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シスター三木の創作童話

父の日

父の日

「おい、まさし、6月17日、何の日だか知ってるか?」
「うん、知っているよ、父の日だよ」
「えらい、えらい。よくおぼえていたなあー。それで、プレゼントのこと、もう考えたかい」
「ううん、まだだよ、お兄ちゃんは?」
「ぼくも、まだだ。2人で一緒にしようか」
「うん、いいよ」

 まさしちゃんは、小学1年。お兄ちゃんのきよたかくんは、小学4年。2人は、仲良し兄弟です。

「それでお兄ちゃん、何をするの?」
「それがだ、思いつかないんだ。いったい、お父さんは、何が好きなんだろう?」
「お母さんに、きいてみようか」
「うん、そうしよう」

 2人は、夕食の支度でいそがしいお母さんのところにいきました。

「ねえ、お母さん。ちょっと相談にのってくれる?」
「ええ、でも、いまいそがしのよ。簡単にいってちょうだいね」
「あのね、お母さん。ぼくたち、父の日のプレゼントをしたいんだけど、お父さん、何がほしいのかなあ」
「あら、そうね。父の日もうすぐね、お母さんも何かしなくちゃ。でもそんなこと、自分たちで考えなさい。その方が、お父さんおよろこびになるわよ、ね。そうしてちょうだい。あら、たいへん、こげちゃうわ」

 だめです。お母さんは、もういそがしくて、よく考えてくれません。2人は、すごすごと、勉強べやにもどりました。
「ああ、あ、何にしたらいいかなあー」

 そのとき、まさしちゃんが、急に大きな声でいいました。
「そうだ。ねえ、お兄ちゃん、お父さんには、まくらがいいよ」
「ええっ、まくら? どうして」 「だって、お父さん、おやすみの日は、いつも座ぶとんでまくらをつくってねているよ」

 そうなんです。このごろ、少しふとり気味のお父さんは、日曜日となると、座ぶとんを2つ折りにして、まくらがわりにし、1日中ゴロゴロねていることが多いのです。
「うん、よし、わかった、まさし、ちょっときてごらん」

 きよたかくんは、まさしちゃんの耳に、何かひそひそ、ささやきました。
「わあーい、きまったぞー」
 2人は、とびあがって、よろこんでいます。
 まくらにきめたのでしょうか……。それから2人は貯金箱をあけました。

 さて、6月の第3日曜日、父の日になりました。きよたかくんとまさしちゃんのお父さんは、2人を相手に、朝から、キャッチボールをしています。日曜日は、いつもねているお父さんにしては、ほんとに、めずらしいことです。お母さんが、ニコニコ顔で、2階の窓からお父さんに声をかけました。
「お父さん、ずいぶんすてきなプレゼントをおもらいになったのね」
「おーい、母さん。ひどいよこれは、おれはもうくたくただ。これ母さんの入れ知恵かい?」
「いいえ、どういたしました。きよたかとまさしが、自分たちで考えたんですよ。ちょうどいい運動ですわ」

 お母さんは、きよたかくんとまさしちゃんに手をふると、おへやの中に引っこんでいきました。


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