アレオパゴスの祈り
アレオパゴスの祈り 2008年6月7日
教皇ベネディクト16世は、使徒パウロの生誕およそ2000年を記念して、今年の6月28日から来年の6月29日までの一年間を、「聖パウロの年」と制定されました。パウロは、ペトロとならんでキリスト教会の二本柱と呼ばれています。今年の『アレオパゴスの祈り』では、毎月、教会の偉大な聖人である、パウロをテーマとし、彼の手紙を読み、彼とともに祈る歩みを続けています。
今月の終わりにはいよいよ「聖パウロの年」が始まります。今晩の『アレオパゴスの祈り』では、神がパウロを"異邦人の使徒"に召されたことをご一緒に見ていきたいと思います。
各自の意向とともに、中国・四川省で起きた大地震、またミャンマーのサイクロンによって、無念のうちに亡くなった多くの人々、被害を受け不自由な生活の中、現実と戦って必死に生きておられるたくさんの人々のために、神のあわれみを求めて祈りましょう。後ろでローソクを受け取り、祭壇に捧げましょう。祈りのハガキをお取りになって席にお戻りください。
新約聖書の『使徒たちの宣教』の中に、パウロが異邦人に福音をもたらすようになったいきさつが書かれています。その箇所を聞きましょう。
使徒たちの宣教 13.42~49
パウロとバルナバが会堂を出るとき、人々は次の安息日にも同じことを話してくれるようにと頼んだ。集会が終わってからも、多くのユダヤ人と神をあがめる改宗者とがついて来たので、二人は彼らと語り合い、神の恵みの下に生き続けるように勧めた。
次の安息日になると、ほとんど町中の人が主の言葉を聞こうとして集まって来た。しかし、ユダヤ人はこの群衆を見てひどくねたみ、口汚くののしって、パウロの話すことに反対した。そこで、パウロとバルナバは勇敢に語った。「神の言葉は、まずあなたがたに語られるはずでした。だがあなたがたはそれを拒み、自分自身を永遠の命を得るに値しない者にしている。見なさい、わたしたちは異邦人の方に行く。主はわたしたちにこう命じておられるからです。『わたしは、あなたを異邦人の光と定めた、あなたが、地の果てにまでも 救いをもたらすために。』」
異邦人たちはこれを聞いて喜び、主の言葉を賛美した。そして、永遠の命を得るように定められている人は皆、信仰に入った。こうして、主の言葉はその地方全体に広まった。
キリスト教が今日のように全世界に広められたのは、全身をささげ、命を賭けてこれを広めて歩いた、多くの使徒の犠牲によるものでした。パウロは、その使徒たちの中で最も偉大なものの一人です。彼はイエスの福音がイスラエル民族のものだけでなく、それ以外の文化を持つ人々のものでもあることをのべ伝えるために、小アジア、ギリシア、ローマ、コリント、アテネを歩いてまわりました。さまざまなユダヤ教的習慣を廃して異教徒が改宗しやすくしたり、教義をわかりやすく解釈・解説し、イスラエル以外の新しい地の人々に伝道したことから、パウロは「異邦人の使徒」と呼ばれています。
また、イエス・キリストに対する信頼のあり方を思想的に深め、豊かにして、キリスト教を真に全人類の宗教として確立しました。新約聖書の中にある、彼の書いた手紙は、彼が設立した教会にあてて書いたものです。
さて、今読まれた使徒たちの宣教の中で語られているように、ユダヤ人たちは、おびただしい群衆を見てねたみにかられます。つい最近来たばりのあのふたりが、彼ら以上に求道者を作るのを見て、反ばくし、パウロとバルナバは説教を続けることができなくなりました。ついにパウロは、憤り、責任者に向かって「神のみ言葉は、まずあなたがたに語られるべきだったが、あなたがたはこれを退けて、自ら永遠の命に入るに足りないものとなった。見よ、わたしたちは異邦人のもとに向かう」と叫びました。パウロにとって、自分の真の使命がユダヤ人にではなく異邦人に宣教することであると知るためには、今こそ神が彼に証拠を与えてくださることになりました。
パウロはかなりの月日をピシディアのアンチオキアにとどまって、異邦人の宣教に成功しました。しかし、ユダヤ人のかしらたちは、ますますねたみを深くして、とうとうパウロとバルナバを迫害しその地から追い出してしまいました。二人は、聖なる師の勧めに従って、「はきもののちりを払い」またほかの地を目指して歩き続けました。
その後、パウロは3回の伝道旅行に出かけ、さらにはローマへ福音を伝えました。彼は、十二使徒ではありませんでしたが、十二使徒を凌ぐほどの働きをしました。ローマでは、二年間監視つきの生活をしたと言われています。日夜、番兵はついているけれども比較的ゆるやかにあつかわれ、一軒の家を借りて住むことが許されました。パウロは、この二年間、自分から宣教に出かけていくことができませんでしたが、訪ねて来る人をだれでも喜んで受け入れ、精力的に宣教活動を行いました。ローマ人のなかにも、しだいにキリスト信者が増えていきました。
(沈黙)
“異邦人の使徒”と呼ばれたパウロは、この二年間に、獄中書簡と呼ばれている「エフェソの信徒への手紙」、「フィリピの信徒への手紙」、「コロサイの信徒への手紙」、「フィレモンへの手紙」を書き残しています。これらの手紙は、パウロ自身の手によるものばかりでないという説もありますが、いずれにしても、パウロの教会への温かい慰めと励ましに満ち溢れている手紙として知られています。
(沈黙)
さらに、パウロは、コリントでもユダヤ人に反抗され、ののしられ続けられたので、異邦人への伝道に向かいました。コリントの異邦人は、パウロの話を聞いて信仰に入り、多くの人々が洗礼を受けました。すべての人々の救いのために働いた、パウロの心を表しているコリントの信徒への手紙を聞きましょう。
わたしは、だれに対しても自由な者ですがすべての人の奴隷になりました。できるだけ多くの人を得るためです。ユダヤ人に対しては、ユダヤ人のようになりました。ユダヤ人を得るためです。律法に支配されている人に対しては、わたし自身はそうではないのですが、律法に支配されている人のようになりました。律法に支配されている人を得るためです。また、わたしは神の律法に従っているのですが、律法を持たない人に対しては、律法を持たない人のようになりました。律法を持たない人を得るためです。弱い人に対しては、弱い人のようになりました。弱い人を得るためです。すべての人に対してすべてとなりました。何とかして何人かでも救うためです。福音のためなら、わたしはどんなことでもします。それは、わたしが福音に共にあずかる者となるためです。
(コリントの信徒への手紙 1 9.19~23)
しばらく個人的に祈りましょう。
すべてのキリスト信者の一致と和解のために身を捧げたパウロの生誕2000年を祝うにあたって、パウロがキリストの神秘的な体に属しているわたしたちを完全な一致へと導いてくださいますように祈りましょう。
「使徒パウロに向かう祈り」(『パウロ家族の祈り』より)
尊い使徒よ、
あなたは、み教えと愛によって、
全世界を導いてくださいました。
あなたの子であり弟子であるわたしたちの上に
いつくしみの目を注いでください。
師イエスと、使徒の女王マリアのもとにささげられる
あなたの取り次ぎによって、すべてが得られることを期待します。
諸国民の教師よ、
わたしたちが信仰によって生き、希望によって救われ、
愛によって動かされますように。
選びの器よ、
神の恵みがわたしたちの中で空しくならないため、
温順にこたえることができるようにしてください。
わたしたちが、常にいっそうよくあなたを知り、愛し、
あなたに倣うことができますように。
わたしたちを、イエス・キリストの神秘体である教会の
生きた一員としてください。
多くの聖なる使徒を興してください。
世界が真の愛の息吹につつまれますように。
すべての人が、神であり、道・真理・いのちである師イエスを知り、
栄光をたたえることができますように。
主イエス、
あなたは、わたしたちが自分の力に頼らないことを知っておられます。
あわれみによって、師父パウロの力強い祈りを聞き入れ、
あらゆる困難の時に、わたしたちを守ってください。
「栄光から栄光へ」① ②
教皇ベネディクト16世は、宣言の中で、「パウロの使徒職の成功は何よりも、彼がキリストに完全に献身しながら自ら福音の告知に努めたことによります。この献身は、危険も困難も迫害も恐れませんでした」と語っています。殉教による死も恐れずに福音をのべ伝え、キリストに仕えたパウロについて思い起こす一年となりますように。
これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。
「アレオパゴスの祈り 年間スケジュールと祈りの紹介」に戻る