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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2008年2月2日


雪

教皇ベネディクト16世は、使徒パウロの生誕およそ2000年を記念して、今年の6月28日から来年の6月29日までの一年間を、「聖パウロ年」とすることを制定されました。2008年の『アレオパゴスの祈り』では、12月まで、毎月、教会の偉大な聖人である、聖パウロをテーマとし、彼の手紙を読み、彼とともに祈っていきたいと思います。

みなさまは、今年の新年を迎えられたとき、神さまにどのような願いをされたでしょうか。各自それぞれの意向をもって、今年はじめての「アレオパゴスの祈り」の中でローソクをささげましょう。また、各自の願いとともに、次の意向をも捧げたいと思います。今、地球温暖化の深刻な問題に直面しているわたしたちが、世界の人々と連帯して、温室効果ガスの削減を目指し、温暖化防止に向けた具体的な取り組みに努力していくことができますように。それでは、後ろでローソクを受け取り、祭壇の上の祈りのハガキをお取りになって席にお戻りください。

先月の1月25日、カトリック教会は、聖パウロの回心の祝日を祝いました。この祝日は、キリストの弟子たちを迫害していたパウロが、ダマスコに向かう途中、復活したキリストに出会い、一瞬にして迫害者から信仰者に変わってしまうという神秘的な体験を記念しています。この出来事をきっかけに、彼の人生は、180度転換し、キリストの忠実な僕とて、キリストのために命を捧げる勇敢な使徒となりました。今晩は、神さまが直接に彼を呼び、キリスト者としてパウロを誕生させてくださった、ダマスコでの出来事をご一緒に味わっていきましょう。

新約聖書の中の「使徒たちの宣教」を聞きましょう。(使徒9章1~22節) (この聖書の箇所で、パウロのことをサウロまたはサウルと言っていますが、これはヘブライ語での呼び名で、パウロはローマ市民としての呼び名です。)

その日、サウロはなおも主の弟子たちを脅迫し、殺そうと意気込んで、大祭司のところへ行き、ダマスコの諸会堂あての手紙を求めた。"それは、この道に従う者を見つけ出したら、男女を問わず縛り上げ、エルサレムに連行するためであった。ところが、サウロが旅をしてダマスコに近づいたとき、突然、天からの光が彼の周りを照らした。サウロは地に倒れ、「サウル、サウル、なぜわたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。「主よ、あなたはどなたですか」と言うと、答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。起きて町に入れ。そうすれば、あなたのなすべきことが知らされる。」同行していた人たちは、声は聞こえても、だれの姿も見えないので、ものも言えず立っていた。サウロは地面から起きあがって、目を開けたが、何も見えなかった。人々は彼の手を引いてダマスコに連れて行った。サウロは三日間、目が見えず、食べも飲みもしなかった。

 ところで、ダマスコにアナニアという弟子がいた。幻の中で主が「アナニア」と呼びかけるとアナニアは、「主よ、ここにおります」と言った。すると主は言われた。「立って、『直線通り』」と呼ばれる通りへ行き、ユダの家にいるサウロという名の、タルソス出身のものを訪ねよ。今、彼は祈っている。アナニアという人が入って来て自分の上に手を置き、元どおりに目が見えるようにしてくれるのを幻で見たのだ。」しかし、アナニアは答えた。「主よ、わたしは、その人がエルサレムで、あなたの聖なる者たちに対してどんな悪事を働いたか、大勢の人から聞きました。ここでも、御名を呼び求める人をすべて捕らえるため、祭司長たちから権限を受けています。」すると主は言われた。「行け。あの者は、異邦人や王たち、またイスラエルの子らにわたしの名を伝えるために、わたしが選んだ器である。わたしの名のためにどんなに苦しまなければならないかをわたしは彼に示そう。」そこで、アナニアは出かけて行ってユダの家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウル、あなたがここへ来る途中に現れてくださった主イエスは、あなたが元どおり目が見えるようになり、また、聖霊で満たされるようにと、わたしをお遣わしになったのです。」すると、たちまち目からうろこのようなものが落ち、サウロは元どおり見えるようになった。そこで、身を起こして洗礼を受け、食事をして元気を取り戻した。

 サウロは数日の間、ダマスコの弟子たちと一緒にいて、すぐあちこちの会堂で、「この人こそ神の子である」とイエスのことを宣べ伝えた。これを聞いた人々は皆、非常に驚いて言った。「あれは、エルサレムでこの名を呼び求める者たちを滅ぼしていた男ではないか。また、ここへやって来たのも、彼らを縛り上げ、祭司長たちのところへ連行するためではなかったか。」しかしサウロは、ますます力を得て、イエスがメシアであることを論証し、ダマスコに住んでいるユダヤ人をうろたえさせた。

(沈黙)

『カトリック典礼聖歌集』No.19 「きょう神の声をきくなら」①②

パウロは、ユダヤの伝統に最も忠実なベニヤミン族の出身であり、律法を厳しく守る熱心なファリサイ派のユダヤ教徒でした。若くしてエルサレムにのぼり偉大な律法学者ガマリエルのもとで、先祖伝来の律法について学びました。

パウロは、口伝えに伝承される「伝承律法」と、いまだに遵守されているモーゼの戒律から来る掟も学びました。これは、たとえば、どのような器で、どのような水で、一日何回手を洗うのか、どのように乾かすのかというような細かい日常生活に関したものも含まれています。聖典の解釈や学習にも熱心に勉強し、自ら、律法の義については落ち度のない者であると自信をもって語っていたほどでした。

聖パウロ

不思議なことに、パウロは、生前のイエスと一度も出会ったことがありませんでした。パウロにとって、同じユダヤ人でありながら、イエスをメシアと認めることは、神への冒涜、到底許すことができないことでした。聖書には、彼について、「エルサレムにおいて激しくキリスト教徒を迫害し、家々に押し入って、男や女を引きずり出し、次々に投獄して、教会を荒らし回った」と書かれています。やがて、彼は、エルサレムだけでなく、活動範囲を広げ、ますます激しい怒りに燃えて、キリスト教徒を見つけ次第、エルサレムに連行するために、ダマスコの諸会堂にあてて、キリスト教徒の逮捕令状を求めていきました。

ところが、パウロの上に劇的な出来事が起こります。先ほど読んだ聖書の箇所が伝えたとおり、突然、イエスが、パウロに迫り、天から彼に呼びかけます。
  「サウル、サウル、なぜわたしを迫害するのか」、
  「あなたはどなたですか」
  「わたしは、あなたが迫害しているイエスである」

パウロは、自分が迫害しているのは、キリスト教徒であって、イエスではないのに、イエスは、「なぜわたしを迫害するのか」と言われる。パウロは、キリスト教徒の中にイエスがおられることを即座に理解します。その後視力を失ったパウロは、神が遣わされたダマスコのキリスト教指導者のアナニアの導きによって、再び見えるようになり、洗礼を受けました。ここにキリスト者パウロが誕生しました。自分の信念をすぐに実行に移す人であったパウロは、イエスこそ神の子であることを、ダマスコに住むユダヤ人に熱心に説きはじめました。

2世紀の言い伝えによれば、パウロの身体は貧弱で、ずんぐりしていて、脚が曲がっており、はげ頭でかぎ鼻で、そのうえ、てんかん持ちだったと言われています。肉体的には弱かったパウロでしたが、イエスの力を受けて、どんな障害も乗り越えていく強い精神力の持ち主として活動し、命を賭けて生涯をイエスのために捧げました。

「栄光から栄光へ」①②

「聖パウロに向かう祈り」をご一緒に唱えましょう。

師イエス、 聖パウロを、恐るべき迫害者から、
教会の熱誠あふれる使徒に変えてくださったあなたの深いあわれみをたたえます。
偉大な聖人使徒パウロ、
恵みに対する温順な心、主欠点からの回心、
イエス・キリストへの変容を、わたしのために求めてください。

使徒聖パウロ、わたしたちのために祈ってください。
 

聖パウロのことばより (テサロニケの信徒への手紙2 5.16~21)

いつも喜んでいなさい。 絶えず祈りなさい。 どんなことにも感謝しなさい。 これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。 “霊”の火を消してはいけません。 預言を軽んじてはいけません。 すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。
 

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。


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