アレオパゴスの祈り
アレオパゴスの祈り 2011年8月6日
わたしは神が宣言なさるのを聞きます。主は平和を宣言されます。
御自分の民に、主の慈しみに生きる人々に、
彼らが愚かなふるまいに戻らないように。
主を畏れる人に救いは近く、栄光はわたしたちの地にとどまるでしょう。
慈しみとまことは出会い、正義と平和は口づけし、まことは地から萌えいで
正義は天から注がれます。主は必ず良いものをお与えになり、
わたしたちの地は実りをもたらします。
正義は御前を行き、主の進まれる道を備えます。 (詩編85.9~14)
今年はちょうど今日から『平和旬間』が始まりました。日本のカトリック教会は、毎年、8月6日の広島原爆投下の日から、9日の長崎原爆投下の日を経て、太平洋戦争敗戦に至る15日までの10日間を『日本カトリック平和旬間』と定め、平和のために祈り、平和について学び、行動する期間としています。
東京教区では、この期間中、参加者によって途切れることなく祈りをつないでゆく「祈りのリレー」が行われます。「祈りのリレー」は、本日の8月6日(木)午前8時から開始され、8月15日(土)の午後8時に終了します。この10日間の期間中、絶え間ない祈りに、いつでも、どこでも、参加できます。お祈りは、主の祈り、アヴェ・マリアの祈り、ロザリオの祈り、自分のことばでの祈りなどです。
皆さまと祈る、今晩の「アレオパゴスの祈り」も7時30分から8時までを祈りのリレーに申し込みました。 また各教区でも「平和巡礼ウォーク」、「平和祈願ミサ」、「講演会」、「交流会」など平和のためのたくさんのプログラムも計画されています。
今年、3月11日の東日本大震災がもたらした福島原発事故は、想定以上の津波や新たな活断層の危険性に対して、わたしたちを、不安と恐怖の中につき落としました。特に、子どもたちに与えた身体的、精神的負担は大きく、子どもたちは、重い十字架を背負っていくことになりました。わたしたちは、神さまから人間に委ねられた美しく豊かな地球を一瞬にして、汚染してしまった責任があります。
平和に通じる新たなエネルギーの可能性への方向転換への選びができる勇気を願い、平和の源であるキリストが、ここで祈るわたしたちの平和への願いを聞き入れてくださいますように祈りましょう。
ローソクを、祭壇にささげましょう。
今晩の「アレオパゴスの祈り」は、5月1日に福者にあげられた、前教皇ヨハネ・パウロ2世のことばを聞き、平和について考え祈ってまいりましょう。
福者ヨハネ・パウロ2世は、在位26年間に世界129ヶ国を旅行し、世界中の人々に福音に基づく平和を力強く呼びかけられました。今から、30年前、1981年2月に、日本を訪問された福者ヨハネ・パウロ2世が、宗教や信条の違いを超えて、被爆地広島から全世界に向けて発せられた9ヶ国語での「平和アピール」は大きな感銘を与え、今も多くの人々の心に刻まれています。神と世界の人々のために自らをささげつくした牧者ヨハネ・パウロ2世は、今年の5月1日、自らが定めた「神のいつくしみの主日」に列福されました。
平和のために祈る8月、福者ヨハネ・パウロ2世が、広島から訴えられた平和への力強いメッセージをこの機会に今一度思い起こし、そこに示された真の平和への道を着実にたどっていけるようにとの願いを込めて聞きましょう。
戦争は人間のしわさです。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です。
この広島の町、この平和記念聖堂ほど強烈に真理を、世界に訴えている場所は他にありません。 もはや切っても切れない、対をなしている2つの町…日本の2つの町、広島と長崎は、「人間は信じられないほどの破壊ができる」という事実の証として存在する悲運を担った、世界に類のない町です。
この2つの町は、「戦争こそ、平和な世界をつくろうとする人間の努力を、いっさい無にする」と、将来の世代に向かって警告し続ける、現代にまたとない町として永久にその名をとどめることでしょう。
わたしは、自然と人間、真理と美の創り主である神に、祈ります。神よ、わたしの声を聞いてください。それは、個人の間、または国家の間でなされた、すべての戦争と暴力の犠牲者たちの声だからです。
神を信じる人々に申します。われわれの力をはるかに超える神の力によって勇気を持とうではありませんか。神がわれわれの一致を望まれていることを知って、団結しようではありませんか。愛を持ち自己を与えることは、かなたの理想ではなく、永遠の平和、神の平和への道だということに目覚めようではありませんか。最後に、わたしは自然と人間、真理と美の創り主である神に祈ります。
神よ、わたしの声を聞いてください。それは人々が武器と戦争に信頼をおくとき、一番に犠牲者として苦しみ、また苦しむであろうすべての子どもたちの声だからです。
神よ、わたしの声を聞いてください。わたしは、主がすべての人間の心の中に、平和の知恵と正義の力と兄弟愛の喜びを注いでくださるよう祈ります。
神よ、わたしの声を聞いてください。わたしはすべての国、またすべての時代において戦争を望まず、常に喜んで平和の道を歩む無数の人々にかわって、話しているからです。
神よ、わたしの声を聞いてください。わたしたちがいつも憎しみには愛、不正には正義の全き献身、貧困には自分を分かち合い、戦争には平和をもってこたえることができるよう、英知と勇気をお与えください。神よ、わたしの声を聞いてください。そして、この世にあなたの終わりなき平和をお与えください。
ここに集まられた友人の皆さん、わたしの声に耳を傾けているすべてのかたがた、わたしのメッセージが届くすべてのかたがたに申します。国内秩序を守るために法が制定されるように、世界の国々には、国際関係を円滑にし、平和を維持するための法制度が作り上げられなくてはなりません。過去をふり返ることは、将来に対する責任を担うことです。広島を考えることは、核戦争を拒否することです。広島を考えることは、平和に対しての責任をとることです。
この地上の生命を尊ぶ者は、政府や、経済・社会の指導者たちが下す各種の決定が、自己の利益という狭い観点からではなく、平和のために何が必要かを考慮し、要請しなくてはなりません。目標は、常に平和でなければなりません。すべてをさしおいて、平和が追求され、平和が保持されねばなりません。過去の過ち、暴力と破壊とに満ちた過去の過ちを、繰り返してはなりません。険しく困難ではありますが、平和への道を歩もうではありませんか。その道こそが、人間の尊厳を尊厳たらしめるものであり、人間の運命を全うさせるものであります。平和への道のみが、平等、正義、隣人愛を遠くの夢ではなく、現実のものとする道なのです。
平和記念聖堂 | 平和祈念聖堂前にあるヨハネ・パウロ2世の像 |
わたしたちは、福者ヨハネ・パウロ2世のことばと行いを思い起こしながら、今、彼が教会と世界のために執り成してくださるよう祈りましょう。日本を訪れ、日本を見て、日本人と話した福者ヨハネ・パウロ2世は、今、苦難の最中にあるこの国をきっと、助けてくださるに違いありません。この偉大な信仰と希望と愛の証人が、困難の中にあるわたしたち日本国民に寄り添ってくださり、巨大地震と津波と原発のすべての犠牲者と被災者のために祈ってくださいますように。この試練のとき、平和の使者である福者ヨハネ・パウロ2世が教会と世界を見守り続け、勇気と希望を与えてくださいますように。2011年8月に生きているわたしたちが、勇気を持って、正義と平和の心で、原発事故に立ち向かい、キリストに心を開き、恐れることなく、明日に向けた可能性をともに探し求めていけますように。
「平和のための祈り 2011」を唱えましょう。
いのちの源である神よ、
あなたは30年前、力強い平和のメッセージを告げ知らせるために
福者ヨハネ・パウロ2世教皇を被爆国・日本に遣わしてくださいました。
いまだに世界には数多くの核兵器が存在しています。
また日本は今、地震・津波・原発事故という苦難の中にあります。
人間の限界を忘れて、核エネルギーに頼ろうとしてきた態度が
根本から問い直されるときを迎えています。
今こそ、前教皇と心を合わせ、真の意味での平和と安全を求めて祈ります。
― 戦争は人間のしわざです。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です。
― 過去をふり返ることは将来に対する責任を担うことです。
― 主がすべての人間の心の中に、
平和の知恵と正義の力と兄弟愛の喜びを注いでくださいますように。
― 神よ、この世にあなたの終わりなき平和をお与えください。
アーメン。
聖パウロは、フィリピの信徒への手紙の中で次のように言っています。
「わたしはこう祈ります。知る力と見抜く力を身につけて、あなたがたの愛がますます豊かになり、本当に重要なことを見分けられますように。」(フィリピ1.9~10)
最後に、平和の守護者である神の母マリアにすべてを委ねて祈りましょう。この度、聖母マリアへの祈りの訳が正式に決まり、「アヴェ・マリアの祈り」となりました。キリストの平和が世界のすみずみにまで行き渡りますように、3回繰り返して、ご一緒に聖母に祈りましょう。
アヴェ・マリアの祈り
アヴェ・マリア、恵みに満ちた方、
主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、
ご胎内の御子イエスも祝福されています。
神の母聖マリア、
わたしたち罪びとのために、
今も、死を迎えるときも、お祈りください。
これで、今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。
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