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サッちゃんは、またアルバムを開いています。パパとママの結婚記念のアルバムです。
「サッコは、よほど気に入っていると見えるね」
と、パパが、サッちゃんのうしろからのぞきこみながらいいました。
「そうよ。わたしけっこんしき、だいすきだもの。ねぇ、パパとママ、れんあいけっこんだったんでしょう」
「ええっ」
突然のサッちゃんのことばに、パパはびっくりしたようすです。そして、“どこでおぼえてきたんだろう。まいったな”って思いました。
「ああ、そうだよ」
「やっぱり! すてきだった?」
「なにが・・・」
「きまってるじゃん、ママよ。きれいだったでしょう」
パパはちょっと返事につまりました。
「う、うん、まあね。すてきだったよ」
「なんだ、もっとはっきりいってよ」
「うん、すてきだった」
「ね、はなして! サッコ。さんこうにするの」
「参考に? ちょっとはやすぎると思うね」
「はやすぎないよ。パパ、おくれてるう」
「よし、おくれてるか。うん、じゃ、はなしてやってもいいよ」
パパは、ちょっともったいぶって、せきばらいをすると、はなしはじめました。
「パパはね。若いとき、友だちをたくさんもっていた。サッコも、お友だちは、だいじにしなくちゃいけないよ」
「うん。だいじにしてるよ。カズくんがけしゴム忘れたときかしてあげたもん。そして・・・」
「そう、女の子も友だちもたくさんいた」
「パパ、かっこいいから、もてたんでしょう」
「こら! おとなを茶化すんじゃない。パパ、はなしてあげないよ」
「ごめんなさい。もういわない。つづけて・・・」
「よし、そんならね。ある日、大ぜいでキャンプにいったんだ。そのときはね、パパは、ママのことあまり気にしてなかったんだよ。ママはね、目立たない人だったからね。ところがね、はなやかなおじょうさんたちが、さわいでいるかげで、にこにこしてみんなの方を見ながら、ひとりで食器の片づけとか、ゴミ集めとかをしている女の子がいた。それが、ママだったんだよ。パパが見てたもんで、ママは、困って恥ずかしそうにしていたよ。パパはね、そのときのママ、きれいだと思ったね。それからね、集まりがあるたびに、ママのこと気をつけてたんだけど、ママは、いつも控え目で、みんなにつくしてくれてたよ」
ここでサッちゃんが、急に声をあげて男の子のようにいいました。
「そうかなあ。いまのママ、控え目なんかじゃないよ。母の会の会長さんだよ」
「はっはっは、ママはね。お母さんになったから強くなったのさ。はっはっは。まいったな」
「やっぱりママは、びじんだったのね。パパわたしはどう? びじんかしら・・・」
「ブスだよ。おねえちゃんは!」
いつのまに入ってきたのでしょう。弟のマサルが、ロボットを下げて立っていました。
「あんたにかんけいないでしょう。チビのくせに、イーダ!」
「さあ、さあ、二人とも、やめた、やめた。ママは、おそいなあ、ずいぶんおめかしにこってんだなあ」
そこへママがはなやかに帰ってきました。
「まあ、まあ、おまたせしました。ごめんなさいね。お店がこんでて・・・おそくなっちゃたわ」
まるまるふとったピチピチママです。ママは、ビューティーサロンでセットしてきたのです。
「さあ、わたしの準備は、完了よ。みなさんはいかがかしら」
母の会リーダーのかけ声です。パパは、上着をきながら、目を見張る思いです。
“ママは、かわったな。強くなったし、きれいになったよ。ほんとうに”って心の中で感心していました。
きょうは、母の日、家族そろって外出です。サッコちゃんたちと、パパとで、ママをすてきなところに案内しようってきめたのでした。
さて、サッコちゃんたちは、どこへでかけたのでしょうね。