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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2015年 8月 1日

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 ひまわり


父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

今日から、8月が始まりました。太陽が輝き、セミの鳴き声が響く中、普段の生活から離れて、さまざまな体験をする喜びのときでもあります。しかし一方で、広島、長崎の原爆記念日、終戦記念日を過ごしながら、特に平和について考え、祈る季節です。今年は戦後70年にあたりり、日本各地で平和のための行事、運動が行われています。平和を望む善意の人々ともに、わたしたちの祈りをささげましょう。戦争、そして世界各地で今も続く紛争のために亡くなったすべての人の永遠の安息を願いましょう。日本をはじめ、世界の政治家たちが人々の叫びに耳を傾け、勇気をもって、平和のために働きますように祈りましょう。

この祈りのとき、聖霊がわたしたちを導いてくださいますように、願って歌いましょう。

『平和を祈ろう』No.5「あなたを離れては」① ②

戦争が終わって70年が過ぎ、当時の痛み、苦しみを体験した方々が少なくなりました。総務省によりますと、今年7月の時点で、日本の人口は約1億2695万人だそうです。その中で戦後生まれの人口は1億人を超え、人口の約8割を占めるまでになりました。戦争の体験をどのように次の世代に伝えるかが、課題になっています。そんな中、つらい体験を乗り越え、多くの方が平和の大切さを訴えておられます。旧長崎県立長崎高等女学校の生徒さんの原爆体験記を聞きましょう。

昭和20年8月9日午前11時2分、運命の原子爆弾投下により、わたしの家族5名は一瞬にして崩壊し、たった一人暗い世の中に放り出されました。わたしが15歳の夏でした。あの日も真夏の太陽が朝早くから照り付ける酷暑でした。三菱兵器工場の疎開先になっていた商業高校の2階で事務を執り、もう少しでお昼のお弁当、戦時下で唯一の楽しみの時間でした。そのとき、100万ボルトの電気がいくつも集まったような強烈な閃光が空を走ったと思うと、あたりは銀色に光りました。どのくらいたったでしょう。今度は真っ暗闇に包まれていました。たしか警戒警報も解除になっていたはずだったのに。音もなく一瞬にして、柱も壁も落ちた瓦礫(がれき)の中に、わたしは埋もれました。足の方で、「助けて……」と不気味な声がしていましたがどうすることもできず、後ろ髪引かれる思いで、外へ必死に這い出しました。どこというあてもなく、とにかく逃げねばと田んぼの中を走っては転び、また走りながら川を求めました。のどが焼けつくようでした。川の中にはおびただしい人が、首を水の中に突っ込んで死んでいました。焦げるような激しい熱を少しでも避けるために、狭い川の中に飛び込んでいたのでした。その間に手を入れて、よどんだ水をすくって飲みました。手の甲から血が滴り落ちていました。乾いて黒くなった血筋を見ていると、痛みが全身にひびいてきました。少しでも痛みを和らげようと、服を裂いてくくりました。これが精一杯の手当てでした。

夜が明けるのを待ち城山町へ引き返しましたが、あまりの変わりように茫然と立ちすくみました。家もなく木もなく、一面焼け野原になり、黒く焦げた死体がごろごろしていました。小高い丘に鉄筋のコンクリートでできていた城山小学校は見る影もなく、破壊されていました。丘の下に町民の避難する大規模な横穴防空壕が作ってありました。ここに皆、避難していることと思い、中に入っていきました。何とも言えない異臭が漂っていました。たくさんの人が虫の息で横たわり、傷ついた人はただ「水、水を飲ませて」と手を出し、血まみれの人が「早く死なせて、殺して」と息も絶え絶えにうめいていました。あてのない救護隊を待ち、手当てもなく苦しみながら死を待っているのでした。胸が張り裂ける思いでした。そのとき奥の方から、「お母さんが池の近くで苦しんでいるらしいよ」と、誰か分からないけど教えてくださいました。お礼もそこそこに八幡神社の裏にある池へ走りました。水を求めて、ここでも人が折り重なって死んでいました。かわいそうに熱線で服も焼ききれたのでしょうか。皆、丸裸で顔も何も分からない死体ばかりで、地獄の中に立っているようでした。悲しみがようやく涙になって一度に流れ始めました。日がたつにつれて、惨状は筆舌に尽くしがたいものになっていきました。

 兄は防空壕で命を取りとめましたが、強い放射能を受け、その後心臓発作で亡くなりました。その年の11月、伯母と一緒に長崎へ家族の安否を確認しに行きましたが、父は炎上した電車の中、母は池の中で亡くなり、祖母、弟は家の下敷きになっていたそうです。これがわたしの家族との永遠の別れでしたが、よもや5人とも死ぬということなど思いもよらぬことでした。罪のない何万人もの命を奪った原子爆弾のことをどれだけの人が知っているでしょうか。戦争によって亡くなった人たちの犠牲によって、今日の平和な時代になったのではないでしょうか。若者たちの尊い命を大事にしてほしいと思います。犠牲になるのは、わたしたちだけでたくさんです。

  ----長崎県立長崎高等女学校42回生 著『あの日あの時―被爆体験記―』より---

爆心地点
長崎・平和公園 浦上天主堂遺壁


戦争で亡くなった方々を思いつつ、しばらく沈黙のうちに祈りましょう。

(沈黙)

平和への思いを新たにしながら、わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々を心に抱き、ローソクをささげましょう。後ろでローソクを受け取り、祭壇にささげ、席にお戻りください。

ヨハネによる福音を聞きましょう。(ヨハネ14.23~24、27、30~31)

イエスは仰せになった。「わたしを愛する人は、わたしの言葉を守る。わたしの父はその人を愛され、父とわたしとはその人のところに行き、一緒に住む。 わたしを愛さない者は、わたしの言葉を守らない。あなたがたが聞いている言葉はわたしのものではなく、わたしをお遣わしになった父のものである。わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える。わたしはこれを、世が与えるように与えるのではない。心を騒がせるな。おびえるな。もはや、あなたがたと多くを語るまい。世の支配者が来るからである。だが、彼はわたしをどうすることもできない。 わたしが父を愛し、父がお命じになったとおりに行っていることを、世は知るべきである。さあ、立て。ここから出かけよう。」

今、朗読された箇所は、イエスがご受難に向かう前に、弟子たちに話された場面です。イエスは「わたしの平和を与える」とおっしゃいます。平和は、単に戦争がないこと、日常生活の中で、人との関わりがうまく行っていることだけではありません。たとえそのような状況にあっても、心が落ち着かずザワザワしていることもあります。わたしにとって、平和とは何でしょうか。わたしの心は平和を感じているでしょうか。しばらく沈黙のうちに祈りましょう。

(沈黙)

聖パウロ女子修道会の初代総長、シスターテクラ・メルロは、次のように言っています。「いつもいつも、喜んでいることはできないかもしれません。でも、いつも平和でいることはできます。平和は愛と思いやりの一致の実です」。

イエスは、ご自身を十字架上でおささげになることによって、御父とわたしたちの間に和解をもたらしてくださいました。イエスのこの奉献によって、わたしたちは永遠の命をいただく者となりました。イエスの十字架は、神の愛のしるしです。人は愛されていると感じるとき、心に平和を感じます。苦しみや悲しみのために心から喜ぶことはできなくても、主が共にいてくださるということを信じるなら、心に静かな平和が訪れます。

(沈黙)

共にいてくださる主の愛に感謝して、歌いましょう。

『平和を祈ろう』No.60「わたしたちの平和―キリスト」① ②


平和の像
長崎・平和公園 平和祈念像


わたしたちが、人の命を大切にすることによって、武器に頼らない真の平和が世界に実現しますように、聖母マリアの取り次ぎを求めて、ロザリオを一連ささげましょう。お祈りは、先唱者と皆さまで交互に唱えます。

栄えの第5の神秘、「聖母の戴冠」を黙想しましょう。天に上げられた聖母は、御父と御子イエスから天と地の女王として、栄冠をお受けになります。平和の女王である聖母が世界に平和をもたらしてくださいますように、祈りましょう。
   主の祈り(1回)、アヴェ・マリアの祈り(10回)、栄唱(1回

「平和への祈り2015(東京大司教区)」を唱えましょう。
   神よ、戦後70年にあたりり、心からの願いをささげます。
   あらゆる差別をなくし、いのちと人権を尊重する社会を作ることができますように。
   国と国、民族と民族が、対話と相互理解の努力を続けることができますように。
   無関心を乗り越え、格差と貧困の問題に取り組むことができますように。
   地球環境を大切にし、すべての生きものと共存することができますように。
   神よ、わたしたちに、武力によらない平和への道を歩ませてください。

この祈りの時間にいただいた恵みを沈黙のうちに感謝しましょう。

(沈黙)

祈りましょう。
平和の源である父なる神よ、あなたは争いを憎み、思い上がる者を打ち砕かれます。世界を悪の力から守り、苦しみと涙をわたしたちから取り除いてください。すべての人があなたの子どもとして平和のうちに生きることができますように。 わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。

父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。



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