アレオパゴスの祈り
アレオパゴスの祈り 2010年9月4日
神はあなたを救い出してくださる。仕掛けられた罠から、陥れる言葉から。
神は羽をもってあなたを覆い、翼の下にかばってくださる。
神のまことは大盾、小盾。
夜、脅かすものをも 昼、飛んでくる矢をも、恐れることはない。・・・・
主はあなたのために、御使いに命じてあなたの道のどこにおいても守らせてくださる。
彼らはあなたをその手にのせて運び、足が石に当たらないように守る。
(詩編91.3~5、11~12)
9月に入り、夏の暑さもやわらぎ、秋の虫の声が聞こえるようになりました。
今晩の「アレオパゴスの祈り」は、9月29日に祝う、三大天使と言われている天使について、取り上げたいと思います。カトリック教会は、聖書に基づいて、神が天使と呼ばれる純粋な霊を造られたことを信じています。聖書の中に登場する天使たちは、神の使いとして大切な役割を果たしています。
天使たちは、実際に目に見えない霊的な存在ですから、普通、わたしたちには、想像しにくく、イメージが描きにくいかもしれません。しかし、目に見えないところで、守護の天使たちが、いつも人間を危険から守り、わたしたちの良心の声を通して善への道へ、導いてくださっていることを感じることがあるのも事実です。いつもは、あまり意識していない守護の天使たちに心を向けて、感謝の心をもって彼らとともに祈りましょう。
祭壇にローソクをささげましょう。祭壇上のハガキをお取りになって席へお戻りください。
聖書の中に、天使が登場している場面が、しばしば見られます。その中でも、三大天使と呼ばれている、ミカエル、ガブリエル、ラファエルという名前を持った天使はよく知られています。天使の名前には、ミカエル、ガブリエル、ラファエルと、語尾に"エル(el)"のつくものが多くみられます。これはヘブライ語で「神」を指す言葉です。ミカエルは、"神に似たもの" ガブリエルは、"神の力"ラファエルは、"神は癒す"という意味を表しています。カトリック教会では、これらの天使たちを9月29日に祝っています。それでは、それぞれの天使について見ていきたいと思います。
最初に天使ミカエルです。ミカエルは、知力だけでなく武勇にも優れていて様々な活躍が語り伝えられています。旧約聖書の中の「ダニエル書」の中で、ミカエルは、イスラエルの守護の天使として登場しています。また、新約聖書の「ヨハネの黙示録」では、「天に戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが勝てなかった。そしてもはや天には彼らの居場所がなくなった」(黙示録12:7-8)と書いてあります。ミカエルは、サタンとか悪魔と呼ばれるこの竜を退治しました。
このようにミカエルは悪の力から守ってくれる天使としてカトリック教徒の間で広く崇敬されるようになりました。中世においてミカエルは兵士の守護者となりました。
大天使ミカエル、悪との戦いにおいて
わたしたちを守ってください。
彼は神の使いとして天と地を往復するとされていたので、ミカエルにささげられた聖堂の多くが岩山や山頂などに建てられました。フランスでミカエルのお告げから創設されたモン・サン・ミッシェルは、その代表的なものです。モン・サン・ミッシェルはイギリスとフランスの狭間にあり、百年戦争では重要な拠点でした。フランスがイギリスとの長い戦乱を乗り切ると、守護者としてミカエルにささげられたこの教会には、国内外から多くの巡礼者が訪れました。
また、窮地に陥ったフランスを救ったジャンヌ・ダルクも歴史的に有名です。彼女の英雄的行動も大天使ミカエルのお告げによるものとされています。ヨーロッパを中心に各地にミカエルにささげられた多くの聖堂や教会が建てられ、大天使の像が飾られました。守護者としてのイメージから「鞘(さや)から抜かれた剣」がミカエルのシンボルとして定着し、ルネサンス期以降のミカエルの絵画や像の多くは、燃える剣を手にした姿で表現されています。
そして今、ミカエルは、警官や救急隊員の守護の聖人とされ、ドイツおよびウクライナでは国の守護聖人とされています。
日本に初めてキリスト教を伝えたイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルは、1549年8月15日、鹿児島に上陸しました。いろいろな準備をととのえて、薩摩藩主の嶋津公に布教の許可を得た日がちょうど9月29日、大天使ミカエルの祝日だったことから、ザビエルは、ミカエルを日本の守護者と定め、彼の取り次ぎを祈りながら布教を始めました。のちにフランシスコ・ザビエル自身が日本の守護の聖人となっています。
この世の悪との戦いにおいて、大天使ミカエルがわたしたちを守ってくださるように祈りましょう。9月に入り、夏の暑さもやわらぎ、秋の虫の声が聞こえるようになりました。
今晩の「アレオパゴスの祈り」は、9月29日に祝う、三大天使と言われている天使について、取り上げたいと思います。カトリック教会は、聖書に基づいて、神が天使と呼ばれる純粋な霊を造られたことを信じています。聖書の中に登場する天使たちは、神の使いとして大切な役割を果たしています。
天使たちは、実際に目に見えない霊的な存在ですから、普通、わたしたちには、想像しにくく、イメージが描きにくいかもしれません。しかし、目に見えないところで、守護の天使たちが、いつも人間を危険から守り、わたしたちの良心の声を通して善への道へ、導いてくださっていることを感じることがあるのも事実です。いつもは、あまり意識していない守護の天使たちに心を向けて、感謝の心をもって彼らとともに祈りましょう。
『パウロ家族の祈り』p.199「守護の天使に向かう祈り」③
わたしの守り手、神のみ使いよ、
忠実で力強いあなたは、天において聖ミカエルに率いられ、
サタンとこれに従うものに打ち勝たれました。
かつて天で行われた戦いは、今も地上で続けられ、
悪の頭とこれに従うものはイエスにはむかい、
人びとを悪に陥れようとしています。
サタンの国と戦う神の国、教会のために、
汚れない使徒の女王マリアに祈ってください。
大天使ミカエル、戦いの時にわたしたちを守り、
悪魔の狡猾なはかりごとに打ち勝つ力となってください。
人びとを滅ぼそうと世にはびこるサタンと悪霊を、
神の力によって地獄に封じてください。
わたしを守る神のみ使いよ、
主のあわれみによってあなたにゆだねられたわたしを、
照らし、守り、支え、導いてください。
次に天使ラファエルを見てみましょう。彼は、旧約聖書の「トビト記」に登場し、人間の姿をとって現れています。長い物語なので、簡単に要約してご紹介しましょう。
この物語は、アッシリアという国がイスラエル王国の人々を捕虜として引いていった紀元前680年ころのお話です。アッシリアの都ニネベという町にトビトという人が、妻と一人息子のトビアと一緒に捕らわれていました。トビトは、善良な人で、多くの慈善の業を行っている信仰深い心の真っ直ぐな人でした。神さまの戒めを何一つおろそかにせず、特に貧しい人たちに施しをするのを何よりも大切な務めとして考えていました。しかし、トビトは、盲目となってしまいました。彼の息子トビアは、盲目となった父の頼みでメディア地方に使いに出ることになり、その道案内としてトビトの同族だというアザリアという若者が同行しました。実は、この若者が、天使ラファエルだったのです。
ラファエルは、トビトの息子のトビアの旅の道連れとして、あらゆる危険からトビアを守りました。アスモデウスという悪魔に取り憑かれていた、サラという娘から悪魔を追い出し、トビアとのよい結婚に導きました。また、ラファエルは、目の見えなくなった父トビトの目を治しました。こうしてラファエルは癒しと悪魔払いをしたことから、旅の安全の天使とも呼ばれるようになります。ラファエルは、旅人、薬関係、パイロットの保護者として尊敬され、キリスト教宗教芸術や絵画で杖と水を持った旅人の姿で描かれています。
天使ガブリエルは、ミカエルと同じく、旧約聖書の「ダニエル書」に現れ、神のメッセージを預言者ダニエルに伝えています。また新約聖書の「ルカによる福音書」の中に書かれているように、祭司ザカリアのもとに現れて洗礼者ヨハネの誕生を告げる使命を、さらにマリアのもとに現れ、救い主イエス・キリストの誕生を告げます。この二つの場面の、聖書の朗読を聞きましょう。
ルカ福音書 1.5~20、24~25
ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた。その妻はアロン家の娘の一人で、名をエリサベトといった。二人とも神の前に正しい人で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがなかった。しかし、エリサベトは不妊の女だったので、彼らには、子供がなく、二人とも既に年をとっていた。
さて、ザカリアは自分の組が当番で、神の御前で祭司の務めをしていたとき、祭司職のしきたりによってくじを引いたところ、主の聖所に入って香をたくことになった。香をたいている間、大勢の民衆が皆外で祈っていた。すると、主の天使が現れ、香壇の右に立った。ザカリアはそれを見て不安になり、恐怖の念に襲われた。
天使は言った。「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。その子はあなたにとって喜びとなり、楽しみとなる。多くの人もその誕生を喜ぶ。彼は主の御前に偉大な人になり、ぶどう酒や強い酒を飲まず、既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて、イスラエルの多くの子らをその神である主のもとに立ち帰らせる。彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に正しい人の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」
そこで、ザカリアは天使に言った。「何によって、わたしはそれを知ることができるのでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています。」天使は答えた。「わたしはガブリエル、神の前に立つ者。あなたに話しかけて、この喜ばしい知らせを伝えるために遣わされたのである。あなたは口が利けなくなり、この事の起こる日まで話すことができなくなる。時が来れば実現するわたしの言葉を信じなかったからである。」
その後、妻エリサベトは身ごもって、五か月の間身を隠していた。そして、こう言った。「主は今こそ、こうして、わたしに目を留め、人々の間からわたしの恥を取り去ってくださいました。
(沈黙)
ルカ福音書 1.26~38
六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。そのおとめの名はマリアといった。
天使は、彼女のところに来て言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」
マリアは天使に言った。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない。」
マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。
ガブリエルはキリスト教の伝統の中で「神のメッセンジャー」という役割を担っています。ガブリエルがマリアを訪れてイエスの誕生を告げた出来事は「神のお告げ」また、「受胎告知」と言われ、カトリック教会では3月25日に祝われています。この場面にたくさんの画家たちは、天使に、聖母マリアの純潔を表す、白百合を持たせています。
百合の花を持つ大天使ガブリエルとマリア
ガブリエルは、神のみ言葉を運ぶ者として、通信や報道などの仕事をする人々の守護者になっています。ガブリエルの取り次ぎによって、わたしたちも、神さまの道を人々に示していけるように祈りましょう。
『パウロ家族の祈り』p.290 「視聴覚メディアの保護者大天使ガブリエルへの祈り」
天の父よ、御子の受肉と人類の贖いを告げるために、
大天使ガブリエルを選ばれたことを感謝します。
マリアは信仰をもってお告げを受け、御子は人となり、
十字架上で亡くなられ、すべての人を贖ってくださいました。
多くの人びとは救いのメッセージを受けていません。
視聴覚メディアの保護者ガブリエル、
教会がこの強力なメディアをもって、
神の真理を告げ、神の道を示すことができるよう、
師イエスに願ってください。
賜物であるこのメディアが、すべての人の向上と救いに役立ち、
決して誤りと堕落のために利用されることがありませんように。
すべての人がイエス・キリストのメッセージを
温順に受け入れますように。
大天使ガブリエル、わたしたちのため、また視聴覚メディアを用いる
使徒職のために祈ってください。アーメン。
最後に、一つのエピソードをご紹介しましょう。
コロンビアのある教会の主任神父様が体験したことです。ある晩遅くまで仕事をして神父様はくたくたに疲れていました。さてベッドに入ろうとしてスータンを脱ぎかけたところ、玄関のドアをノックするのが聞こえました。それでドアを開けると、月夜で、一人の小柄な農夫らしい人が立っているのが見えました。
「神父様、わたしが家に帰る途中、川のそばを通りかかったところ、草の茂みから苦しそうに助けを求める人の声が聞こえました。その人は怪我をしていて動けません。『急いで神父様を呼んで、ゆるしを授けてください』と、繰り返しています。わたしが案内しますから、すぐにそこへ行ってください」と熱心に頼みました。
神父様はすぐに彼に案内されてそこへ駆けつけました。確かに、草の茂みに倒れている人は息たえだえです。そして神父様がゆるしの秘跡を与えるとすぐ、息を引きとりました。神父様はこのことを警察に知らせなければ、と思って立ち上がろうとしたとき、案内をしてくれたあの男の人はそこにはおりませんでした。
さて、警察官を案内して再びそこへ戻って、亡くなった人の顔をよく見ると、驚いたことに、案内をしてくれたあの人だったのです。そのとき神父様は、「彼の守護の天使が、わたしをここに導いてくれのだ」と思ったそうです。
わたしたちには目に見えませんが、地上の世界と天上の世界は強いきずなで結ばれていることがわかります。天使たちは神の使いとして神のお望みを人に伝え、人がそれを行えるように仲介の役目をしています。特に人間が普通に考えることとは違う次元のことであれば、そのことを間違いなく伝えるために天使が遣わされています。そして事が成し遂げられるときには、もはやそこにはいなくなります。自分の務めを終えるとその栄誉を自分に帰すことなく姿を消して去ってしまいます。
祈りましょう。
天の父よ、あなたはわたしたち一人ひとりを照らし、守り、導くよう守護の天使を遣わしてくださいました。
わたしたちを見守るみ使いたちよ、あなたたちに感謝します。わたしたちが天の父のもとに帰る日まで絶えず旅路をともにしてください。あらゆる危険から守り、確かな希望を与えてください。
これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。
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