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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2011年10月1日


千日草



カトリック教会では、毎年10月を「ロザリオの月」として、教会の母である聖母マリアにロザリオの祈りをとおして取り次ぎを祈ります。

ロザリオの祈りは、救い主の母マリアへのあつい尊敬から起こり、カトリック教会の中で培われ愛されてきた祈りです。ロザリオとは、「バラの花園」を意味するラテン語から来ています。ロザリオの祈りと呼ばれるのは、珠を繰りながら唱える祈りが、ちょうどバラの花束を編むようなかたちになるからです。

ロザリオの祈りは、喜びの神秘、苦しみ神秘、栄えの神秘、そして、光の神秘の、4つの神秘があります。2002年10月16日、福者ヨハネ・パウロ2世は、使徒的書簡『おとめマリアのロザリオ』を発表し、2002年10月から翌年の2003年10月までを「ロザリオの年」と定めました。伝統的な喜びの神秘、苦しみ神秘、栄えの神秘に、「光の神秘」を加えました。

また、歴史の中で、ロザリオの祈りは、ドミニコ会を創立した聖ドミニコが、アルピ派の異端者に宣教しようとしたとき、聖母マリアが直接ドミニコに現れ、勧めた祈りだったとも言われています。ドミニコはこの祈りを体系化して庶民に広めることによって大いなる効果を上げたとされました。16世紀にはロザリオの祈りの創始者は聖ドミニコであると認められました。

今晩のアレオパゴス祈りは、ご一緒にロザリオの祈りを唱えたいと思います。祈りを必要としているすべての人々のために聖母マリアの力強い取り次ぎを願いましょう。

後ろでローソクを受け取った方から、祭壇にお進みください。

ロザリオの祈りが唱えられるようになった由来をご紹介しましょう。聖パウロが生きていた初代教会の時代、彼は、絶えず祈ることを力説しました。初代教会のキリスト信者たちは、その勧めを真剣に受け止め、どうすれば絶えず祈ることができるかをいろいろと考えました。文字どおり24時間祈り続けることは不可能です。そこで一つの解決方法として生まれたのが、旧約聖書の詩編を唱える祈りでした。これは現在では、「聖務日課」、「教会の祈り」と呼ばれています。

この祈りを唱えるためには文字が読めることが前提でした。その時代は、誰もが字を読めたわけではありません。当時「聖務日課」は、主に修道者の間でしか行われていませんでした。しかし、いつの時代にも、神に心を向けて神との対話を望む熱心な人々がいます。信徒の中にも、「聖務日課」のような祈りをすることを望む人が出てきました。そこで考え出されたのが150編の詩編の代わりに「主の祈り」を150回唱える方法です。これが今日のロザリオの歴史的背景になりました。

人々の間に聖母への敬愛が広まるにつれ、修道院では詩編の祈りである「聖務日課」の他に「聖母の小聖務日課」が付け加えられるようになりました。そして、信徒たちの間でも「聖母の小聖務日課」を唱えたいという望みが生まれて、150編の詩編の代わりに聖母マリアへの祈りを150回唱えるようになったと言われています。

10月7日は、ロザリオの聖母の記念日にあたります。この日にロザリオの聖母の記念を祝うようになったのは、1571年のギリシア・レパントの海戦でのことでした。数の上では、圧倒的に弱い立場であったキリスト教徒がオスマン・トルコ軍に対して勝利を収めたことを記念したもので、聖ピオ5世教皇(1566~1572)によって定められました。教皇ピオ5世は、すべての信者にこの危機を乗り越えることができるようにロザリオを祈るように要請しました。人々は犠牲をささげたり、行列をして祈願をしました。トルコ艦隊は、キリスト教艦隊をはるかにしのぐ数でしたが、10月7日、奇跡的に勝利を収めました。この勝利は、武力によるものではなく、ロザリオの祈りによってもたらされた聖母の助けによるものであると言い伝えられています。

ここで、2002年から新しく加わった「光の神秘」について、教皇ヨハネ・パウロ2世が、使徒的書簡『おとめマリアのロザリオ』の中で述べている文書を聞いてみましょう。

キリストの秘義は、光の秘義ということができます。キリストは「世の光」(ヨハネ8.12)だからです。"しかし、この光の秘義が主として現されるのは、キリストが神の国の福音を告げ知らせた公生活の期間においてです。キリストのこの時期の生活において、5つの重要な出来事が揚げられます。

5つの出来事の1番目は、キリストがヨルダン川で洗礼を受けられたことです。キリストは、水の中に下り、罪のない方が、わたしたちのために罪となられました。聖霊がキリストの上に下り、これからなすべきことをキリストに授けます。御父の声で、“これはわたしの愛する子、彼に聞け”と宣言されました。

2番目は、カナの結婚式で行われた、最初のしるしです。キリストは、マリアの取り成しによって、水をぶどう酒に変え、弟子たちの心を開いて信仰へと導きました。

3番目は、イエスの宣教です。イエスは神の国の到来を告げ、回心を呼び掛け、へりくだりと信仰をもってご自分に近づいてきたすべての人の罪を許しました。

4番目は、キリストの変容です。これは、タボル山で起きた出来事です。神の栄光がキリストの御顔から輝き出たので、弟子たちが我を忘れていると、彼らに向かって、御父が、「これに聞け」と命じます。それは、彼らがキリストとともに受難の苦しみを味わうように弟子たちを前もって備えさせ、ゆくゆくは彼らがキリストとともに復活の喜びにあずかり、聖霊によって新たな命に変えられるためでした。

5番目は、最後の晩さんで制定された聖体です。聖体において、キリストは、パンとぶどう酒のしるしによって、ご自分の体と血を食物として与えられます。こうしてキリストは、人類に対するご自分の愛を「このうえなく」あかしされます。

これら、5つの出来事の中で、マリアの存在は、カナの婚宴を除けば、影に隠れています。最後の晩さんで聖体が制定されたときも、マリアがそこにおられたとは福音書には、書いていません。しかしマリアは、カナで果たした役割を、キリストが奉仕のわざを行っている間、ずっと果たしていました。ヨルダン川での洗礼のときに御父から直接示され、洗礼者ヨハネも繰り返した啓示は、カナにおいてマリアの口からも語られています。「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください(ヨハネ2.5)。」このことばは、わたしたちを公生活におけるキリストのことばとしるしへ導き入れてくれるものです。
              カトリック中央協議会刊行『おとめマリアのロザリオ』より抜粋

それでは、今、聞いたことを思いめぐらしながら、ご一緒に「光の神秘」のロザリオを唱えましょう。ロザリオとパウロ家族の祈りをご用意ください。初めての方もおられると思いますので、簡単にご説明いたします。最初に、先唱者が各神秘ごとに、祈りの意向を言います。その後、主の祈りを1回、次にアヴェ・マリアの祈りを10回、そして栄唱を1回唱えます。この祈り方を1セットとして5つの各神秘の後、繰り返して祈ります。

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イエスの洗礼

第1の神秘 イエス、カナの婚礼で最初のしるしを行う

イエスはガリラヤのナザレから来て、
  ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。
  水の中から上がるとすぐ、
  天が開けて"霊"が鳩のように御自分に降って来るのを、
  御覧になった。
  すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」
  という声が、天から聞こえた。    ( マルコ1.9~11)

★この一連をささげて、洗礼の恵みを神に感謝し、聖霊に導かれて、神の子として生きることができるよう聖母の取り次ぎによって願いましょう。

主の祈り(1回) 聖母マリアの祈り(10回) 栄唱(1回)

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カナの婚礼

第2の神秘 イエス、カナの婚礼で最初のしるしを行う

  ガリラヤのカナで婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
  イエスも、その弟子たちも婚礼に招かれた。
  ぶどう酒が足りなくなったので、
  母がイエスに「ぶどう酒がなくなりました」と言った。
  イエスは母に言われた。
  「婦人よ、わたしとどんなかかわりがあるのです。
  わたしの時はまだ来ていません。」
  しかし、母は召し使いたちに、
  「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」と言った。   (ヨハネ2: 1~5)

★この一連をささげて、イエスへの信仰を深めることができるよう聖母の取り次ぎによって願いましょう。

主の祈り(1回) 聖母マリアの祈り(10回) 栄唱(1回)

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神の国の到来を告げる

第3の神秘 イエス、神の国の到来を告げ、人々を回心に招く

  ヨハネが捕らえられた後、
  イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて、
  「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」
  と言われた。   (マルコ1.14~15)

★この一連をささげて、イエスの招きに応え、心から悔い改めて、福音を信じることができるよう聖母の取り次ぎによって願いましょう。

主の祈り(1回) 聖母マリアの祈り(10回) 栄唱(1回)

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イエスを献げる

第4の神秘 イエス、タボル山で栄光の姿を現す

  8日ほどたったとき、
  イエスはペトロ、ヨハネ、およびヤコブを連れて、
  祈るために山に登られた。
  祈っておられるうちに、
  イエスの顔の様子が変わり、服は真っ白に輝いた。
  見ると二人の人がイエスと語り合っていた。
  モーセとエリアである。
  二人は栄光に包まれて現れ、
  イエスがエルサレムで遂げようとしておられる最期について話していた。   (ルカ9.28~31)

★この一連をささげて、主の変容を心に刻み、イエスに聞き従うことができるよう聖母の取り次ぎによって願いましょう。

 主の祈り(1回) 聖母マリアの祈り(10回) 栄唱(1回)

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最後の晩さん

第5の神秘 イエス、最後の晩さんで聖体の秘跡を制定する

  主イエスは、引き渡される夜、
  パンを取り感謝の祈りをささげてそれを裂き、
  「 これはあなたがたのためのわたしの体である。
  わたしの記念としてこのように行いなさい」と言われました。
  また、食事の後で、杯も同じようにして、
  「この杯は. わたしの血によって立てられる新しい契約である。
  飲む度に、わたしの記念 としてこのように行いなさい」
  と言われました。   (コリント1 11.23~26)

★この一連をささげて、すべてを与え尽くされたイエスの愛に日々ならうことができるよう聖母の取り次ぎによって願いましょう。

主の祈り(1回) 聖母マリアの祈り(10回) 栄唱(1回)

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『カトリック聖歌集』No.621「野ばらのにおう」① ⑥

最後に、印象的な一本のロザリオをご紹介しましょう。それは、長崎の原子爆弾による焼け野原に残された、永井隆夫人のロザリオです。

8月8日の朝、妻はいつものように、にこにこ笑いながらわたしの出勤を見送った。少し歩いてからわたしは弁当を忘れたのに気がついて、家へ引き返した。そして思いがけなくも、玄関に泣き伏している妻を見たのであった。

それが別れだった。その夜は防空当番で教室に泊まった。あくる日、9日。原子爆弾はわたしたちの上で破裂した。わたしは傷ついた。ちらっと妻の顔がちらついた。わたしらは患者の救護に忙しかった。5時間ののち、わたしは出血のため畑にたおれた。そのとき妻の死を直覚した。というのは、妻がついにわたしの前に現れなかったからである。わたしの家から大学まで1キロだから、這うて来ても5時間かかればとどく。たとい深傷を負うていても、生命のある限りは這うてでも必ずわたしの安否をたずねて来る女であった。

3日目。学生の死傷者の処置も一応ついたので、夕方わたしは家へ帰った。ただ一面の焼け野原だった。わたしはすぐに見つけた。台所のあとに黒い塊を。―それは、焼け尽くして焼け残った骨盤と腰椎であった。傍に十字架のついたロザリオの鎖が残っていた。
              『ロザリオの鎖』(永井隆著 サン・パウロ刊)より
 

これで、今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。


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