おまえたちを、この雪の世界から出してあげます。なんでも、好きなものになりなさい。ただし、白い色のものだけです」
それから、神さまは、また、シャラリン、シャラシャラと鈴を鳴らして、ばら色の空に帰っていかれました。
そこで、雪ん子たちは、ありったけの知恵をしぼって相談しました。そして、みんな、それぞれに、あたらしいいのちをめざして旅立っていきました。ある雪ん子たちは、夏の青い空に、ムクムクわきあがる雲になりたいと思って、空高くのぼっていきました。
ほかの雪ん子たちは、もくもくの毛皮にくるまった羊の群れになりました。白うさぎになった雪ん子たちは、幼稚園のこどもたちと仲良しになるために、園のおりの中に入りました。白くまになった雪ん子たちは、親子になって北の国の氷の上を散歩しました。
ねこやなぎの白いふかふかの芽になった雪ん子たちは、病気の女の人を見舞いにいき、春の訪れを告げて、なぐさめてあげました。
それから、タンポポの種についている白い落下傘になった雪ん子たちは、春に黄色い花をつけてみんなを喜ばせるために、くらい地面にもぐりました。
神さまは、雪ん子たちが、新しいいのちを、いっしょうけんめいに生きているのをごらんになって、にっこりなさいました。
「これでよし、さて、来年の雪ん子は、どんなものにかわりたいのかな」
とひとりごとをおっしゃいました。
今度のばらの日は、いつですかって?
そうね、それは、大雪の次の朝はやく、まっかな太陽がのぼって、空が、ばら色に染まる時でしょうね。
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