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「カトリック20条の会」発足記念集会

2008/06/06

日本国憲法20条をご存知でしょうか?

第3章 国民の権利及び義務
第20条 信教の自由
(1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
(2)何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
(3)国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
 

20条は、基本的人権にかかわる信教の自由と、政教分離をうたっています。自民党から新憲法草案が出され日本国憲法の改憲が促されている中で、憲法9条については、「平和憲法を守ろう!」と多くの人が立ち上がりいろいろな活動が広がっていますが、20条については、まだまだ知られていない状態です。「20条を守ろう、他の人々と連帯して活動しよう、20条についてもっと多くの人に知らせよう」と、日本カトリック正義と平和協議会は、「日本カトリック正義と平和協議会 20条の部会(通称:カトリック20条の会)」を発足しました。去る5月30日(金)の夜、東京・四ツ谷のニコラバレ9階で発足記念集会が開催されました。

看板

この動きは、昨年2月の臨時司教団総会で発表された「わたしたちは基本的人権である信教の自由を保障する政教分離の原則を堅持していくことを強く訴えます」というメッセージから出発しています。翌月の3月には、社会司教委員会編から『信教の自由と政教分離』が出版されました。

会場には、カトリック日本正義と平和協議会(正平協)の担当司教の谷 大二司教(さいたま教区司教)とスタッフ、東京教区・さいたま教区・横浜教区のカトリック正義と平和協議会の担当者の他、30名ほどが集まりました。

大倉神父 会場
はじまりの祈りをする大倉神父  
 
あいさつ:谷司教 (さいたま教区)

司教団のメッセージは時間をかけて準備したものです。司教の中に一人でも反対者がいれば司教団としての発布はできません。発布できたということは、全司教賛成で発表できたものです。その動きを受けて、正平協の中の一つの部会として「カトリック20条の会」を立ち上げていくことになりました。この会には2つの目的があります。
1) 20条の大切さを訴え、理解の輪を広げる
2) 他の宗教団体と連帯して活動する
できるだけシンプルにして、いろいろな人が参加できるようにしたいと思っています。また、それぞれの人がそれぞれの立場で活動できるようサポートしたいと思います。

谷司教
谷司教

今年は、殉教者が列福されますが、400年前に2万人近い殉教者を出しました。その代表として今回列福される188人が選ばれました。当時、幕府はキリスト教と一向宗をどのように治めて中央集権化をしていこうかと考えており、キリスト教を弾圧したのです。一向宗に対しては支配するようにしていったので、一向宗は次第に宗旨が変わっていきました。

1889年に、大日本帝国憲法ができ、信仰の自由が出てきました。しかし、これは条件付きの信教の自由でした。この条件付きが多くの犠牲を生み出し、天皇崇拝と神社参拝を強いられました。これはモーゼの十戒の第二戒に触れる行為を強いられたことになりました。終戦後、ポツダム宣言が受諾され、そして日本国憲法が発布され、十全的に信教の自由が保障されるようになりました。これは、アジアの人々にとっても大きな問題でした。そして、戦争を2度しないと表明するものとなったのです。

しかし憲法20条は知名度が低く、知られていません。20条とは何かということを、もっと多くの人に知らせてもらいたいと思います。

 
木邨健三(きむら けんぞう) 東京教区正義と平和委員会

戦争という流れの中で、日本のカトリック教会がどのような状態だったのか簡単に見てみましょう。

1923年10月が、最初のできごとです。奄美大島の中学校の生徒が神社参拝を強要され、その中のカトリック信者2名が参拝を拒否したため、退学処分となりました。この2人は教会の教えに従い、退学覚悟で拒否したのですが、地方だったので、全国的に知られることはありませんでした。

木邨氏
木邨氏

1932年5月 上智大学の事件がありました。上智大学生2名が靖国参拝を拒否しました。これは軍部のでっち上げた事件ではないかと言われています。教会からの質問に対して文部省から答えが入ったのは9月で、時間差があります。文部省は神社参拝は教育上のことと答えたので、教会側は宗教的な意味はないと判断し、神社参拝を容認していきました。文部省や軍備は、カトリック教会をつぶそうとしていました。当時、カトリック教会は公認宗教ではなく非公認宗教でした。

1934年 バチカンが満州国を承認しました。満州では、儒教が国教のようなものとなっており、カトリック信者は困りました。しかし、儒教は宗教性がないということで解消されました。カトリック教会は、カトリック教会のみが宗教で、他の宗教は宗教ではないと、神社仏閣を焼き払ったので、そのことへの反発があったと思います。イエズス会は、儒教を宗教と認めていませんでしたが、パリ外国宣教会は儒教を宗教と認めていました。この問題は一世紀に渡って論争を繰り返しました。

1959年 バチカンが訓令を与えました。その国の信仰に敬意を払いなさいと。今、韓国は儒教を偶像礼拝としていますが、キリスト教会でも見解が分かれています。

1936年 バチカンが神社崇拝を認めました。バチカンから『祖国に対する信者のつとめ』が発表されました。次のような内容になっています。
イ、神社崇拝の容認
ロ、冠婚葬祭における信者の参加の容認
ハ、中国の典礼については議論をさけること

1944年 国民総決起運動がおき、カトリックとしてもこれに協力するために神社参拝をし、7月16日には必勝祈願をするよう教会から通知が出ました。戦争時はダブルスタンダードでした。

今は、ダブルスタンダードではありません。20条を守りますと宣言しました。

 
太田英雄 さいたま教区正義と平和協議会
(通称:ロバの会

20条は「宗教と政治は結びついてはいけない」という最高の規範でした。しかし、少しずつゆるんできました。官僚たちの神社参拝、玉ぐし料、地鎮祭……などの問題がありました。日本の司法制度がしっかりしていないので、憲法についてはゆるやかな解釈がなされています。

太田氏
太田氏

自民党が出した新憲法草案では、20条が大変なことになっています。3項です。

(3)国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない。

「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育……」というくだりですが、社会的儀礼、習俗的行為ならOKということになります。昔に戻そうという動きになっています。

戦争のできる国作りになっている中で、まだ、20条のことは知られていません。今まで20条についてのアンケートはとられたことがないと思います。学習する必要があります。天皇制をしっかりと勉強していく必要があります。

さいたま教区には、滞日外国人が多く、10万人ほどの信者がいます。彼らの生存権から見ても、20条について学ぶ必要があります。将来日本を作っていく多国籍、多文化の人々に対して宗教の強制があってはいけないと思います。

 
河野淳神父 横浜教区正義と平和協議会

基本的人権の尊重が一番基本になると思います。それを支えるものとして、いろいろなものがありますが、少しずつ破られていくので、守り生かすことが大切です。宗教者のために守るというだけでなく、一人ひとりの人を守るために大切にしなくてはいけません。20条が破られていくとき、宗教と関係のないところからジワジワと破られていきます。

河野神父
河野神父

殉教者のことを語るとき、狭く考えてしまう傾向があります。踏み絵を踏めるか踏めないか……というのが問題ではありません。在日の子どもたちに、君が代と日の丸を強要できないので、教職をやめたという人がいます。それをどうこうというのではなく、このような選択をしなくてはいけない社会となっていることがおかしい……とならなければいけないと思います。

銀行で新しい口座を設けるとき、団体の場合は規約を出さなくてはなりません。団体の設立年月日と所在地が明記されていないと受け付けてもらえません。「何の法律に基づいているのですか?」と質問したら、「テロ特措法」という答えが返ってきました。団体の規約の内容まで踏み込まれたとういうのが理解できませんでした。「集会・結社の自由」は法律で守られているのです。わからないところから、ジワジワと崩されていくことの一つの例だと思います。

 

谷司教からは、司教団の動きと殉教者の列福との関係から、木邨さんからは戦時中のカトリック教会から、太田さんからは今の動きと滞日外国人を視野に入れて、河野神父からは日常生活の中からと、いろいろな角度から脅かされていく20条についてのお話を伺いました。

20条は信仰者だけの問題ではなく、国民一人ひとりにかかわってくる問題です。国家の名によって、だれにでも強制される宗教的行為が含まれています。しっかりと学んでことの重大さを認識し、基本的人権が脅かされるようなことがないようにしなくてはいけません。修道院でも、なるべく早い時期に20条についての勉強会を開きたいと思いました。

 

 
  「カトリック20条の会」へ入会をご希望の方は、下記へご連絡ください。
     日本カトリック正義と平和協議会
       東京都江東区潮見医2-10-10   TEL.03-5632-4444

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