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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2008年クリスマス


ご降誕

 

今年も、救い主キリストの誕生を祝うクリスマスを迎えようとしています。

「光は暗闇の中で輝いている」と新約聖書のヨハネ福音書の初めに語られています。光は闇の中にこそ輝きだします。人間はだれでも、心の中に闇を抱いているものです。言葉や行いによって人を傷つけてしまった悔い、挫折感や孤独感など、心の闇は暗くて、重たくて、悲しいものです。しかし、この闇が深ければ深いほど、「まことの光」はその人の心に輝きを増します。

この一年の間に迷ったこと、悩んだこと、疲れ果てたこと、争ったこと、もうだめだと絶望したことなど、神さまはすべてを知っておられます。今夜、神さまは、私たちをここへ呼び集めてくださいました。

混沌とした現代世界に生きる一人ひとりの心の奥に、今年もクリスマスの「まことの光」が輝きますようにご一緒に祈りながら、一足早い主のご降誕を祝いましょう。ローソクはお祈りの最後にささげます。

旧約聖書のイザヤの預言を聞きましょう。

闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。
ひとりのみどりごが、わたしたちのために生まれた。
ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。
権威が彼の肩にある。その名は、「驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君」と唱えられる。
  (イザヤ 9.1~2、5)

『祈りの歌を風にのせ』p.46 「ひとりのみどりごが」

新約聖書のルカによる福音書が伝えるイエスの誕生の物語を聞きましょう。

そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。

その地方で羊飼いたちが野宿しながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」すると突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言った。
「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ。」天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さぁ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。
  (ルカ 2.1~17)

ルカ福音書は歴史家のように皇帝や総督のことを述べていますが、同時にこれは、当時の世界で圧倒的な力を持っていたローマ帝国の支配地域の片隅に生まれたこの幼子こそが、実は「すべての人のメシア(王)である」という対比を印象づけようとしています。紀元前63年ローマのポンペイウス将軍がパレスチナを占領して以来、ユダヤ、サマリア、ガリラヤなどの地方はローマの植民地になっていました。ローマはヘロデ王家を立て、ユダヤ人の宗教的な自由を認めつつも植民地の住民に税金をかけることによって利益を得ていました。この税を徴収するために行なわれたのが「住民登録」でした。身重のマリアを連れたヨセフは、このローマ皇帝という支配者に振り回され、苦しい旅を強いられたのです。

このような状況の中、貧しく無力な人々に近づくために、イエスは小さな幼子の姿で世に来られました。そして、羊飼いたちに、救い主の誕生の知らせが真っ先に届けられました。彼らに示されたしるしは、「布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」というものでした。きょうの読まれた聖書の箇所を特徴づける「貧しさ」は、「貧しい人は、幸いである。神の国はあなたがたのものである」という福音のメッセージにつながっていると言えるでしょう。

救い主が誕生しても、この人々の現実が変わるわけではありません。しかし、マリアとヨセフと羊飼いたちは、この幼子の中に神の救いの約束を見て、喜びに満たされました。わたしたちはこの幼子の中にどんな喜びを見つけることができるでしょうか。

それでは、ここで、クリスマスの夜に起こった心温まるお話を聞きましょう。

クリスマスの贈り物

ジュリアは財布の中身をかぞえました。二ポンドと少し。これでは大したものは買えそうにもありません。クリスマス・イヴだというのに。こんなわずかなお金で夫のジムの喜びそうなプレゼントを買おうなんでお話にもなりません。 ジュリアはソファーの上に身をまるめて泣きました。しばらくして立ち上がり、髪をなでつけると涙にぬれた顔をぬぐいました。そして思いついたのです。
貧しい部屋に自慢できるものがあるとしたら、二つだけ。一つはジムの金時計、一つは美しく波打っているジュリアの長い髪でした。

「どうしたらいいか、わかったわ。この髪を売ろう。そうすればジムにプレゼントが買えるわ。」
こう思いつくとすぐ、髪を買ってくれる店が見つかり、五十ポンドというお金が手に入りました。美しい髪と引き換えのその五十ポンドをポケットに、ジュリアは近くの宝石店に行き、ジムの金時計につける見事なバンドを買いました。「これでようやくジムはあの時計を腕にはめることができるわ。」それまではジムは金時計をしまったままだったのです。古びた、みすぼらしいバンドしかついていなかったものですから。

夕方近く、ジムが帰ってきました。妻の短い髪を見て、ジムの顔はさっと青ざめました。ジュリアは両の腕を夫の首に投げかけて言いました。「どってことないわ、じきに伸びると思うし。それにこの新しいヘアスタイル、あたし、けっこう気に入ってるのよ。」

一瞬、ジュリアはジムが泣きだすのではないかと思いました。ジムは小さな箱を彼女に渡しました。「クリスマスおめでとう、ジュリア。でもこのプレゼントは役に立ててもらいそうにないね。」
その箱の中には、美しい純金の髪留めが入っていました。あの宝石店のウィンドーに飾られていたその髪留めを、ジュリアは何度も足を止めて眺めたものだったのです。それはジュリアの長い輝かしい髪にぴったりの髪留めでした。でも今は・・・・。

「何てすてきなプレゼントでしょう。でもこんなぜいたくなもの、ジム、あなた、どうして・・・・・?」
「きみがとてもほしがっていたのを知っていたからね、それであの時計を質に入れたんだよ。あんなしけたバンドがついているんじゃあ、どうせ、当分ははめそうにないからね。」

ジュリアはジムにプレゼントの小箱を渡しました。何が出てくるのかと楽しみを先のばしするように、ジムは小箱をゆっくり開けました。見事な新しい時計のバンドを手に、ジムは妻の目を見つめて微笑みました。

「二つのすばらしいプレゼント。どっちもあまりに貴重で、すぐ使うのはもったいないってことなんだろうね。ちゃんと楽しめるようになるまで、二つとも大切に取っておこう。それまでは、この世の最高のプレゼントを楽しもうじゃないか。神さまの愛というプレゼントをね。」
  『深い知恵の話』(女子パウロ会)
 

救い主の誕生を祝い、わたしたちの心にかかるすべての人のことを携えて、ローソクをささげましょう。年の暮れを迎えた今、景気が後退し、企業の派遣社員や大学生の就職環境が急速に悪化し、突然"解雇通告"を受ける派遣社員が毎日のように急増しています。内定を取り消された大学生や高校生など、今後さらに増えていくと言われています。弱い立場に立たされ闇の中に放りこまれ、途方にくれている多くの人々が、この辛く厳しいときを忍耐強く乗り越えていくことができますように祈りましょう。

後ろでローソクを受け取り、馬小屋の前の机の上にローソクを置いて、かごの中のクリスマスハガキをお取りください。ローソクを全員がささげ終わったら、幼子イエスさまを囲んで賛美の歌を歌いましょう。

『カトリック聖歌集』No.111 「しずけき」

結びの祈り:
 聖なる父よ、あなたはこの神聖な夜を、まことの光キリストによって照らしてくださいました。やみに輝く光を見たわたしたちが、その喜びを永遠に歌うことができますように。
主イエス・キリストによって。アーメン

『カトリック聖歌集』No.654 「もろびとこぞりて」①⑤

これで今晩のアレオパゴスの祈りを終わります。

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