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こんなとこ行った!

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WCRP平和大学講座 「平和のために提言する世界宗教者会議」

~G8 北海道・洞爺湖サミットに向けて~

2008/07/10

7月7日(月)~9日(水)まで行われる北海道・洞爺湖サミットを前にして、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会は、7月1日~4日まで、札幌で「平和のために提言する世界宗教者平和会議~G8 北海道・洞爺湖サミットに向けて~」を開催しました。そこでは、
   ①環境と気候変動、
   ②国連ミレニアム開発目標
   ③核の軍縮:核の廃絶
   ④武力紛争とテロリズム
の4つの諸課題について検討し、その成果をG8参加国、宗教指導者および、すべての人類家族へ向けて提唱しようとしています。

妙智会館
会場となった妙智會教団妙智会館

6月16日(月)、妙智會教団妙智会館で行われた今回の平和大学講座は、「平和のために提言する世界宗教者会議」の事前学習会として、宗教者として地球的規模の諸課題、特に環境問題についてどのように受け止め、取り組むべきかの話し合いを行いました。

平和大学講座は、「平和の祈り」(黙祷)をしてからはじまりました。

 

開会あいさつ:安田暎胤

(薬師寺管主、WCRP日本委員会常務理事)

G8が行われるが、わたしたち宗教者は、そこで何が提言できるのか。いろいろなところで活動が行われている。日本の自衛隊が支援活動をすると、その国に派遣されているNGOの方々が暗殺されるという難しい関係がある。拉致された日本人を助けた方が来日されたが、帰国後暗殺されたという話を聞いた。なかなか難しい問題がある。宗教者としては、心の復興からはじまなくてはいけないと思う。基調講演、パネリストの方々の提言をいただき、日本の国から世界へ平和のメッセージを発していきたいと思う。

安田暎胤師 安田暎胤師

 

「平和のために提言する世界宗教者会議」の概要と意義について:宮本けいし

(「平和のために提言する世界宗教者会議」実行委員会、WCRP日本委員会事務総長、妙智會教団理事長)

宮本けいし師 宮本けいし師

平和のために提言する宗教者会議は、G8が取り扱う緊急課題に対して、平和構築のあり方について議論したいと思う。平成18年では、ロシアで行われたG8に対して、宗教者の立場から提言を行った。昨年は、ドイツで行われたG8で、ドイツ首相が宗教者に対して説明をしてくれた。政界やNGOの各界との方々との対話は、一昨年の京都会議でうたわれた「京都宣言」の内容を受けたものである。宗教者として積極的に平和のために働く責任を感じている。 真に平和な世界を構築するために、政界やNGOと連携している。

G8に向けての会議を開催するにあたり、宗教者としてのアプローチを試みることになる。WCRPの会議では、宗教者として現実の問題や課題を克服するために、宗教の根底にある普遍の真理を見出し、宗教の新しい安全保障の考え方、「共有される安全保障」のあり方をG8に参加する首脳たちに提示したい。

「共有される安全保障」は、他者と自己はつながっているということに基づいている。自己への脅威は他者への脅威につながっている、自己の安全は他者の安全につながっているという相互依存に関わることからの、宗教者独自の安全保障を提案したい。2日間と短いが、世界各地から来られる宗教者と、地球的規模の諸問題について、取り組むべき宗教者のあり方について議論し、平和構築のあり方を見極めていきたい。日本委員会が主催をするということに大きな意義がある。力強い協力をお願いしたい。

 

基調講演「地球環境問題と宗教(者)の役割」:住 明正

(すみ ありまさ 東京大学教授:サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)

「サステイナビリティ」の考えは大切だと思う。それについて話したい。

基調講演のタイトルに、宗教(者)の「者」を入れている。概念的に宗教は大切だが、宗教は本とかどこかにあるものではなく、現実に担っているのは「者(しゃ)」だ。サイエンスもそうだが、多くの人にとって、それを担っている人をとおして作り上げるものである。

住明正師

地球温暖化問題とは、どういうことか? この地球上で人類がどういうあり方をしたらいいのか考えることだと思う。温暖化は先の問題ではないか、目の前の大きな問題に取り組むことが大切ではないかということが、必ず出てくるが、目の前の問題を見るとき、先の問題につながるようにしたらどうかと提案したい。

昔、中国では、気候変動の影響をよく受けていた。それへの対処がよくできなければ、政権は交代していた。自然災害が多くても、政府がきちんとしていれば対応できる。自然からくる問題に、社会構造が対応できるだろうかということだ。わたしたちの社会システムの問題である。

人間とは何かを考えてみよう。人間とは生物である。生病老死から、なんとかして逃れたい。人間の体が無限に作りかえられるとしたら、それが満足だろうか。自然に結びつけられている人間が、属性によって一歩一歩やろうというのが、近代精神であると思うし、現代の科学などはそれを目ざしてきた。

人間の求める極限は、不老不死だと思う。クローンもそうだが、そこにはいろいろな倫理の問題が出てくる。人間の体が無限に作り変えられるとしたら、果たしてそれが生物が求める満足だろうか。今、そういう状態に来ていると思う。ドライビングホースをやめたとき、どこにイノベーションのがんばりがあるのだろう、ということが、今大きく戻っていることだと思う。

わたしたちが住んでいる環境は複雑である。3つの軸がある。
   ①自然:グローバル、ナチュラルなシステム、物のシステム。
   ②社会:人間は自然の中に住んでいるが、本当の自然ではない。管理された自然、
       人工づけにされた自然、社会システムの中の自然である。自然は、本来
       人間にとってとても恐いものである。
   ③人間:個人の心の中の問題、個々の幸せを抜きにして語ることはできない。
       80%の高齢者が遺産を残して亡くなっている。心配で使いきれない。その
       心配とは何か。
 社会、自然、人間という3つの柱を考えていく。

自然の力は大きい、それに対して人間は何もできない。3つの側面をバランスをもって配慮することが大切。「CO2 6%減」と言われているが、これは実は簡単にできる。弱いところを犠牲にしようと思えば、簡単にできるのだ。しかし、みんなが幸せになろうとして問題を解こうとすると大変である。一人で全部をしようというのはしんどいが、少しずつ支えるというのが、現在の社会的コンセプトとなっている。

20世紀は、爆発のときだった。戦後、ものすごいエネルギーが爆発した。「今日よりも明日は豊かになる」という右肩上がりだった。人間は成長する。成長は動きである。変化はあってもいい。しかし、物が増える、エネルギーが増えるというのが成長ではない。そういう社会をどうやっていったらいいか、その設計が問題だ。

住明正師

洞爺湖サミットがあるので、地球温暖化の問題を見てみよう。21世紀の世界を巡る覇権問題が起こる。今は、それができないということは認識している。何らかの形で、21世紀をどういう形にしようかと、覇権が探られている。

世界に通じるルール、コンセプトを出したものが勝ちである。そういう覇権闘争が今ある。ビジョンをもつ必要がある。エネルギーを削減するためにどうしたらいいか、2つのタイプを考えた。

A.活力:どらえもんの社会B.ゆとり:サツキとメイの家
都市型/個人を大切に分裂型/コミュニケーション重視
集中生産、リサイクル地産地消、必要な分の生産・消費
技術によるブレイクスルーもったいない
より便利で快適な社会を目ざす社会・文化的価値を学ぶ
GDP一人当たり2%の成長GDP一人当たり1%成長

映画「不都合な真実」でたびたび出てくるのが、ミュンヘン協定だった。まあ、いいじゃないかとやっていくと、困難なときがやってくるので、今から厳しく温暖化対策をしていこうと言っている。突如として食糧の問題が出てきている。ほとんど前から分かっているのにやらない、という日本の特長が出てきている。将来的に考えて、石油は高くなるだろう。金さえ出せば食料は買えるだろうという考えは、通らなくなる。今、日本は中国の食料を「買ってあげないよ」と言っているが、10年も経てば、中国が「売ってあげないよ」というようになる。中国の国内需要が増えていくからだ。いろいろなことを考えて手を打っておく必要がある。

今の日本の社会は、全体に苛立っている。もう少し、寛容に過ごそうよと提案したい。違いを認めるような。みんながそれぞれの価値観を認めるような精神が大切だ。

議論の時代は終わった、これからは行動の時代だと言われている。将来の気候変更を想像しながら、今の対処を考えていく必要がある。循環型社会、自然共生社会と言われている。

100年先というのは分からない、わたしたちの考えるスパンではない。30年先だったら、どうにか見るだろう。

新しいタイプのコミュニケーションになるし、新しいタイプのコミュニティーを作ることが大事になるだろう。また寛容な社会。寛容で違いをゆるす社会の中で合意を得るような智恵がいるのだろうと思う。たぶん、ここに宗教が関係してくると思う。宗教というとき、宗教の本があっても分からない。その宗教を生きている人がいて、その宗教が分かってくる。人間が肉声で話すことが、本を読むよりも非常に多くのことが分かるのだと思う。人間が言葉で話すことによって、伝わっていく。

最後は、だれかにすがるのではなく、自分で判断することだと思う。そのためには、現在の状況を理解することが必要だ。


文頭の飾り次回は、パネルディスカッションについて、ご紹介します。

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